#00_Prologue AVANT1(WC1772/0310)
―遥香の自宅―
遥:はぁ……はぁ。
林:かっきーどうしたん? って、何も買ってないじゃん。
遥:コレ見て。
林:え、コレって週刊誌?
遥:いいからこの記事見て!
林:記事? ……え、うそでしょ?
遥:スーパーで買い物してて、雑誌コーナーを通りかかったらこれがあって……
林:7月以降って……じゃあ卒コンのすぐ後ってこと?
遥:ここに書かれている事が本当だとしたら、ね。
林:し、信じられないよこんなの。
遥:私だって
【♪♬~♪~~📱】
遥:はい、賀喜です。お疲れ様です。えぇ、大丈夫です。はい、林も一緒です。緊急で……ですか、はい、今日は休みだったので特に。分かりました。
遥:瑠奈、今日って一日オフだったよね?
林:え? うん、そうだけど。
遥:『今から事務所に来れないか?』って菊地さんが。
林:え、何があったの?
遥:わからない。けど、もしかしたら……
(遥香の視線の先には【齋藤飛鳥、失踪】の文字)
林:まさか……
遥:いい?
林:う、うん。
遥:お待たせしてすみません。私と瑠奈はこれから向かいます。わかりました、ありがとうございます。じゃあ30分後に下の入り口で……はい、お疲れ様です。
【ピッ……📱】
遥:菊地さんがここまで車回してくれるって。
林:そこまでして招集するって事は……
遥:かもね。マスコミに捕まらないようにって言ってたし。
林:これから何が起こるんだろ……
遥:わからない。でも、とにかく今は事務所に行こ?
林:わかった。
―SME六番町ビル・乃木坂46事務所―
事務所には一部の地方ロケ組を除いて招集されたメンバー、マネージャーや運営スタッフが大勢集まっていた。
今:みんな、すまない。緊急の案件が発生したので急遽集まってもらった。知っている者もいるかと思うが、今日発売の週刊誌に齋藤飛鳥に関する記事が掲載された。内容は……飛鳥が消息不明になっているというものだ。
(ざわつくメンバー達)
今:恐らくテレビやネット、様々なメディアでこの件を取り上げるだろう。だが、番組に出演した時や、記者にこの事を聞かれても何も答えないでくれ。
梅:あの、それって本当なんですか?
今:今、事実確認をしている。とにかくこの件は内内にしてくれ。
梅:わかりました……
今:みんなの気持ちも分かっているつもりだ。だが今は我慢してくれ。無闇に動いたり、飛鳥の自宅に近づいたりすればマスコミの格好の的になるだけだ。今は慌てず騒がず、グループ活動に集中してほしい。この件は俺がなんとかする……だから、頼む。
(深々と頭を下げる今野に何も言えなくなるメンバー達)
今:忙しい中、急に呼び出してすまなかった。話は以上だ。マネージャーとスタッフはメンバーの送迎を頼む。梅澤と山下はこの後、会議室に来てくれ。個別に話したい事がある。
(状況は解散、集められていたメンバーが次々と事務所を後にしていく中、一人だけ椅子に座ったまま動かないメンバーがいた)
林:かっきー。さくちゃんがまだ……
遥:さく……
(さくらに駆け寄る林と遥香)
さ:……
遥:……
さ:約束したの。
遥:え?
さ:自分を認めてあげられるようになったら、会いに行きますって。
遥:そっか。
さ:だから、それまで私は頑張らなくちゃいけないの。
林:さくちゃん……
さ:『うん』って言ってくれたもん。
遥:飛鳥さんは約束を破るような人じゃないもんね。
さ:うん。
―乃木坂46事務所・会議室―
今:急にこんな事になってすまなかった。
美:朝、家を出る時にコンビニで見ました……その記事。
今:そうか。で、二人にはお願いしたい事があるんだ。
美:なんですか?
今:飛鳥の事を探さないでくれ。
梅:え?
美:どういう事ですか?
今:お前達の事だ。このあと飛鳥に電話しようとしてたんじゃないか?
梅:それは……
美:はい。今すぐにでもしたい位です。
今:お前達は行動が早いからな。
梅:電話もかけるなって事ですか?
美:今野さん、もしかして何か知ってて
今:そうじゃない。
美:なら、どうして探すなって言うんですか!?
今:落ち着け山下。……だったら電話してみろ。
美:……
(携帯電話を鞄から取り出す美月)
【ピッピピ……📱】
【おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめになって、もう一度おかけ直し下さい。おかけになった電話番号は現在……】