『データで勝つ三人麻雀』に対する質疑応答 1の前半
0 はじめに
こちらは2週間前に発売された『データで勝つ三人麻雀』。
この本に対して次のような質問が寄せられた。
質問の趣旨は次の通り。
(以下、質問の趣旨)
『データで勝つ三人麻雀』において、
ダマテンパイは最終形がダマテンパイだったものを牌譜解析の対象としている(よってダマテンパイが有利になっている)
と書かれている(同趣旨の記載は『「統計学」のマージャン戦術』にも書かれている)。
なぜ、ダマが有利となるのか。
(まとめ終了)
1 簡易な回答
これについて端的に回答するとこうなる。
本の「ダマテンパイ」で集めたデータはダマ全部のデータのうち、途中で手を崩した(手替わりした)結果のデータが外されている。
その結果、ダマでゼンツするケースと比較して、相手の反撃に対して危険牌を引いて放銃したケースが(一部)除外されており、その結果、ダマ有利になっていると考えられる。
簡単な説明でいいならこれで終了である(福地誠氏のツイートの説明と同様である)。
以下は、もう少し突っ込んだ説明を行う。
2 詳細な説明
牌譜解析でデータを集める場合、「ダマ(フーロ)のデータを集めること」は容易ではない。
なぜなら、ダマのデータを集める際には、「どういうダマのデータを回収するか」という問題が生じるからである。
つまり、「ダマのデータが欲しい」という場合、
ダマでゼンツした
ダマテンパイを維持したが、危険牌を引いたらベタオリに転じた
みたいな感じで「欲しいデータ」について選択の自由が生じるからである。
もっとも、これについては私が勝手に決めれば済むことなので、それほど問題にならない。
なお、私が本に掲載したかったデータは「ダマゼンツ」のデータである。
ここで、「何を取るかということが問題になる」と述べたが、もう一個厄介な点がある。
それは、牌譜解析でデータを回収する場合、「条件にぴったり対応するデータを集めるのが大変である」という点である。
例えば、私はダマに関するデータとして
・ダマテンパイを形成したが、その後もダマテンパイを終局まで維持し続けたもの
・ダマテンパイを形成したが、その後は一切問わない
の2種類のデータを持っている。
しかし、「ダマゼンツのデータ」と比較して場合、この2種類のデータはダマゼンツと対応していない。
というのも、前者の場合、ダマテンパイを維持し続けたケースは全部ヒットするが、途中で危険牌を引いてそれを切らなかったケース(スライドのケース含む)が除外されてしまう。
後者の場合、ダマテンパイが良化した(愚形から良形になった)ケースが入り込んでしまうし、また、危険牌を引いてベタオリに転じたケースも入ってしまう。
いずれもダマゼンツのデータとは対応していない。
なお、結論から述べると、ダマゼンツのデータを牌譜解析から集めることは不可能である。
そこで、ダマゼンツのデータを使うなら今あるデータで代用するしかない。
そこでどうしたか。
私は前者のデータをダマゼンツのデータとみなすことにした。
余計なものが入っているデータより一部除外されているデータを取ることにしたのである。
しかし、このデータは「危険牌を引いて放銃したケース」が除外されている。
当然これにはスライドも含まれる。
よって、ダマゼンツの本来の数値よりも有利なデータが出ていると考えられるのである。
3 ダマゼンツのデータを出す方法
なお、適切なダマゼンツのデータを得るためにはどうすればいいか。
それは、シミュレータを作ってデータを求めればよい。
例えば、ダマゼンツのデータが欲しいのであれば、凸理論局収支シミュレータの秋刀魚版を作れば容易にデータを出すことができる。
なお、局収支シミュレータを作り、そのデータを出せばよかったではないか、と思うかもしれない。
しかし、あの本に書くデータは全部根拠(条件)を付さなければならない。
牌譜解析結果であれば「牌譜解析の結果こうなった」の一言で説明できるが、シミュレーションによって導出した数値の根拠を説明するとなると30ページは費やす必要がある。
福地が私の麻雀研究の過程を書いた文章を「毒文」と評したが、その毒文を30ページ加えたら、さすがに福地誠と三才ブックスの反対にあうであろう。
これが本書でシミュレーション結果を一切使わなかった理由である。
以上、「ダマテンパイは最終形がダマテンパイだったものを牌譜解析の対象としている(よってダマテンパイが有利になっている)」の意味を説明した。
数値の理解の足しにしていただければ幸いである。
後半では「どの程度有利になると考えるのか」について四麻を題材にして説明したい。
ただし、未公開データを含むため有料とさせていただく。
では、今回はこの辺で。
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