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混ぜるな、危険。

私には混ざるとどうしても許せないものがある。

食べ物と髪の毛だ。

そう言われて思いつくのは、飲食店で提供された食べ物に髪の毛が混入している事例だと思う。

でもこれは大して嫌じゃない。店員も呼ばずに自分で取り除いて食事を続ける。

では何が許せないか。

洗面台の中で混ざる食べ物と髪の毛だ。

洗面台前では髪の毛が落ちることはよくあるし、当然歯磨きもするので食べカスが落ちることもよくある。

この二つが混ざることがどうしても嫌で許せない。

厳密にいえば、食べ物というよりは食べカスと髪の毛が混ざることが嫌なのだと思う。

だから洗面台は私にとって、混ざってはいけないものが混ざりやすい環境なのである。




混ざってはいけないものが混ざりやすい環境に同居していることは普段の生活でよくあることだと思う。

有名なのは塩素系の漂白剤と酸性の洗剤。この2つが混ざると塩素ガスが発生する可能性があり危険らしい。

でも漂白剤と洗剤なんて同じ環境に同居しやすいだろう。

他に、混ざってはいけないものが同居しやすい環境は何かあるだろうか。




例えば、

白米と牛乳が同居する幸せな朝の食卓とか。まぁこれは口の中で混ぜなければいいのだけれど。

あとは高圧的でパワハラがなんたるかを理解していない上司と、心が繊細で臆病な部下が同居する会社とか。

体力が落ちてきたひ弱な老人と、ニートで引きこもりの息子が同居する閑静な住宅街の一軒家とか。

依存体質の女性と、ろくでなしの彼氏が同居する汚いワンルームマンションの一室とか。

幼い子供たちと、新しく父親になった子供嫌いな男性が同居する1LDKの木造アパートとか。




混ぜたらいけないものが混ざらないようにするには、誰かがその環境に注意を払っておく必要がある。

私の場合は歯磨きをする前に洗面台の髪の毛を取り除けばいい。

だが重要なのは当事者同士は自分でその状況を避けることが難しいという点だろう。

私の食べカスも、私の髪の毛も自分でその状況を避けることは難しく、私という第三者が注意を払わないといけない。

そもそも当事者同士は自分たちが混ざることによって孕む危険性を認識していないことが多いと思う。

悲惨な結果になる前に誰かが気付いて行動しなければ。




混ぜるな、危険。

そう思いながら毎日、私は洗面台の髪の毛を丁寧に取り除いている。

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