ソラを見上げて #58 ひとつの夢、ふたりの夢
2022年11月16日。
―都内某所 病院・久保の病室―
久：私ね、夢があったんだ。
美：夢？
久：うん。
美：楽天イーグルスの専属マネージャーとか？
久：……
(笑顔のまま、ゆっくりと首を横に振る久保)
久：山下の隣で一緒に歌うこと。
美：そんなこと？ シンメになった事なんてこれまで何度もあったじゃん。
久：ただ隣で歌うだけじゃない。
美：他に何があんのよ？
久：フロントで、二人で真ん中に立って……
美：それって……
久：私の夢。背中合わせもいいけれど、二人で……まっすぐ前を見て歌うの。
美：……
久：叶えたかったな。
美：なによ、諦めんの？
久：……
美：戻ってくるんでしょ？ 何のために入院してんのよ。
久：うん。そうだね。
美：当たり前でしょ。そんなクマだらけの顔で戻ってきたって隣に立ってあげないから。
久：ふふ。頑張って治さなきゃ。
美：……やるわよ、絶対に。
久：え？
美：ダブルセンター。
久：やま……
美：癌細胞なんてさっさと蹴散らして、ヘッドスライディングで帰ってきなさいよ。
久：うん。
美：今日から……私の夢でもあるんだから。
久：ありがと。
美：その日まで、私も頑張るから。
久：そうだね。いつか……きっと。
―つづく―
【次回予告】
