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ソラを見上げて #42 メッセージ
―○○のマンション―
〇:ただいまー
ソ:おかえり。打ち合わせはうまくいった?
〇:うん。これでやっとスタートラインって感じ。
ソ:そっか。
〇:おみやげ買ってきたよ。
ソ:お、なになに?
〇:東京ばな奈。
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ソ:!!?
(東京ばな奈を見た瞬間、身構えるソラ)
〇:……え?
ソ:まさかここまで攻めてくるとは……いい度胸ね。
〇:攻めてくる?
ソ:確かに東京駅と仙台駅では人の流通量、そして商品の認知度としては分が悪い……だけど、外側の生地と中のカスタードの相性では負けないわ!
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〇:ちょ、ちょっとソラ?
ソ:それに宮城は萩の月だけじゃないのよ? 歴史ある郷土料理のずんだ餅、海の恵みを授かった笹かまぼこ。しかも、だて正夢というブランド米だってあるんだから。さぁ、どこからでもかかってきなさい!
〇:ダメだ、完全に正気を失ってる。こうなったら……
(○○は引き出しから何かを取り出し、火をつけてソラに近づける)
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〇:おちつけソラ!
ソ:……
〇:……ソラ?
ソ:あぇ? わたしは一体何を……あ、お線香だぁ。えへへ
(煙に包まれ、脱力していくソラ)
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〇:捨てずに取っておいてよかった……
![](https://assets.st-note.com/img/1720230339783-NNRoHp1tDk.jpg?width=1200)
ソ:あははは、ごめんごめん。
〇:東京ばな奈に対抗意識燃やしてどうすんのさ。
ソ:だってお互いに黄色いし。
〇:うん。
ソ:細長いフォルムで食べやすいし。
〇:そうだね
ソ:バナナ味で子供にも大人気。
〇:認めてんじゃん。
ソ:戦いはまず相手を知るところからよ。
〇:戦いって……
ソ:ただでさえバナナという子供受けしそうな名前を使ってる上に、ミニオンとコラボした時は東京駅を焼き払ってやろうかと思ったわ。
〇:あっはは。なんでソラがそこまでしなきゃいけないんだよ。
ソ:なんでかしら? 萩の月の事になると自然と熱が入るのよねぇ。
〇:子供の頃から萩の月を食べて育ったとか?
ソ:それもあると思うんだけど、萩の月を広める使命のようなモノが湧いてくるのよね……なんでかしら?
〇:ま、今度食べよう?
ソ:そうね。
〇:へぇ……東京ばな奈も冷凍すると美味しいんだってさ。
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ソ:ほぅ?
〇:冷凍する?
ソ:……そのまま食べる。
〇:意地っ張り。
ソ:ふん。
〇:もらったチラシに色々書いてあるよ。
ソ:なんて?
〇:アレンジその1、フレンチトースト
ソ:ふっふれんちとーすとぉ?
〇:牛乳を染み込ませて、フライパンにバターを溶かして両面焼くんだって。
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ソ:……(ごくり)
〇:あ、美味しそうって思ったでしょ?
ソ:思ってない!
〇:えっと他には……割り箸を刺した東京ばな奈に溶かしたチョコレートをかけて、冷蔵庫で冷やせば簡単チョコバナナに。だってさ。これならすぐ出来そうだね。
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ソ:ぐあぁぁぁ! やめろぉぉぉ。
(胸を押さえ、苦しみながらソファーに倒れるソラ)
〇:なんで苦しんでんの?
ソ:敵を認めるわけには……
〇:素直に食べたいって言えばいいのに。
ソ:……牛乳とバターとチョコレート買っといて。
〇:認めたな。
(翌朝…)
―○○のマンション・玄関―
〇:行ってきます。
ソ:行ってらっしゃい。忘れ物はない?
〇:無いと思うけど……あ。
(鞄の中を見て何かに気づく)
〇:昨日、東京ばな奈で騒いで忘れてた……
ソ:なにを?
(革製の楽譜入れをソラに渡す○○)
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ソ:なにこれ?
〇:昨日、別れ際に生田さんがこれをソラに渡して欲しいって。
ソ:しゃもじのお姉さんが?
![](https://assets.st-note.com/img/1720230529852-AJTlIwtf7I.jpg?width=1200)
〇:うん。
ソ:ほえ~。なんだろ?
〇:僕は中を見ちゃいけないんだってさ。
ソ:ふーん。
(楽譜入れをまじまじと見つめるソラ)
〇:じゃ、行ってくるね。
ソ:あ、うん。行ってらっしゃい!
【バタン……🚪】
ソ:さて……これの中身はなんじゃらほいっと。
(ソファーに腰掛けて楽譜入れを開くソラ)
ソ:ん? チケット? それに楽譜と……手紙? え、私宛て?
(恐る恐る封を開け、中に入っている手紙を読む)
![](https://assets.st-note.com/img/1719362215216-UcHGXT1lnX.jpg?width=1200)
ソ:……
ソ:……
ソ:……
ソ:そんなこと言われても……私はどうしたらいいの。
-つづく-
ソラさんへ
今、手紙を読んで驚かれていると思います。どうしてもソラさんに伝えたい事があって、この手紙を書きました。
既にご存じかもしれませんが、ソラさんは私の大切な後輩、久保史緒里さんとよく似ているんです。それは、ソラさんにとって関係の無い事かも知れません。でもあの時、私はとても幸せな気持ちになったんです。もしかしたら私に会いに来てくれたのかもしれないって。だから、目の前にいるのが久保史緒里だとしたら……そう思ってソラさんとお話をしていました。変な質問を沢山して、不愉快な思いをさせたと思います。ごめんなさい。
楽譜と一緒にコンサートのチケットが入っています。それは乃木坂46が10月19日に開催するコンサートのチケットです。もし良かったら傍にいる彼と一緒に来てください。
チケットに書いてある通り、梅澤美波というアイドルがそのコンサートでグループから卒業します。
手紙を書いたもう一つの理由は、梅澤美波と久保史緒里の事をソラさんに知って欲しかったからです。
乃木坂46のメンバーだった久保史緒里は3年前、急性前骨髄球性白血病で亡くなりました。間に合わなかった家族の代わりに駆け付けた乃木坂46の3期生、彼女にとって家族同然の同期のメンバーに囲まれて息を引き取りました。でも同期の中で一人だけ、間に合わなかった子がいたんです。その子が梅澤美波なんです。
二人はグループに加入してから苦楽を共にしてきた戦友。そして、何でも相談しあえる親友のような関係でした。梅澤美波は自分が間に合わなかった事を悔やみ、心も体もボロボロになって、時に倒れてしまう事があっても、それでも立ち上がってきた。そして、10月19日のコンサートを最後にグループを卒業します。
ソラさんに関わりの無い話という事はわかっています。でも、もし良かったら見に来てあげてほしい。彼女の最後の雄姿を見届けてあげてほしい。勝手なお願いばかりでごめんなさい。もう一つの手紙は読んでも読まなくても構いません。ソラさんにお任せします。
生田絵梨花
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