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飛騨高山旅行記(その3:高山駅と飛騨の里)
シャトルバスで高山グリーンホテルに到着したのが12:45頃。
まだチェックインには早いお時間ですが、荷物は事前に預かって下さるので観光の前に寄ることにしていました。
チェックイン時には鍵の受け取りだけで済むようにと記帳も済まさせて頂き、お食事会場やお時間など諸々の説明もこのタイミングで完了。
身軽になったところで、さて本日の動きはどうしようか。
予定より1本遅い特急に乗ったので元のスケジュールからは1時間以上押していますが、予定していた「飛騨の里」の観覧所要時間は30-60分とのこと。
私たちは展示物をやたらじっくり眺める癖があるようで、気付いたら一般的な所要時間の2〜3倍かかっている、なんてことが多いのですが、それでも夕方にはホテルに戻って来れそうです。
ということで、観光前にまずは腹ごしらえ。
ホテルの目と鼻の先にある高山らーめんの人気店、甚五郎らーめん本店にて中華そば(とランチサービスの白ごはん)を頂くことに。
甚五郎らーめん(ランチタイムはごはんサービス付き)
— めりこ (@me_ri_co) January 12, 2025
メニューが中華そば一択(大盛りとチャーシュー増しはある)なの好き
スープさらさらだけど鶏と豚の出汁と醤油味が濃くてごはんと合いすぎる
わたし基本太麺派なんですがこのちぢれ細麺のしっかりした食感好きだわ pic.twitter.com/QoyPQSc1Ug
(当日はエンジョイしすぎて投稿を忘れていたので日付が違っていますが悪しからず)
昼食を終えて外に出ると、先程シャトルバスを降りた時にはまだ少し降っていた雪も止んで良いお天気になっていました。
マフラーや防寒素材の帽子を身につけなくても過ごせるくらい。
快適な気候、眼前には雪景色、足元には降り積もったばかりのふかふかの雪!
うおおおおお!!!!!! pic.twitter.com/Yb5ZGGVkTW
— めりこ (@me_ri_co) January 10, 2025
最高の高山観光日和です!
予定変更せず来て良かったーーー!!
さて、飛騨の里に向かうには観光向け周遊バス「さるぼぼバス」に乗る必要があり、発着場所である駅東側の濃飛バスセンターに向かうため再度西口から駅舎に登り橋上の東西自由通路を渡ります。
先程は駅舎を出てすぐにシャトルバスに乗ってしまったので外観をよく見ていませんでしたが、車窓から見えていた"シュッとした"ホテル同様に駅舎も直線的で現代的な外観です。
ただ、シュッとしたホテルは全て東口側に固まっていたようで、西口ロータリー周辺には目立った建物はありません。
先程私たちを送ってくれたシャトルバスがまた来客を迎えるためにぽつんと停車しているくらい。
そんな人の往来の少ない西口ですが、階段だけでなく上り下り2本のエスカレーター(常時稼働ではなく人感センサー式)が設置されており、もちろんエレベーターも完備。
うーん、立派な駅です。
そのままバスセンターに向かうとバスの出発まで時間を持て余しそうだったので、東西通路「匠通り」にある高山祭の屋台(一般的には山車と呼ばれるようなもの)の模型や屋台に使われる工芸の解説展示を見てみました。
これが駅通路の無料展示とは思えないくらい充実していて。
ここに来て初めて知ったのですが、高山祭は京都の祇園祭、埼玉の秩父夜祭と並ぶ日本三大美祭に数えられるのだそうです。
(秩父夜祭もそうだったなんて初めて知りました。西武線ユーザーなのに。)
それぞれの屋台に付いている家紋のような紋章の展示、車輪の解説、装飾の構造や素材の紹介、衣装の展示。そして一番東側には実物大の屋台の模型。
半切りにした屋台を壁に埋め込んだかのような模型は展示のために作られた物のようで、あえて作りかけにして工程を見せてくれる部分も多々あります。
下描きの残る荒削りの木彫りの龍や、木目が見える状態から徐々に漆が塗り重ねられていく様子が可視化された車輪、屋台本体も木で組まれただけの部分と塗装された部分、金属の装飾まで付いた部分と徐々に完成していく様子が見て取れるようになっていて見応え抜群です。
