ソラを見上げて #MC イモを素揚げで
○○が"野球狂の唄(うた)"でバイトを始めて、
数か月が経ったある日のこと…
ー野球狂の詩 開店前・厨房ー
マ:○○。すまないが、おつかい頼んでもいいか?
〇:はい。
マ:アーケード通りのマクドナルドに行って、ポテトを1つ買ってきてほしいんだ。
〇:わかりました。……ポテト一つでいいんですか?
マ:あぁ。研究用に食うだけだから。
〇:研究用? 何の研究ですか?
マ妻:ポテトのバージョンアップしたいから、参考にするんだって。
〇:もっと美味しくしたいって事ですね。わかりました、行ってきます!
マ:頼んだ!
ー野球狂の詩・店内ー
(楽しそうに大型モニターの前で野球を見ているソラ)
〇:(小声)ソラ
ソ:あれ? もう仕込み終わったの?
〇:(小声)それはまだなんだけど、マスターからおつかい頼まれてさ。
ソ:……えー! これからスタメン発表なのに!
〇:(小声)ごめん!
ソ:で、どこ行くの?
〇:(小声)アーケード通りのマクドナルド。
ソ:マクドナルド……
〇:(小声)マスターが研究に使うん
ソ:行く!
〇:(小声)え?
ソ:行きたい! 早く行こ?
(立ち上がり、目を輝かせるソラ)
〇:(小声)どうしたのソラ。なんでそんなに……
ソ:いいからいいから、"善は急げ"よ?
〇:う、うん。
ー仙台駅前・クリスロード商店街ー
◯:寿司屋、ドラッグストアのすぐ近く……あった。じゃあ行ってくるから待ってて……って、あれ?
(振り返ると、忽然としてソラの姿が消えていた)
〇:え、ソラ?
ソ:おーい。
〇:ん、どこ?
ソ:こっちだよ。早く早く!
(既に入口に辿り着き、手招きしているソラ)
◯:はは、子供みたい。
ーマクドナルド・店内ー
(揚げたてのポテトを頼み、テーブルで待っている2人)
♬♪~♬♪~……
ソ:あぁ、幸せを運ぶ無機質な電子音。私、今マクドナルドにいるのね!
◯:ソラ、なんでそんなに楽しそうなの?
ソ:だってマックだよ!? 来たくても中々来られる場所じゃないでしょ?
◯:いやいや、マックだよ!? 行こうと思ったら誰でも行けるでしょ?
ソ:……ん?
◯:ん?
ソ:言われてみれば、そんな気がしてきた。
〇:もしかして、生前の記憶と関係があるのかな?
ソ:ん~。うっすらとマクドナルドは気軽に行っちゃいけない場所って感覚があるのよね……なんでだろ?
『お待たせしました。マックフライポテトでございます』
◯:ありがとうございます。
ソ:……
(ポテトが入った袋を羨ましそうに見つめるソラ)
〇:……すいません!
『はい。なんでしょうか?』
〇:やっぱりもう一つ欲しいんですけど、いいですか?
『かしこまりました。すぐにご用意しますのでこちらへどうぞ』
〇:ありがとうございます。
ソ:……
(レジへ向かう○○を見つめるソラ)
〇:おまたせ。
ソ:どうしてもう一つ買ったの? マスターは一つって言ったんでしょ?
〇:これは、ソラの分だよ。
ソ:へ?
〇:『へ?』じゃないよ。顔に【食べたい!】って書いてあったよ?
ソ:えへへ/// バレたか。
〇:バレバレ。帰ったら思う存分食べて。
ソ:えー、○○も一緒に食べようよ。
〇:僕は遠慮しとくよ。
ソ:なんで? 苦手なの?
〇:そうじゃなくって、最近店のまかない食べ過ぎて体重が……
ソ:なーんだ、そんなことか。大丈夫よ、ポテトは太らないから。
〇:え? いやいや、ポテトは高カロリーだってば。
ソ:何言ってるの。フライドポテトはゼロカロリーなのよ?
〇:え、どういう事?
ソ:知らないの? カロリーは熱に弱いの。だから、油で揚げたらカロリーが無くなってゼロになるのよ?
〇:んなワケあるか!
ーおしまいー