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同窓会から始まる恋

秋の夕暮れ、かすかに冷たい風が頬を撫でる中、静かにその場所へ向かう足取りは少し重い。10年ぶりの同窓会、久しぶりに会う友人たちへの期待と、少しの緊張が心の中を渦巻いていた。真由美はふと、あの頃の自分を思い出していた。高校時代、内気で自信のなかった彼女は、誰かと親しくなることが苦手だった。特に、あの人とは。

会場に着くと、懐かしい顔が次々と視界に入る。笑顔で手を振る友人たちに囲まれ、真由美も少しずつ緊張がほぐれていった。その時、不意に背後から「久しぶりだね」と低く、優しい声が聞こえた。

振り返ると、そこには高校時代、密かに心を寄せていた達也が立っていた。昔よりも少し大人びた表情と、変わらない穏やかな雰囲気に、真由美は言葉を失った。「あ…久しぶり」やっとの思いで返すと、達也は少し微笑んで、「元気そうで良かった」と言った。

高校時代、達也は誰にでも優しく、みんなに好かれる存在だった。けれども、真由美にとっては特別な人でありながら、遠い存在でもあった。彼女はいつも、彼の背中を遠くから見つめているだけだった。それでも、今こうして話している自分に少し驚きながらも、懐かしい感情が胸の奥から蘇ってくるのを感じた。

会話が進むにつれ、二人の距離は少しずつ縮まっていった。達也は今、地元で働いていることや、趣味でランニングを続けている話を楽しそうに話した。真由美は、昔よりも彼が身近に感じられることが嬉しくて、自然と笑顔がこぼれた。

その夜、同窓会が終わりに近づくと、達也がそっと「もう少し話さない?」と声をかけた。心臓が高鳴るのを感じながら、真由美は頷いた。二人は静かな公園を歩きながら、昔話や今のこと、そしてこれからのことを話した。

「実は…高校の頃から、君のことが気になってたんだ」と、達也が突然言った。その言葉に真由美は驚き、思わず立ち止まる。「でも、君がいつも少し距離を置いているように感じて、なかなか話しかけられなくて…」

その瞬間、真由美の中に押さえ込んでいた感情が一気に溢れ出した。「私も…ずっと同じ気持ちだった」と小さな声で答えると、達也は少し驚いた顔をした後、穏やかに微笑んだ。そして、彼の手が優しく真由美の手に触れた時、二人の心はようやく繋がったのだと感じた。

秋の澄んだ空気の中で、二人は新たな恋の始まりを静かに迎えたのだった。

#同窓会ロマンス #再会の恋 #運命の再会 #秋の恋


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