つい見惚れて身を乗り出しすぎたようで人感センサーが反応して警告音が鳴ってしまいました。
お恥ずかしい…。
(警告音が鳴っても警備員さんが飛んでくるとかではなく、模型から距離を取れば音が止まってそれきりだったので良かったです…。)
バスの時間が近付いて来たので東口から降りて濃飛バスセンターへ。
バスセンターは駅前ロータリーから少し北に行った所にあり、そこもまた小さなロータリー状になっています。
いくつかの乗り場が等間隔で配置されているのですが、長蛇の列が出来て通行の妨げにすらなっている乗り場がありました。
大きな荷物を持った人たちがバスの床下に荷物を預けています。
これはどう見ても路線バスや周遊バスではなく長距離バス。
乗り場に書いてある行き先を見てみると、東京や大阪などもあります。
おそらく今行列を作っている人の大半は日本各地の名所を見て回る訪日観光客の方々ですが、お盆や年末年始なんかは都市部に進学したり働きに出ている人達が帰省するにも重宝されそうです。
周遊バスレーンの列に並ぶ前に、飛騨の里は往復のバスと入場料のセット券を買うとそれぞれを単独で支払うより少しだけお得なので券売機で購入し、13:45発のさるぼぼバスに乗車。
さるぼぼバスは駅西側の市街地を進み、少し小高い場所にある飛騨の里へと向かいます。
ものの10分ほどで飛騨の里に到着、下車するとバス停前が工芸体験コーナーとお土産屋さんになっていました。
お土産は帰りに覗けばいいかな、と思っていたのですが、体験コーナーの外に陳列されていた、真っ白な生地に真っ赤な顔料プリントでさるぼぼが2体前傾姿勢で向かい合った図案の下に「Red Bobo」と大きなロゴが入ったTシャツが目に飛び込んで来ました。
出た!!!ご当地パロTだ!!!
飛騨の里の入り口に向かおうとする夫を呼び止めてTシャツを見せると大喜び(夫は面白Tシャツが大好きで収集癖があります)。
他に「THE NORTH ALPS」なんかもあってセンス良すぎ。
これは帰りに絶対買おう、と決め、改めて飛騨の里の入り口へと向かいました。
窓口でセット券を提示してマップを受け取り中に入ると、早速「私たちの想像してた岐阜!!」という風景が広がっています。
ご丁寧に記念写真向けの「飛騨の里 2025年 1月10日」と書かれた板までご用意あり。
というわけで、まずは記念撮影。
ぎふのポーズ pic.twitter.com/12Z6GnHQdA
— めりこ (@me_ri_co) January 10, 2025
やっぱりこのポーズはやっておかなきゃね。
飛騨の里に来たのは、今回の旅行先に岐阜を選んだ理由のひとつに「新婚旅行の行き先候補に白川郷も挙がっていたものの断念した」があったから、お気軽白川郷気分を味わおう、的な軽率な気持ちでした。
私達の新婚旅行の行き先は福井と金沢で、どうせならそのまま金沢からバスで白川郷に行ってみてもいいのでは?と検討したのですが、私が外泊先で眠るのがあまりにも不得意で4泊以上の旅行は睡眠不足でくたびれてしまうという理由で金沢からはまっすぐ帰ろうという方針に落ち着きまして。
じゃあ今回こそ白川郷に行けば良かったんじゃない?というのはごもっともなのですが、今回は今回でホテル滞在をメインに1泊2日でサクッと旅行したかったので白川郷は行って帰ってくるだけで結構な時間がかかってしまいそう…あれ?高山駅周辺で合掌造りが見れる施設がある!行こう!という流れだったというわけです。
なので、合掌造りが見れること以外は何も知らず。
飛騨の里の窓口で受け取ったマップには「20分コース」「40分コース」「60分コース」といったモデルコースの案内が示されています。
せっかくだし全部見たい!60分コース!と順路を進むと、「冬季は積雪のため侵入禁止」となっているエリアが多くあり、残念ながら全ての見どころを観覧することは出来なさそう。
でも、裏を返せば観覧できる物はじっくり見ても大丈夫であろう!
60分コース全部なら3時間かかるかもしれないけど、強制ショートカットコースになるし1〜2時間くらいかな?
