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【恋愛小説】The cute one. ❁3mins short love story❁
貴方の物が一つ、また一つ。
箱の中に入れられていく度に、貴方の部屋がこんなに広かったんだと思い知らされる。
私達の想い出と貴方の欠片が、
この部屋から、この場所から
消えて無くなるような気がした。
優柔不断な私と違ってテキパキと要るものと要らないものを仕分けている貴方を他所目に、私も「イラナイモノ」なのかなぁ、なんて考えが頭に浮かんできて我ながら心が痛んだ。
『これ、マグカップいるかなぁー?』
貴方が2つのマグカップを私に見せてきて尋ねる。
1つは、きっとご当地か何かの変なキャラクターがついたマグカップ。もう1つは、旅行で行ったロンドンの観光名所がデザインされたお土産のマグカップだった。
「デザインが素敵だし、ロンドンのはとっておいたら?」
私は土産マグを指さして言った。
『そうだね。僕もこのカップは、デザインが良くてかわいいなって思う。」
貴方はそう言いながら、マグカップを丁寧に新聞紙で包んでダンボールに入れた。
カップが入れられた箱をボーッと眺めて思った。
"アナタ"は彼と一緒に居られるのね。
カップを羨ましいと思う人なんてこの世に私ぐらいしかいないと思った。
そうして、私の顔は笑顔を忘れてしまっていた。
荷造りに集中していたはずの貴方が、不意に私の目の前に来て腰をかがめ、椅子に座る私に目線の高さを合わせた。
『それじゃぁ、このかわいい子も連れていかないとだね。』
私の胸が波打った。
貴方は私の大好きな笑顔を浮かべてそう言うと、大きくて温かい貴方の手を、私の頭の上に優しく乗せた。
そして貴方の両手が、窓から差し込む夕陽のように紅く染まったわたしの頬を包み込んで、私の額にやさしいキスを落とした。
❁
結局、貴方は私を置いてこの場所から去っていってしまった。貴方の物だけがない部屋の空虚さが、まるで今の私の心のようだと思った。
きっと時間が経てば、この心の隙間に新しい風が吹いて、やがて貴方ではない違う誰かで埋められる日が来るのだろうと思う。
それでも今は、せめて私の心だけは貴方と一緒に連れて行って離さないでくれたらいいのに、なんて思いながらぼんやりと窓の外に目をやった。
そこにはあの日私達を照らした夕日が、変わらずあった。けれども、陽の光が窓から部屋に射し込んで作った影は、小さく一つだった。
「the cute one.」 FIN
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