[米国企業徹底分析レポート]化粧品専門店、アルタ・ビューティの躍進と展望〜売上高1兆7,650億円、店舗数1,385店のビューティーチェーン〜
コロナ禍前後でも美容商品は安定的に成長
感染拡大が深刻化した2020年初頭には疾病対策予防センター(CDC)によって食品をはじめとする生活必需品を販売する小売業を除き営業を制限される業態も続出。職場や学校がリモートとなり自宅で多くの時間を過ごす消費者が増えたことによる巣ごもり需要を追い風に、住宅関連商品を扱う業態や電子機器を扱う業態は恩恵を受けた。
ポストコロナ期にはリベンジ消費により高級品を販売する業態やフードサービスが大きく業績を伸ばした。2022年の後半にはリベンジ消費の対象は物販から観劇、スポーツ観戦、旅行などのサービス需要に移行するなど新型コロナは消費者の生活スタイルはもとより消費行動にも大きな影響を与えた。
こうした大きな変革期にあっても美容商品のカテゴリーはいずれも安定成長を維持、多くの消費者が職場に復帰したポストコロナ期には化粧品や健康食品の需要が急増(図表1)。
こうしたマクロ環境を弾みとして理美容商品専門店チェーン、アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)は、これまで培ってきた商品力と顧客サービスを進化させ、新規参入の障壁が高いことで知られる化粧品小売市場の1割近くの販売シェアと持つチェーンへと成長を遂げた注目チェーンだ。
百貨店の高級化粧品専売に対抗し起業。美容院サービスも提供
アルタ・ビューティのユニークな戦略は同チェーンのルーツにある。1990年に元ドラッグストア(DgS)チェーン“オスコ”の社長だったリチャード・ジョージと元アメリカン・ドラッグストアの社長だったテリー・ハンソンが化粧品を廉価で販売する新業態の開発をしたいという考えのもと、1990年に1,150万ドル(約18.1億円/1$157.5円換算、以下同)の資金をベンチャー・キャピタルから集めシカゴ郊外に「アルタ3」の店名で5店舗を開店。
同社のHPによれば、店名は美容関連商品を販売する基幹業態である百貨店(高級化粧品)、食品スーパー(SM)、ディスカウントストア(DS)、DgS(大衆美容商品)そして美容院で販売されている業務用美容商品の全てを販売する業態開発を基本的なビジネスモデルとしていることから3つの既存の主要チャネルに取って変わる店:アルタネティブ(alternative=代替)という言葉に起因していると言うことだ。
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