![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73333774/rectangle_large_type_2_4217add404913228e53175efd7e4ed11.jpeg?width=1200)
【恋愛小説】夢 ❁3mins short love story❁
先にベッドに横たわり、枕の位置を直しながら
深緑色のシーツの皺を伸ばすように貴方が腕を伸ばす。
つい数時間前まで綺麗にセットされていた
貴方の前髪が額に降りてきていて、
長い睫毛に触れそうで
触れなかった。
こんなに長かったのかと思いつつ、
違う印象の貴方に少し胸が高鳴った。
貴方の顔にかかる髪の毛を掬おうと
私は手を伸ばしかけた。
その瞬間、
閉じていた貴方の目が開いて私の瞳を捕らえた。
そして、私の手は行き場を無くして空を掴んだ。
『おいで。』
低くて甘いその一言に胸がざわめいて狼狽えた。
それはまるで嵐が来る前の静かで激しい秋の風に
木々が揺れて舞い落ちる葉のように。
ゆっくりと弧を描いて、
遠回りをしながら堕ちていくように。
きっともう知っている。
墜ちることから逃れられないことを。
ふとそんなことを思いながら、
窓の外の月明かりに照らされた木々に一瞥をくれて、
貴方の腕の中に堕ちた。
ー
貴方の腕の中で、夢を見た。
たとえそれが一夜限りの夢だと知っていても。
『夢』 FIN
いいなと思ったら応援しよう!
![cyclaMEn](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73101541/profile_55b4ec9b5036aed5249c3aa4ba664b8f.jpg?width=600&crop=1:1,smart)