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【恋愛小説】Eye...✾8mins short love story✾
貴方と目が遭った瞬間。
その一瞬はとても短くて長かった。
瞬きするのが惜しい程に、
貴方の顔に笑顔が出来上がるその瞬間に
私の目が奪われた。
❁
私は、幼い頃から人の目を気にしてきた。
どう見られているか
何を考えているのか
人の言葉がこれほど脆いものだということは、年を重ねるごとに自分自身も思い知った。
『目は口ほどに物を言う』
なんていう言葉があるけれど、人は言葉を口に出す前に考えて、時に偽る。
それに対して目は、その人の気持ちを映し出す鏡のようだと思う。
「大丈夫」と言いながら、動揺を隠せていない目。
「おめでとう」と言いながら、悔しさが滲む目。
「好き」と言いながら、私を見ていない目。
そんな目に映る私はいつも小さく消えてしまいそうだった。
❁
友人の紹介で出会った貴方と初めて会う約束をした。
待ちあわせ場所の駅の改札口を出て少し歩いたところにある柱にもたれ掛かっていた貴方を見つけた。
前もって連絡をくれていたように、紺色のジャケットに黒のジーンズを着ていて、大人っぽく見えた。
『…こんにちは?』
貴方のもとへ駆け寄り、恐る恐る声を掛けた。
「あ!こんにちは!はじめましてですね!」
貴方はこちらに目線を向けて、目尻に皺を作りながら目を細めながらにっこりと微笑んで言った。
その一瞬が、私にはまるでスローモーションのように見えた。
私の心臓が小さいながらに速く脈を打つ。
なぜこんなにも心が落ち着かないのだろう。
それは、初対面で緊張しているから。
それから、真っ直ぐに私を見つめる貴方の瞳が
優しく微笑むから。
そして、私が貴方を素敵だと思ったから。
❁
「お腹すいたでしょ?」
『うん!めちゃめちゃ空いてる〜この辺飲み屋さん多いから適当に行く?』
「歩きながら決めようか!」
駅からほど近いチェーンの居酒屋に決まった。初対面には、ややカジュアルすぎる感は否めなかったけれど、それよりもお腹を満たすことを優先した。
驚くくらいに食の好みが同じで、自然と会話も弾んだ。
居心地が良くて、もう何年も友達だったかのような、そんな感覚を覚えた。
時折貴方と目線が交差すると、貴方はにっこりと微笑みかけてくれた。
その度に私の胸の奥から熱が全身に広がるようにして顔が熱くなった。
きっと貴方は、私の顔が赤いのはお酒のせいだと思うんだろう。
でも、そうじゃないのに。
❁❁❁
今日は駅で初めましての君を待つ。
お互いすぐに見つけられるようにと、僕は自分の服の色を伝えておいた。
落ち着かなくて何度もスマホで時間を確認してしまう。
改札口から人の波が押し寄せてきた。君が乗っていた電車が到着した時間らしい。
僕には君を見つけることが出来ないことがもどかしく感じた。それでも、通り過ぎていく女の子の中から君を見つけようと眺めていた。
『こんにちは?』
僕の顔を覗き込みながら、一人の女の子が声を掛けてきた。
僕が思ったよりも背が高かった。目線が近くて少しドキッとした。
睫毛が上向きに上がっていて、アイラインがしっかり引かれた目はキラキラ輝いて見えた。
その瞳が見えなくなるくらいに目を細めて笑いかける君がとても可愛いと思った。
「あ!…こんにちは、はじめましてですね!」
少し動揺してしどろもどろになってしまった。
ちゃんと笑えただろうか。
君は少し緊張が解れたような様子で、僕にフフッと笑いかけてくれた。
❁
駅から徒歩5分程にある、僕がよく友達と行く居酒屋に入った。会うのが一回目ということもあり、迷った挙げ句、最高にムードのない場所を選んでしまった。
「何食べる?」
『どうしよっかなぁ!お腹空きすぎて何でも食べたい!』
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、君は料理のメニューに目を輝かせている。
「食べれないものとかあるの?」
『なんでも食べれるよ!』
「それなら、適当に頼んで分けようか。」
僕自身、緊張も合間って何を頼んだかも覚えていなかったけれど、いつも食べる時よりも何倍も美味しく感じられた。
お酒好きな僕と同じで、彼女もお酒好きなのも嬉しかった。
話がはずんで知らない間にお酒も進んでしまった。
君の顔が赤らんでいるのを見て、
とても可愛いと思った。
そんなことを考えていると君と目が合った。
その瞬間、
心臓の中に小さな花火が上がったように
ドキッとした。
いつか君に直接伝えられる日が来ることを願いながら心の中でもう一度、
僕は君に「かわいい」と呟いた。
❁❁❁
沈黙の中二人で寝転ぶベッドの上。
貴方と初めて出会った日に感じた、長い間知っていたような感覚が現実になっていた。
いつからか、貴方の側が、私の一番安心できる場所になっていた。
眼の前ある貴方の温かくて少し硬い胸元から顔を見上げた。
貴方の視線と交差した。
その一瞬。
それが永遠に感じられた。
目の前に居る貴方、
それから貴方の目の前にいる私。
全てが大事過ぎて言葉で表すには、
私の語彙では到底及ばなかった。
貴方が私の顔にかかる髪を耳に掛けてくれた。
一つ一つがまるでスローモーションのように感じられた。
貴方が私を見つめる目を少し細めて、私の大好きな優しい笑顔で口を開いた。
その瞬間、貴方の声だけが私の胸の中で響いた。
「愛してるよ。」
貴方の目を見る度に、温かくて優しいのに泣きたくなるような幸せな気持ちが込み上げてきたのは、きっと貴方がそれを何度も私に伝えてくれていたからだった。
それは、一言にするには勿体ないほど大切で、それでも伝えてたくて堪らなくて溢れた気持ちだった。
だからどうか、その綺麗で優しく温かい貴方の瞳に出来るだけ長い時間、私を映して欲しいと願いながら、私の瞳を貴方でいっぱいにして二人の唇を重ねた。
『愛…』FIN
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