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【恋愛小説】カエリミチ ❁5mins short love story❁
駅まで徒歩で12分の距離。
一人で歩くと遠く感じて早足で向かうのに、
二人並んで歩くとこんなにも早く地下鉄の出口まで着いてしまう。
まだ行ったことの無い、通りに並ぶカフェを見て
また今度来よう
なんて話していたらあっという間に改札口。
横に並ぶ肩を向き合わせて、貴方の顔に向き直る。
ずっと見てきた顔なのに、こんなにももう恋しい。
『10時27分発だっけ、あと3分か。』
別れがそこにあることを確認しているのか
何気ないふりをしているような貴方の声を聞きながら、
最後に貴方の温もりを全身で憶えようとして
両腕に力を込めて抱きしめた。
「そろそろ、行くね。」
私が溜息をつくようにそう呟き体を離すと、
貴方は寂しそうに笑いかけて頷いた。
❀
改札口を抜けてもう一度振り向いて手を振ると
改札口の外の貴方も
つい数分前に私を優しく抱きしめた大きな手を振り返した。
ホームへ続く階段を下る。
一段、
また一段と下るほどに
貴方の笑顔が恋しくなる。
階段も終わりがけ、
後ろ髪をひかれる思いに負けて
祈るように振り返る。
階段の上の改札口の外。
さっきよりも小さく、
それでも確かに
貴方はまだそこにいた。
手をつなぐと私よりも一回り大きくて、
少し日焼けした温かい手を振ってくれた。
❀
帰り道の電車でふと
貴方と帰る場所がいつか同じになるなんて想像してしまった。
後ろを振り返らなくても
横を振り向けば
そこに貴方の笑顔があるなんて。
そしてその時にはきっと、
この言葉を贈り合えるんだ。
『おかえり。』
『カエリミチ』 FIN
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