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映画「モンスターハウス」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第79回

人生はグロテスクだけど生きる価値はある
2006年公開映画「モンスターハウス(Monster House)」
文:〝美根〟(2023年11月25日連載公開)

最近人生はグロテスクに思えている。有機生命体の私たちは、食事と排泄を繰り返し、欲望と理性とで綱渡りをしながら、羨望や野心や諦めや嫉妬と、綺麗なものだけではない気持ちで胸の内を渦巻かせている。…あれ私だけ?みんなはどうかな。
人の幸せを祈っておきながら、誰かを憎く思ったりもしてしまう。自分さえも矛盾だらけで、病みかけていた私だけれど、そういえば、子供の頃に胃がグニャッとうすら気持ち悪い、そんなグロテスクな感覚を知った映画があったなぁと思い出した。今回はその映画を紹介する。

【怪しい向かいの家】

ある街に、寂れた薄気味悪い一軒家が建っていた。そこに住む年老いた男ネバークラッカーは、敷地に一歩でも侵入されることを嫌い、大人子供関係なく、追い払っていた。その向かいの家に住む少年DJは、そんなネバークラッカーの家を不審に感じていた。

そんな折、DJの親友チャウダーのボールがネバークラッカーの家の芝生に転がり込んでしまう。案の定怒って家から飛び出てきたネバークラッカーだったが、突然苦しそうに倒れ込み、救急車で運ばれてしまう。その日から、家主不在の家の様子が以前にも増しておかしくなっていた。

DJとチャウダーは、見張りを続けるが、チャウダーが試しにベルを鳴らすと、まるで生き物のように動きだし、家が襲ってきたのだ。何がおこっているのか?なぜこの家は襲ってくるのか?DJたちは街の平和と真相を知るためにある計画を立てるが…という話。

【子供心に強烈にこびりつく】

一見子供向けのホラーかなと思いきや、怒涛の展開に目が離せない大人も楽しめる作品。大人になって改めて見てみると、背伸びしたい主人公の子供達がより愛おしく、より登場人物の心情を感じられた。

冴えない主人公たちが、大人たちにも信じてもらえず、馬鹿にされる描写はもどかしく、不快感すらあるが、その反動で、子供達のアドベンチャーが映える。近所の家が、なんだかおかしい・・・というシチュエーションは、子供の頃の私には普段の日々を侵食してくるような怖さがあった。

【ネバークラッカーは何を知っている?】

モンスターハウスにはある秘密が隠されているのだが、ここら辺のミステリー要素もまた面白く、子供向けにしては若干ヘビーな印象を受けるほどのダークさがまた良い!

また、このモンスターハウスのビジュアルも良い。最初、玄関部分のみが口になっており、おちょぼ口でちょっと可愛いさもあるのだが、だんだん口が正面玄関のテラス部分も含まれるように大きくなり、怖さが増す。また、家の壁面の木材がギシギシの歪み、鼻や眉間の皺で表情が現れ、顔のようになるのも、モンスターと家とのグラーデーションが見ていて楽しい。

【過去にも未来にもとらわれないように】

見返してみて、これハロウィンの話だった!過ぎてしまったけど、寒い夜にあったかいものを用意して、寝る前にサクッと約90分楽しむのにおすすめ!

今回の指輪は、まさにそのモンスターハウスを作りました。
子供の頃にドキドキした気持ち、心うるうるを久しぶりに思い出した。
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音楽:「Halloween」Siouxsie and The Banshees カバー
モチーフ:ネバークラッカーさんの敷地、モンスターハウス

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