あすかの子 予告-official trailer-
いつか飛鳥さんが言ってくれた、
自分で自分を認められるようになったら、また会いに行きます。
それから、数か月が経ったある日。
突然の報道。そのニュースは、
あっという間に日本中に広がった。
作り物の記者会見。
それでも、世間の関心は次第に薄れ、
飛鳥さんのニュースは聞かなくなった。
だけど、私の心にはこびり付いたまま。
あれから3年。
あの時交わした約束は、果たせていない。
―東京ドーム・乃木坂46控室―
(テレビのニュースを眺める林と弓木)
林:……
『アメリカ北部を襲った大寒波は、依然としてその勢力を保っており、現地では大規模な停電が 』
林:うわぁ……町がまっしろけ。
弓:雪だるま作り放題だね。
林:町中停電してるのに、呑気に雪だるま作ってる場合じゃないでしょ。
弓:かまくら作って中に入れば温かいかもよ?
林:作ってる間に自分が雪だるまになるわよ。
弓:夢無いなぁ。
林:悪かったわね、夢無し女で。
【ガチャ……🚪】
矢:ねぇ、かっきー見なかった?
林:へ? さっき電話しながらどっか走っていったけど?
矢:も~、MCの打ち合わせしようって言ったのに誰と電話してんのよ!
弓:どうどう。
林:美緒、大きな声出したらさくが起きちゃうよ。
矢:(小声)ごめんごめん、天使の寝顔を守らないとね……
(椅子に座り、静かに眠っているさくらの顔を覗き込む矢久保)
矢:(小声)かわいー、らぶー♪
さ:……いかないで。
矢:え?
林:あれ? 起きてる?
さ:まって……おいてかないで。
(さくらの頬を流れる涙)
矢:さくちゃん?
さ:……ん。あれ?
矢:大丈夫? うなされてなかった?
さ:……夢、か。
林:さく。
さ:ん?
林:目、真っ赤よ。
さ:……へへ。
矢:そんなに怖い夢だった?
さ:ううん、見てないよ。
矢:ホント?
さ:うん。
矢:よかったぁ、も~心配したわよ。
さ:ごめんね。
林:私達こそ起こしちゃってごめん。まだ時間あるから、休んでて。
さ:うん。
林:さく。
さ:ん?
林:大丈夫じゃない時は、必ず言うのよ?
さ:……!!
【こら、大丈夫じゃない時は必ず言うって約束したでしょ?】
さ:ありがと。
(瞳からぽろぽろと零れ落ちる涙)
林:ちょ、ちょっとさく。ホントに大丈夫?
矢:ゴラァ! なぁにさくちゃん泣かしてんのよ!
林:えぇぇ!? わたし?
矢:どー見たってあーたでしょうが!
さ:大丈夫、ちょっと緊張してるだけだから。
矢:そうなの? 林に変なこと言われてない?
さ:うん。
林:だからそう言ってるでしょ。
矢:さくちゃんの笑顔を守るのが私の使命なの。
林:はいはい。
弓:矢久保って、かっきーに用事があったんじゃないの?
矢:あ、そうだ! かっきー探さなきゃ!
(走ってどこかへ行ってしまう矢久保)
林:本番前だってのに元気ねぇ。
さ:ありがとね、るるる。
林:なにが?
さ:美緒ちゃんとるるるを見てると元気になるから。
林:こんなんで良ければ、いつでもさくの家に行って見せたげる。
さ:あはは。じゃあ、お正月の予定空けといてね。
林:獅子舞かよ。
弓:え、じゃあウチの実家にも
林:うるさい。
弓:ケチ!
林:やかましい! ていうか、いつまでいるつもり?
弓:何が?
林:『何が?』じゃないでしょ。OGの楽屋はアッチ!
弓:けちー! 鬼の副長ー!
林:なんだと?
田:まぁまぁ二人共。そんなにエネルギー使うと本番で疲れちゃうよ?
弓:そ、そうね。一生懸命サイリウム振らないとね。
田:そうそう。瑠奈もそんなに怒らないの。
林:なに一人で大人ぶってるの? まゆたんの楽屋もアッチ!
田:ちぇー。林のけちんぼー。
(弓木と田村は林にあっかんべーをして控室を出ていく)
林:ふぅ。やれやれ。
葉:この塩パン超おいしい!
蓮:でしょ? ヤバいよね!?
林:葉月さん! OGはケータリング食べちゃダメって言ったでしょ! ちゃんとお弁当準備してますから!
さ:ふふ。
―東京ドーム・連絡通路―
(真剣な表情で電話をしている遥香)
遥:遥香です。今も髙山さんと知事が交渉中です。はい。見切り発車でスタンバイしてもらってすみません。はい。これがうまくいかなかったらアジャパーです。すみません、それはどうしても。いえ、私の方こそ。今日が納車なのに、美波さんにこんなお願いを……そう言っていただけると助かります。はい。そこから先は私が何とかします。はい。えへへ、私もです。はい。
【ピッ……📱】
遥:……
(同時刻…)
―東京都江東区・某所―
【ピッ……📱】
〇:まだ待つのか?
梅:待つしかない。
〇:そんな急に動かせるモンなのか?
梅:分からない。でも遥香が一生懸命やってるんだもの、助けなきゃ。
〇:理由も聞かずによくやるよ。
梅:困ってる後輩を助けるのが先輩ってモンでしょ?
〇:さすが三代目。
梅:一つ忠告しておくけど。
〇:うん?
梅:間違ってもウチの子に『四代目』なんて言わないでよ?
〇:言うかよ。そんな失礼な事。
梅:ちょっと、じゃあ私の時はなんだったのよ!
〇:今まで俺にしてきた事。胸に手を当てて思い出してみるか?
梅:……はて?
〇:おい。
梅:ねぇ。
〇:ん?
梅:あの日、私が展示会で○○の作品を見つけなかったら今頃どうなってたんだろうね。
〇:さぁな。俺は大人しく学校行ってたんじゃないか?
梅:そうかもね。乃木坂と仕事する事もなかったろうね。
〇:あぁ。その上、一年振りに連絡してきたと思ったらこんな事に巻き込みやがって。
梅:どういたしまして。
〇:褒めてねぇ。
梅:ふふ。
これは、決して知られてはいけない。
語られる事のない、乃木坂46の秘密。
遥:どんな事があっても、必ず届けるからね……さく。
それは……絆と愛。そして、償いの物語。
わたしの、こども?
そう。愛するこどもには名前をつけなくちゃ。