ソラを見上げて #46 想いを胸に
梅澤美波卒業コンサート前日。
(2025年10月18日)
―hio株式会社・事務所―
桃:いよいよ明日だね。
〇:はい。大園社長と社員の皆さんには本当に感謝してます。
桃:今日は早く帰って、ゆっくり休むんだよ。
〇:大園社長こそ、寝坊してボサボサの髪でステージ上がらないで下さいよ?
桃:大丈夫だって、ちゃんとスタイリストさんが付いてくれるもん。
〇:はは。じゃあ安心ですね。
桃:……よく頑張ったね。
〇:正直、何度も折れそうになりました。でも、大園社長や社員のみなさんが優しく声をかけてくれたから頑張れたんです。その言葉にどれだけ救われたか……
桃:私達は答えを与えた訳じゃない、きっかけを作っただけ。キミはもがきながら自分で答えを見つけ出して行動した。誇っていい事だよ。
〇:ありがとうございます。
桃:ま、納品前日の夜に手直ししたいって言われた時は流石にびっくりしたけどね。
〇:すみません。どうしても我慢できなくて……
桃:素敵なアイデアだと思う。
〇:本当は、三代目を過去に縛ってしまうんじゃないかと思ってボツにしていたんです。だけど、やっぱりあの三人には運命的な何かを感じるんです。だから……
桃:メンバーも、会場のファンも喜んでくれるよ。
〇:はは、そうだといいんですけど。
【ピンポーン……♪】
〇:ん?
『カエル急便でーす! 荷物をお届けに伺いましたー!』
桃:はーい。
〇:え? え、え……えぇぇ!?
社員:あーあ、今回も大量ですねぇ。
(宅配業者とやり取りする桃子)
『ありがとうございます』
桃:はーい。ありがとうございました~。
〇:あの、大園社長。
桃:ん?
〇:なんすか、このダンボールの山。
桃:へへ。すごいでしょ?
〇:いや、すごいってレベルじゃないですよ。茨城県産干し芋……に、にじゅっきろ!?
桃:毎回運ぶの大変なんだよねぇ。
〇:オンラインショップで販売するんですか?
桃:あっはは! そんなわけないでしょ?
〇:そ、そうですよね。じゃあ誰がこんなに
桃:そんな事はいいじゃない。早く帰って休まなきゃ、ね?
〇:そう、ですね。かなり気になりますけど、そうします。
桃:じゃ、また明日。
〇:はい。衣装のこと、よろしくお願いします。
桃:いいのね? 私が伝えるって事で。
〇:はい。
桃:直接キミから伝えた方が良いと思うんだけど?
〇:僕が舞台裏にいたら邪魔になるだけですよ。じゃ、お願いします!
【バタン……🚪】
桃:そういう意味じゃないんだけどなぁ……ま、いっか。
社員:それはそうと。このダンボールの山、ちゃんと片付けて下さいよ?
桃:あはは、はーい。
―○○のマンション・玄関―
〇:ただいまー。
ソ:おかえり。早かったね。
〇:早く帰って休みなさいってさ。
ソ:ん、そっか。
〇:あとこれ、冷凍庫に入れといて。
ソ:なにこれ?
〇:何て言ってたっけな……芯タン?
ソ:しししし、芯タン!?
〇:うん。美味しいらしいよ。
ソ:美味しいなんてモンじゃないわよ! 超高級部位よ!
〇:あ、そうなの? 明日のコンサートが終わったら一緒に食べようと思って、駅で買ってきたんだ。
ソ:いくらなんでも奮発し過ぎじゃない?
〇:いいんだよ。明日は初仕事のお披露目だし、一週間に一度の夕飯の日だろ?
ソ:そうだけども。これはなかなか……
〇:帰ってきたら打ち上げパーティしよ。ね?
ソ:ふふ、そうね。今まで頑張ってきたんだもの。少しくらい贅沢してもバチが当たったりしないわよね。
(鼻歌を歌いながら冷凍庫へ真空パックされた芯タンを入れるソラ)
〇:さて、風呂に入ってさっさと寝よっかな。
ソ:……ねぇ○○。
〇:ん?
ソ:一緒に、帰ってこれるよね?
〇:なに言ってるんだよ。当たり前だろ? ここが僕達の家なんだから。他にどこに帰るっていうのさ。
ソ:そ、そうだよね! やだ、私ったら何言ってるのかしら。あはは。
(何かを取り繕うように笑顔を見せるソラ)
〇:……ソラ。
ソ:え?
〇:僕がそばにいる。一緒に帰ろう。
ソ:うん。二人でね。
〇:うん。
ソ:じゃ、先に寝るね。おやすみ、○○。
〇:おやすみ、ソラ。
(同時刻…)
―乃木坂46が宿泊するホテル・梅澤の部屋―
梅:……
(夜景を眺めている梅澤。部屋のテレビから天気予報が聞こえてくる)
『では明日10月19日 日曜日、宮城県内の天気をお伝えします。先週から今日まで長く雨が降りましたが、明日は天気が回復して、秋の草花が青空に映える一日となるでしょう。ただ、朝晩の気温の変化にはご注意下さい。外出の際には上着などの準備があると良いでしょう。またこの秋晴れは全国的に22日の水曜日まで続く見通しで絶好の洗濯日和・お出かけ日和となるでしょう。続いて週間の天気を……』
(大きく、ゆっくり深呼吸する)
梅:……よし。
夜更け。ソラが寝息をたてている。
ソ:すぅ、すぅ……んへへ。牛タンだぁ。
枕元に置かれている楽譜入れ。
入っていたのは、とある楽曲の楽譜。
ソ:んぅ、みんなぁ……てつだってぇ。
楽譜の余白には“あなたの歌よ”と書いてある。
ソ:でんがまたこぼしたぁ。
そして、開封されている2通の手紙……
-つづく-
【おまけ】