というのは完全にフラグでした。
古い家屋の外観と雪の風景を楽しむだけなら小一時間でさらっと回れるかもしれませんが…
家屋の中にはわざわざ温かいもこもこスリッパのご用意があり、建築の内部構造を観覧出来るだけでなく昔使われていた道具や飛騨の人々の暮らしについての解説もしっかり。
私は服飾専門学校卒のアパレルメーカー商品企画チーム勤めなので、コースの序盤にある家屋で養蚕関連の展示が充実していたのがとても興味深く、かなりじっくり見てしまいました。
飛騨では養蚕が盛んだったそうで(元々ものすごく盛んだったというわけではなく、盛んにさせようと私財をつぎ込んで蚕と桑を買って配った人がいたそうです)、合掌造りの2階、3階部分は蚕を育てるための場所だったそうです。
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(これは正確には合掌造りではなく、合掌造りに限りなく近い、いわば合掌造りの前身とも言える建築なのですが)
丸太を等間隔で削って最低限足を掛けられる場所を設けただけの簡素な階段?ハシゴ?がかけられた上階は、床というには隙間がありすぎる最低限安全に作業が出来る足場といった感じの板が張られています。
背の高い建築ではありますが、居住スペースは1階だけだったんですね。
ここで蚕を育てて繭を製糸工場に出荷するのだそうですが、やはり蚕も生き物ですから均一な品質の繭ばかりが出来るわけではなく、時々オオマユという2匹の蚕が中に入った繭ができてしまい、そちらは糸が絡んで長く綺麗な生糸には出来ないため出荷せずに蚕を育てたご家庭でお布団用の真綿にしたり(真綿ってコットンじゃなくて絹だったんですね、初めて知りました)、ご家族のためのよそゆきの着物にする生地を織るのに使ったんだそうです。
出荷できない繭から取った節のある糸を使った飛騨紬という着物地は洋裁生地で言うシャンタンそのもので、不規則な横畝があることで生まれる程良い粗野感がとても魅力的でした。
(元々個人的にシャンタンがとても好き)
また、(これは絹ではなく木綿なのでちょっと別の話ですが)ガラスケース内に展示された刺し子の火消し半纏がこれは本当に刺し子?と疑ってしまうほど細かく規則的に縫い目が入っていて、例えるならば太い糸で織ったオックスフォード地に見えるような感じ。
でも、織りではなくて。織り糸より太い糸が縦方向に縫われているんです。1.5ミリくらいの間隔で生地を出入りして。
私は刺し子といえば布巾に麻の葉模様を入れるようなものをイメージしていたのでだいぶ衝撃的でした…。
飛騨の女性の製糸技術は他所の地域の製糸工場からも評判だったとの解説文もありましたし、手芸的な作業でも手先が器用な方が多かったのでしょうか。
農村の暮らしや農業が出来ない冬の内職についての展示も多くありました。
特急に乗っている時、道中の雪に埋もれた田畑を眺めながら「昔の農家は冬の間わらじ編んでるようなイメージだけど今って冬の間はどうしてるんだろうね」という話をしていたのですが本当にわらじや蓑の展示もありました。
日本昔ばなしの世界だ…。
あとは、用途別の色々なソリが展示されていたり、いろりに鍋などを提げるための自在鉤が数多く展示されていたり。
下足を脱いでじっくり屋内の展示を見て回っていると、自身の体温で温められていた防寒靴もひんやりと冷えてしまい、途中からは「これ以上靴を冷やしたくないから」と屋内展示の観覧を諦めるほど、一度屋内に入るとなかなか出て来られないくらいの展示物と解説がありました。
暮らしや仕事に関する展示も素晴らしかったのですが、この飛騨の里の最大の見どころは様々な地域の家屋がこの一箇所に集っていることです。
先程写真を載せた「合掌造りに限りなく近い、いわば合掌造りの前身とも言える建築」もその一例で、この飛騨の里に建っている建築はどれも似ているように見えて実は建てられた時期や元々建っていた場所の気温、気候などによって造りに違いがあります。
前述の通り私はここが白川郷までは行く時間がない人でも高山駅近くで気軽に合掌造りを観覧出来る観光向けの施設だと勘違いしていたんです。
ここは決してそんなものではなく、飛騨国近辺の様々な様式の農村家屋を一度に見ることが出来る貴重な屋外資料館といったところでしょうか。
