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抗生物質を処方してくれないドイツの医者

10月上旬から風邪をひいた。
そして11月中旬を過ぎるまで完治しなかった。

ドイツへ移住した年にひどい気管支炎になり、医者から効く薬をなかなか処方してもらえず辛い思いをしたので、風邪をひいたら早めに常備薬を飲むようにしていたのだが、7年ぶりに悪化した。

熱や咳がでないまま、悪寒と頭痛が5日間ほど続いたヘンな風邪。
ついに激しい咳が出始めた。
日本だとこの段階で医者に行くが、ドイツの医者にはなるべくかかりたくないのでガマン・・・。

ただ咳の激しさで、これは気管支炎に発展したかな?と思った矢先、右胸に咳をする度にナイフが刺さったような鋭い痛みが・・・。
とうとう観念して医者に行くことにした。

ドイツでは救急でない限り、「ハウスアルツト(Hausarzt)」という家庭医に行かなければならない。


タイミングが悪いことに、私の主治医は”休暇中”。
それも14日間ほど来ない、とのこと。

しぶしぶ代替の医者で予約をとって来院すると、30代前半の頭の良さそうな、感じの良い女性医が待っていた。

頭痛と悪寒から始まり、激しい咳と胸痛の症状と、市販薬はイブプロフェンや風邪薬を試したが効果がない。肺炎を2度経験していて、咳の激しさと胸の痛みから、肺炎や気管支炎になっていそうで不安なことを伝えた。

何かのウィルスが胸に入ったのだと思うが、胸の音はキレイなので肺炎ではないと診断された。

そして、咳は激しく出ているが、喉の炎症はそれほどでもないので、咳と痰を促す薬と、胸痛の対策で筋肉痛を和らげる薬を処方します、との事。

やっぱり、と落胆してしまった。咳と痰を促す薬なんて、とっくに1週間以上試している。さらに私の胸痛は運動をしたことによる筋肉痛ではない。そんなもん飲んで痛みだけ和らげて、治るわけないだろう。

そう、ドイツの医者は抗生物質をほとんど処方してくれない。


日本の医者は安易に処方するし、それが良くないというのも分かっている。

でもこのケースでは、さすがに処方して欲しい。
なんと言っても、もう咳を出すための体力が弱ってきている。

7年前の移住当時なら、ここで大人しく帰るところだが、要望はハッキリ言葉で示さないと生きていけない文化。

抗生物質を処方して欲しい旨を伝えると、抗生物質は細菌にしか効かない、ウィルスには無効だ、と反対されるが、ウィルスだと断言できる検査もしてないし、胸痛が右胸だけなのも気になる、肺炎の初期を放置した時の症状に似ている、抗生物質は気管支炎にも効果がある、と引き下がらない私。

そうとう考えた後、女医はやっと抗生物質を処方することに同意した。
たったの3日分。でもないよりはマシ。

そして抗生物質を服用すると、驚くほどのスピードで痰の色がオレンジ黄緑から白&透明へ、胸痛も消え、咳の症状も改善された!

なーんだ、ウィルスじゃなくて細菌だったんじゃない。
と心の中で勝利宣言をしたのだが、なんせ処方されたのは3日間。

服用が終わって1週間ほどすると、今度は咳は時折しか出ないのに、刺すような胸痛が!
今度の胸痛はハンパない。咳をする時だけでなく腕を上げたり、重い物を持つだけで、動けなくなるほどの痛みが走った。

これはマズい、と再度医者を受診。
私の主治医はまだ休暇から戻っていない。
また前回の女医と向き合うことに・・・。

抗生物質を服用してから回復に向かったこと、服用期間が短かったせいか、胸痛が再発したことを伝え、薬の再処方を依頼した。

返答は、”ノー”。
効いたのに、なぜ?

と腑に落ちない私に、胸部レントゲン検査と血液検査をします、とのこと。

まあ確かにそれも分かる。けどタイミング的には前回やって欲しかった。
それにハウスアルツトには診療所のような設備しかないので、レントゲンは他の医療機関を予約して出向かなければならないし、時間もかかるのだ。

血液検査も別の検査機関に発送して検査するため、翌日の午前10時までに再来しなければならない、という不便さ。

移住するまでドイツの医療は最高品質!と信じていた私はバカ。

いったいどんな田舎に住んでるんだい?と言いたくなるようなシステム。
私が死ぬほど弱ってたら、こんなたらい回し、耐えられるわけがない。

ただ1日伸びてもまだ大丈夫な状態だったので、検査に合意した。

運良く、レントゲンの予約が当日に取れ、血液検査もスムーズに行えた。
これでやっと薬を再処方してもらえるだろうと、来院の予約の電話をしたところ、

「検査結果は全て良好だったので、これ以上の薬の服用、この検査に関しての医師との面会は不要です」
と病院の受付嬢に電話で伝えられる。

え、ちょっと、待ってよ!と思っても、これでおしまい。
なんなの?この胸の痛みはどうなるの?と尋ねると、
「どうしても面会したい場合は、予約を取りますけど?」
ときたので、もちろん行きますよ、と翌日行くことに。

ここまでの経緯で、しびれを切らした旦那が、
「オレも行って話す」と、動く。
彼も別件で医者に行く必要があったので、ちょうど良いタイミング。

ただ私は、もう絶対に抗生物質は処方してもらえないだろうから、行っても無駄だし、旦那が女医とケンカするだけだろうと、悲観的に考えていた。

さて次の日、憂鬱な気分で来院してみると、
なんと、私の主治医がさっそうと院内を歩いている!

そう彼女は休暇から戻ってきたのだった!
これは涙がでるほど嬉しいサプライズ!

旦那について来なくていいよ、と告げて診察室に入り、今までの経緯を説明した。主治医はこう言い放った。

「今年はよく分からない、長くかかる風邪が流行していて、熱がなくて頭痛と咳がひどいなら、百日咳の症状に似ている。もし百日咳なら咳が治まるまで2ケ月ほどかかるし、抗生物質での治療が有効なので、2週間分処方します。胸部位レントゲンで問題なかったけど胸痛がひどいなら、イブプロフェンを服用してください。」

・・・そう、そうよ、私はそういう、まともな薬の処方を待っていたのよ!

3週間もかかった長い道のり。やっと2週間分の抗生物質を手に入れたけれど、病気になってからだいぶ日がたっていたせいか、最初の7日間はあまり症状が改善されず、服用が終わるころやっと回復してきた感じだった。

10月上旬から11月中旬を過ぎるまで、完治しなかった今回の風邪(百日咳?)。

ドイツの秋は過ぎ去るのがすごく早い。秋なんてないんじゃないか?って思うことだってある。今年は特に、毎日、霧(きり)、朝から晩まで霧。ずーっと霧で、太陽も青空も見えない日が続いた10月と11月。

2025年の私の秋は、ほどんと外に出る事さえ、できないないまま過ぎ去った。
気付けばもう、クリスマスのアドベンツが始まる週末まで、あと1週間。
ストレスの多い12月が始まろうとしている。


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