ソラを見上げて #14 第一回成仏サミット開催
お線香事件から10日後……(#13参照)
―○○の部屋―
ソ:じゃ、始めるわよ?
〇:そんなかしこまってやるような事なのかな?
ソ:では……これより、第一回成仏サミットを開催します!
〇:声が大きいってば。
ソ:どうせ○○にしか聞こえてないので、問題ありません!
〇:だからって、そんな大声出さなくても……
ソ:では! 議題のある方、挙手! ハイ!
〇:ど、どうぞ。
ソ:そもそも私は【何故地縛霊になったのか?】を提言します!
〇:えー、ソラは何故そう思ったのでしょうか?
ソ:地縛霊になったにも関わらず、生前の記憶をほぼ無くしている、という点です。地縛霊なら未練や恨み、心残りの一つや二つ覚えているもんではないでしょうか?
〇:まぁ、確かに。
ソ:な・の・に! 私はなーんにも覚えてない! どうしろっていうの? って話であります!
〇:わかりました。では第一議題として【何故ソラが地縛霊になったのか?】を皆さんで考えていこうと思います。それでは、ご意見・お考えなどある方いらっしゃいましたら
ソ:ハイ!
〇:……どうぞ(この挙手制って意味あるのかな?)
ソ:きっと恋愛が出来ずに死んじゃったからだと思います!
〇:何か心当たりでも?
ソ:だって……ちゅーとか、してみたいなぁって思うし///
〇:なるほど。男性経験がないまま亡くなったのが原因で地縛霊になった。と……
ソ:議長! もう少しオブラートに包んで発言していただけないでしょうか?
〇:申し立てを棄却します。
ソ:酷い!
面倒くさいので、サミットごっこをやめました……
〇:確かにソラからは恨みも未練も感じないね。普通の女の子にしか見えないもん。
ソ:だから余計にタチが悪いのよね、何をすれば成仏出来るのかさっぱりだもの。
(途方に暮れた表情で天井を見上げているソラ)
〇:その、恋愛の記憶っていうのも無いの?
ソ:記憶は無いんだけど、恋愛をしてこなかったっていう確証みたいなものはあるのよね……
(胸のあたりを手で押さえるソラ)
〇:そっか。そうだとしたら……どうしたらいいのかなぁ
ソ:それは
〇:……
ソ:///
(二人の視線がぶつかると、淡い期待と気まずい空気が部屋に流れる)
〇:えっと……
ソ:あ、そうそう! ○○に見せたいものがあるの!
〇:え? 見せたいもの?
ソ:そう。見ててね? んんん……牛タン定食が食べたい!
〇:は?
(叫んだ瞬間ソラが光に包まれ、透けていた体が鮮明になっていく)
ソ:ふぅ……どう?
〇:まさか、実体化出来るようになったの?
ソ:うん! コツを掴んだら出来るようになったの!
〇:凄いじゃないか。
ソ:でしょでしょ?
〇:じゃあ……また、試してみてもいい?
ソ:どうぞ。
(ソラの頭を優しく撫でる○○)
〇:わ、本当だ。コツを掴んだって言ったけど、具体的にはどうやったの?
ソ:どうやった……ていうか、感情がたかぶったり、何かの欲求が強くなった時に実体化するみたい。
〇:じゃあ、さっきの牛タン定食! っていうのは
ソ:そう。もう何年も食べてない牛タンに思いを馳せて、食欲を爆発させたの
〇:あっははは! なんか、ソラらしいね。
ソ:それと、分かったことが二つあるの。
〇:二つ?
ソ:実体でいられる時間は大体五分。それと一度実体化したら、一週間は出来ないって事
〇:そうなんだ。じゃあ大事な時に使わないとね……え? じゃあ今使ったのは勿体無かったんじゃないの?
ソ:ううん、いいの。最初に○○に見てもらいたかったから……いいの。
〇:ん、そっか。
ソ:ねぇ、○○
〇:ん?
ソ:その、頭……///
〇:え? あぁぁ! ごっごめん!
ソ:ううん。どうぞって言ったの私だし
(ソラの頭を撫でていた手を慌てて引っ込める○○)
〇:あ! せっかくだし冷蔵庫に萩の月があったから持ってこようか?
ソ:う、うん。お願い
〇:はい。牛タンじゃないけど、萩の月だって何年も食べてないでしょ?
ソ:そうね……この黄色くて丸い形。手に取っただけでも感動する……
〇:良かった。じゃ、遠慮しないで食べて
ソ:うん
(まるで何かを確かめるかの様にゆっくりと外装を剥がし、萩の月を口にするソラ)
ソ:……(もぐもぐ)
〇:どう?
ソ:おいしぃ。おいしいよ、○○
〇:あらら、そんなにおいしかった?
ソ:うん……うん。
(ぽろぽろと涙を流すソラ。その涙を指で拭う○○)
〇:ソラが食べたい物があったら言ってね。買っておくから。
ソ:そんなこと言っちゃっていいの? お金ないのに……
〇:マスターのとこでバイト始めたし、少し位なら大丈夫だよ。毎週牛タンは厳しいけどね
ソ:テレビ……
〇:実体化関係ないでしょ?
ソ:ばれたか
〇:こんな時でも野球のこと考えてるんだね、ソラは
ソ:なによ……いけない?
〇:ううん、ソラらしくていいんじゃない?
(もう一度ソラの頭を撫でる○○)
ソ:じゃあ……○○は、今どんなことを考えてるの?
〇:そうだなぁ……ソラは泣いてるより笑ってる方が可愛いなって
ソ:もぅ見ないで/// 恥ずかしくて死んじゃうから
〇:もう死んじゃってるけどね?
ソ:……ムード台無し
〇:いつものソラだったら言うかなって。
ソ:今はいつもじゃないの。
〇:じゃあ、どんなソラ?
ソ:聞くな、ばか。
〇:はいはい
ソ:……///
二人はこの日を境に一週間に一度、○○がソラが食べたいものを作る日を決めるのだった。その日になると、ソラは頬っぺたをパンパンに膨らませ、夕飯を楽しんでいた。
ーつづくー
【おまけ】
(とある日のこと……)
〇:ソラ、詰め込みすぎ! なんかもうリスみたい!
ソ:実体化が解けても、口の中に入ってればセーフなの!
〇:なんだよセーフって……
ソ:いいから次! ずんだシェイク!
〇:はいはい(どんなシステムだよ……)