とある家屋内には「この家屋は電力需要の高まりによりダム建設のために沈むことになった村から移設して来たもの」「飛騨の里に各地の家屋を移設して来ることになった時にそれぞれの地域の家屋が近隣地域の家屋と(建築方法などで)互いに影響し合っていることが判明した」といった旨の解説文がありました。
ぱっと見は似たような造りでも、よく観察すると比較的温暖な地域の家屋は外に軒先のような廊下があったり。換気や彩光のための窓などが地域によってあったりなかったり。天井があるものもあれば、天井がなくてそのまま屋根が乗せられているものもあったり。屋内の造りは部分的に共通していたり。
建築の知識が全くない私たちが見てもこんなに面白いんだから、多少知識のある方が見たらもっと面白いんだろうな。
それと、家屋と家屋の間を行き来する道の途中にはお地蔵様や仏像が数多く建っていました。
それぞれの仏様の解説や像を彫った人の解説はあるものの、何故こんなにも沢山のお地蔵様、仏様が鎮座しているのかの解説はありませんでした。
これは私の憶測でしかありませんが、先ほどの家屋のようにダムに沈んでしまう集落から救い出されて移設されて来たんじゃないか、と思います。
飛騨、ダム建設で沈む、というと、我々平成世代オタクの脳裏には雛見沢村が浮かびます。
集落や村単位での民間信仰などもあったのかもしれません。
60分ルートの一番最後、出入り口のすぐ横の建物では伝統工芸「一位一刀彫」の実演が行われていました。
一位というのはイチイの木の漢字表記なのだそう。
赤い部分と白い部分のある独特の木で、一位一刀彫は塗装などをせず木を彫るだけで作り上げるのが特徴なのだそうです。
そういえば、駅で見た高山祭の屋台に飾られた木彫りの龍なんかも塗装されていなかったな。
こういった工芸品は昔から専業の工芸作家さんによるものなのか、それとも農家の方が冬季に副業的にやることもあったのでしょうか。
どちらにせよ、こういった技術を磨いて来た歴史があるからこそ、あの立派な高山祭の屋台が出来上がるのか、と、点と点が繋がったような気がして。
来る前に駅の匠通りを見ておいて良かったかも。
ふと時計を見ると16:20を少し過ぎたところ。
着いたの14時前だったのに!!
60分コースとは!?!?!?!?
あんなに沢山の展示物と解説を設置しておいて60分なんて無理がありません?
確かに私たち展示の観覧にかなり時間がかかる方だって自覚はありますけど、それでも積雪立ち入り禁止区域もあったし足冷え防止で上がらなかった家屋もあったしかなりショートカットしてですよ???
これ夏場の全家屋解放時に行ったら1日がかりなんじゃない…???
なんで所要時間30〜60分って書いてあったんでしょう…3時間とか書いたらお客さん来なくなっちゃうからサバ読んでるのかしら。
ホテルのお夕飯は19:00スタートの予約ですが、その前にラウンジでケーキ食べるつもりだから間あけてお腹空かせるためにはもうそろそろ戻らなきゃ。
さるぼぼバスが来るのは16:29、その次の便は17:09。
ちなみにラウンジの営業時間は…と調べると
17:00まで!!!
なんてこった!!!
29分のバスを逃したらケーキが食べられない!!!
お土産やさんでさっきのTシャツも買いたいし!と、大急ぎで飛騨の里を出てバス停に向かうと
お土産屋さん、16:00閉店でした。
なんてこった!!!!!!!
「でも、ご当地パロTだからきっと街中のお土産やさんでも売っているよね」
「もしかしたらホテルの売店にもあるかも」
「あとで探してみよっか」
これも特大フラグなのですが、それはまた後ほど回収されるということで…。
バスは道が混んでいたのか10分ほど遅延して到着。
ホテルから5分ほどの距離にあるバス停、花里町3丁目には16:45頃に到着しました。
あと15分でラウンジが閉店してしまう…!!
ラウンジで食べることは出来ないだろうけど、たくさん歩いてお腹ぺこぺこだしせめてテイクアウトしてお部屋でティータイムがしたい…!!
気温も下がって、雪も踏み固められ、足場の悪い夕暮れ道。
果たして我々は無事営業時間内にホテルラウンジに辿り着けるのか…
そしてケーキの在庫はまだあるのか…!!!
というわけで、次回、高山グリーンホテル編に続きます。