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この現象

その現象は、新しい感染症が落ち着き始めた2023年頃から見られ始めた。
最初はそれが特別な現象だとは、思われていなかった。
よくあること、ではないものの、そういうこともあるかもしれない、という認識が一般的だった。
しかし、今やこの現象に多くの人が頭を悩ませている。
オンライン上でしか見られないのも、非常にやっかいである。
最新のアップデートにより、各種アプリはこの現象を打ち消すような機能を搭載するようになったため、問題は下火になってきたと今朝のニュースで報じていた。

この現象の、そもそものきっかけは、あるオンラインサロンでの交流中でのことだった。
一人の参加者が、左右にゆらゆらと揺れ出した。
音楽にノッていたわけでも、乗り物に揺られていたわけでもない。
後に揺れ始めた彼に話を聞く機会があったが、彼自身も気づいたら揺れていたという。
周りの人が揺れ出して、初めて自分も揺れていることに気づいたそうだ。
そう、この現象は伝播する。

ビールの名前のようなウイルスによる感染症がおさまってきたと思ったら、今度は酒に酔っているように左右に揺れてしまう現象が広がってきたのだ。
繰り返しになるが、この現象はオンラインミーティングで、ビデオオンの状態でしか見られない。
さらに、最近の研究で分かったことだが、優柔不断な人ほど発現しやすく、また男性ほど伝播力が高い。

電子の海を漂い、拡がり、0と1の中で揺れる。
そんなイメージと、実際に身体をフワフワと揺らす様子から、この現象は、いつしか【クラゲ化現象】と呼ばれるようになった。

晩夏の候、今年も海にもネット上にもクラゲが漂っている。



七緒よう


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