てんさん「インクルージブデザインで障がい者と社会を結ぶ」
🎤--お名前を宜しくお願いします。
てんさん(以下てんさん) てんと申します。
🎤--病名と困りごと、お聞かせ願えますか?
(てんさん)
はい、診断されているのはディスレクシア、LD、ADHDです。LDの診断がついたのは5歳の時でした。保育園の時に心身発達に詳しい先生がいて、「この子は発達障害があるかもしれない」という疑いがかかり、LDセンターという場所に行き、LDという診断がつきました。ただ、その時は母から診断を伝えてもらえなかったんです。
どのタイミングで伝えてもらったかというと、小学三年生の時、転校したばかりで周りに馴染めず、ひらがなの読み書きが上手くできなかったり、いじめがあったりで、教室の窓から飛び降りる自殺未遂をしてしまった時でした。
「あなたにはこういった障害があるから頑張っても出来ない事があるんやで」と母に言われ、初めて自分に障害があることを知りました。ただ、その時はあまり障害の事に詳しくなくて、病気だと思っていました。それから高学年までは周囲の方々に恵まれて、なんとか助けられながら過ごしていくことになりました。
そして、中学3年生の時に集中力が全く続かなかったり、注意散漫が目立つようになり、新たにADHDという診断がつきました。受験勉強なども集中出来ず辛い思いをしました。なんとか高校に進学して、メカトロニクス部(ロボットを作る部活)に入っていたのですが、ロボットの大会の3日前とかにロボットを壊して作り直してしまう事もありました。そんな衝動的な行動も今思えば特性が出ていたなと思います。
そして大学進学を考えていた時期に同行援護従事者(視覚障害者の外出を支援する資格)という資格をとる機会があり、その時に障害学について学び、その時に初めて自分の障害に向き合うことができました。そしてそれまでは先生にしか、障害の事を伝えられなかったのですが、この頃からやっと周囲の友達に打ち明けられるようになりました。心の中では「理解してもらえないんではないか」という気持ちがあり、涙が出てしまいましたが、受け入れてくれた事にはとても感謝しています。
🎤--幼少期に早期に障がいが診断されるも、苦難の連続で、それでも支えてくれた先生や周囲の友達(学校ではてんさんの担任の先生は障がいについて理解があり、いつもてんさんのそばにいて色々とサポートをしてくれていたとの事)とてんさんの努力があったからこそ、今に繋がるんですね。高校3年生で自らの障がいを友達に打ち明けるというのは多感な思春期においてとても辛いことだったと思います。
🎤--今頑張っていることがありましたら、教えてください。
(てんさん)
はい。Ledesone(レデソン)という企画事務所を運営・活動しています。「社会にある障害を当事者目線で解決していく」をコンセプトに社会を変える小さなきっかけづくり等をしています。
「当事者目線で解決していく」ということは、例えば、足が不自由で車イスを使っている方がいたとします。その人にとっての障害って、「歩けないことや、車椅子にのっていること」ではなく「段差がある環境」なんです。段差がなくなれば障害じゃなくなるんですよ。そして段差がなくなるとベビーカーを使う親御さんや、お年寄りの方も助かる。当事者じゃない非当事者も助かる。このように当事者視点を大事に社会課題にとり組んでいます。
今年の四月に、足が不自由な方の用に「目に見える障害」ではなく、「目に見えない障害」を持っている方、「発達障害」を抱える方々をお招きして「ハッタツソン」というイベントを開催しました。当事者の皆さんには今までの苦悩や困りごとを当事者ではないエンジニアやデザイナーに向けて話してもらうんです。エンジニアやデザイナーは当事者の困りごとなどを聞いて、その問題を解決できる様々なソフトやシステムを開発する。「当事者と非当事者が協力」して課題に取り組むんです。
そしてそのなかで「コンダクター」というサービスが生まれました。これは「上司と部下のコミュニケーションツール」となっています。上司側のアプリと部下側のアプリに別れていて、上司側のアプリでは部下の作業状況が一覧で見れるようになっているんです。作業指示を口頭ではなく、アプリ上で出来るんです。部下側のアプリでは受けた作業指示を視覚的に確認できます。発達障害の方が苦手な言語のやり取りを視覚化するんです。また、部下側のアプリからは完了した作業にかかった時間などを入力できて、上司側でそれを確認できるようになっています。その人の作業の「フィードバック」が出来るので、上司側は適切な役割の振り分けもしやすくなる。そしてこれは、当事者だけでなく、一般の方にも使えるシステムだと思います。まさに、「当事者も非当事者も助かるシステム」になりました。
↓コミニュケーションツール(コンダクター)
この「ハッタツソン」は計三回行われ、初日はデザイナーやエンジニアの当事者と非当事者がうまくコミュニケーションがとることができませんでした。ですが、2日3日目辺りから相互理解が生まれ、コミュニケーションが円滑になりました。「当事者と非当事者の相互理解」が生まれたイベントだったと感じています。
↓ハッタツソンの様子「当事者と非当事者が協力してシステムを開発する。」
現在は医療福祉工学部の大学四年生で、元々は、医療関係に進みたくてこの学部に入学したのですが、障害分野に興味を持ち初めて、「ハッタツソン」を開催した時に、「てんさんがやりたいことは障害者支援ではなく障害者活用なのでは?」といわれたときにハッとして、インクルージブデザイン(当事者参加で社会課題をデザインしていく)という言葉に出会い、色々調べました。インクルージブデザインのイベントは身体障害者に対するものが多かったんですが、精神障がい・発達障害はまだまだ少なくて、「じゃあ自分がやろう!」と思ったのが始まりです。これからも継続していきたいです。今当事者だけのコミュニティはたくさんありますが、僕たちは「当事者と非当事者を繋げる活動」をしたいと思っています。そして、福祉でも障害者支援でもない、「障害者活用」で「社会が変わるきっかけ作り」を続けていきます。
🎤--「当事者と非当事者を繋げるインクルーシブデザイン」、本当に画期的だと思います。当事者と非当事者の援助関係や支援関係ではなく、対等な立場で社会的貢献をする。相互理解と社会課題の解決が促進される活動だと思います。
🎤--最後になりますが当事者の皆さんにメッセージはありますか?
(てんさん)
はい。障がいってネガティブに捉えられている方が多いじゃないですか。でも「障がいがあるから出来ない」って思う方もいれば、「障がいがあるからこそ出来る」もいると思うんです。
例えば僕は文字の読み書きが得意ではありません。だから文字の読み書き以外でできることを探そう、ではないんです。
「文字の読み書きが出来ない僕だからこそできることを探すんです。」
障がいを持っている方方はそれぞれ障がいを持って生活している、その困難さって「価値」だと思うんですよね。様々な価値をもっと僕は知りたいと思っています。
そこで「Dコラム」というサービスを作っていて、当事者の方々が「当事者体験」として自由にコラムを投稿できるブログ投稿サービスを作っています。当事者の方々が積極的に発信できる環境づくりをしています。今は自由に発信出来る時代なので皆さんに価値をどんどん発信していって欲しいです。
🎤――てんさん、ありがとうございました!
てんさんのTwitter
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