「裏通りの鳥居 ~ 俗界から俗界への結界?」
それは、何の変哲も無い殺風景な裏通りに立っていた。角を曲がった途端、コンクリートの大きな鳥居が突然姿を現したときには驚いた。
鳥居の奥にはNTTのビルが建っている。
まさかそれを祀ってあるわけでもなかろう。鳥居の古びた様子を見ても、NTTのビルが建つ遥か以前に建立されたようだ。
次の写真は、NTT側から見た様子。
こちの奥にも神社らしきものは見えない。いつ、誰が何を思ってこんなところに鳥居を建ててしまったのだろうか?
近所に住んでいるらしき方の姿が見えたので、尋ねてみたところ、すぐに答えが得られた。これは、ここから少し離れた所にある松原神社の鳥居なのだそうだ。
― 神社から離れたこんなところに何故? ー
その昔、この道路は神社への参道だったのだが、NTTのビルが、それを遮る位置に建ってしまった。その結果、鳥居だけが、ポツンと取り残され、今では誰にも顧みられることも無く、手入れさることもないまま、かつての威光をすっかり失い、寂しげな姿を晒し続けている。不思議がって尋ねてくる僕のような人が、けっこういるらしい。
ー それにしても何故? 参道を潰したときに、どんな事情があって鳥居だけを残したのだろう? ー
そう思って、さらに訊いてみると、神聖なものなので、祟りを恐れて誰も手を付けられないという答えが返って来た。
ということは、この鳥居は、未来永劫、伝説を背負ったままここに立ち続けることになるのだろうか?