ソラを見上げて #21 渡せなかった、伝えたかった
久保を知る誰もが一日も早い回復を願っていた。しかし
【大切なみなさまへ】
みなさまこんにちは 久保史緒里です。10月から活動休止をしてお休みしてましたが、今後の復帰を見据え、入院して治療に専念する事になりました。復帰の時期はまだ未定ですが、必ず元気な姿で戻ってきます。それまで待っていてくれたら嬉しいです。乃木坂46 三期生 久保史緒里
(ブログ発表から一か月後…)
―都内某所・病院―
美:梅は? まだ連絡つかないの!?
楓:登山ロケ行ってて、梅もマネージャーさんも電源切ってるって……
美:よりによってこんな時に……もう!
看:すみません! ご家族の方はいらっしゃいますか?
理:新幹線で向かってるんですけど、まだ
看:大変危険な状態です。お友達だけでもそばにいてあげてください。
与:やだ。やだぁぁぁ!
美:泣かないの! 私達がしっかりしないでどうすんの?
与:ひっく……うぐ。
葉:大丈夫。きっと大丈夫だから……ね?
与:ぐす……ぅん。
麗:私達が元気付けてあげなきゃね。
珠:とにかく入ろ?
吉:そうだね。
ー久保の病室ー
苦しそうに呼吸をする久保。体中に無数の管が繋がれている。
蓮:久保。わたしの声、聞こえる?
久:う……ん、聞こえて、るよ。
(ガラララ……🚪)
桃:はぁ、はぁ……
楓:良かった、桃子。
桃:……
久:あ……もも、こ。だ。
桃:ねぇ何してんの?
葉:桃子?
桃:こんな所で寝てたら駄目だよ。みんなで10周年記念のキャンプするって約束したじゃん。ねぇ久保、何してんの! ねぇってばぁ!
蓮:桃子、落ち着いて!
桃:絶対全員集まろうねって言ったの久保と梅じゃん! 約束したじゃん!
久:ごめ……んね。も、もこ。
桃:うわぁぁぁん!
(泣き崩れる桃子)
久:はぁ……はぁ……
美:なに?
(朦朧とする意識の中、美月を見つめる久保)
久:やくそく、した……のに。
美:く……諦めんなって言ったでしょ! しっかりしなさい!
久:ね……ぇ、うめ、は?
楓:まだ連絡がつかな……んん!
山:今向かってる。だから来るまで寝ないでよ?
(言いかけた楓の口を塞ぎ、代わりに応える山下)
久:やま。うめに、つた……え、て。
美:もう無理しないで! しゃべらなくていいから!
久:うめなら、だいじょ……ぶ、だって。キャプ、テンにあって……る、よって。
美:うぅ……ぐぅ、しゃべんなって言ってんでしょ!
久:が、ん
与:ねぇ駄目だよぉ! いかないで!
(久保に繋がっている心電図計から異常を知らせる音が鳴っている)
美:久保?
久:……
与:いやだよぉぉぉ!
美:楓、先生呼んできて。
楓:……うん。
―病院・明け方―
静まり返った病院に、大きな足音が響く。
足音が止むと、病室の扉越しに荒い息遣いが聞こえてくる。
(ガラララ……🚪)
梅:久保は?
梅澤の問いに答えようとする者はいなかった。
痛々しく体中に繋がれていた管は全て綺麗に取り外されていた。
梅:久保……
安らかな顔。動かない胸部、まぶた、口元。
ただ眠っている。そうじゃない事は明らかだった。
梅:……
そっと頬をなでる。熱くなった指先にひんやりとした感覚と、決して認めたくない現実が伝わってくる。
桃:どこ行ってたの? みなみんの事、ずっと待ってたんだよ?
楓:桃子。今日、梅はね
梅:ごめん。
桃:なんで傍にいてあげなかったの?
美:梅は久保の為にロケに行ってて……
桃:ロケに行って何するの? 一緒にいてあげるより大切な事なの?
葉:桃子。お願いだからそれ以上言わないであげて……
梅:ごめん。
桃:ごめんじゃない! それしか言わないじゃん、もういいよ!
(病室を飛び出す桃子)
美:梅、ご両親がもう搬送先を決めてる。だから、それまで一緒にいてあげて。桃子は私達で落ち着かせておくから、ね?
梅:ありがとう、やま。
(一時間後)
美:迎えの車が来た。一旦事務所に戻ろ?
梅:……
美:梅?
梅:もう少し、ここにいてもいい?
美:気持ちは分かるけど……でも
梅:ちゃんと事務所には戻るから。
美:梅が勝手な事したら皆が不安になるでしょ!? ただでさえ
梅:おねがい!
美:……わかった。でもちゃんと帰ってきて。待ってるから。
梅:うん。
ーつづくー
【おまけ】