聖飢魔IIは化粧してるだけだと思っていた

中学時代、洋楽ばかり聴いていた。
邦楽はレベルが低いと考えていた。
ビートルズが出発点でそっから自然と洋楽ばかり漁っていたのだから、仕方がない。

だから邦楽好きの友達Aくんが音楽聴かせ大会をやるから来てって言われても乗り気にはならなかったが、
今後の付き合いもあったから行ってみた。

Aくんは聖飢魔IIという邦楽バンドが大好きだ。
きっと聖飢魔IIを推しまくるに違いない。
聖飢魔IIはキッスみたいなメイクをして、
日本の音楽番組に出る時はキャラ付けをして出てきて
とにかく鼻につく。
曲もまともに聴く気になれない。
本物の音楽とは認めていなかった。

さてA君宅に着くとそのまま別宅に移動した。
A君は金持ちだ。
A君1人が使える別宅を持っている。
全部で男が5人、A君別宅に入って行った。
ひとしきりえっちなビデオを見た後、
本編である音楽鑑賞会となった。
まずはBくん。
ああ、ビーズだ!!!
いきなりデビューして注目を集めた二人組。
しかし洋楽ファンからは洋楽のパクリだ、と言われる曲が多数の人たちだ。
イーグルス、ツェッペリン辺りが例に出されており、
僕も聴いた限り、確かに言い訳出来ないレベルだった。
Bはビーズを流した、、
これは!!酷い!!
メロディがマイナー調でスケールが演歌だとすぐ気づいた。
その後に流れる曲も全て演歌のスケール。
これは確かに日本には受ける。
そして若者が好きそうなハードロック。
売ることしか考えていないロック。
苦痛でしかなく、耐えるのは不可能と判断し、
腹痛を訴えトイレに逃げた。

暫くトイレに逃げてから帰ってきたらCくんの番になっていた。
Cくんはひたすら女性アイドル。
曲には誤りはないんだけど(それはそれで刺激がない)、アレンジが酷い。
仰々しく、とにかく大迫力みたいな展開がやってくる度に苦痛で耐えられなくなり、
今日ダメみたいだ、俺としたことが、、とか言ってまたトイレに駆け込んだ。
帰ってくるとDくんがCDをかけるとこだった。
さて、何が流れるのやら。

Dくんはサザンをひたすら流した。
サザンは昔から好きになれない。
まず歌詞が何を言っているのかわからない。
洋楽の英詞に近づけて雰囲気を上げていこうとしているんだろうけど、酔っ払ってカッコつけてる近所のおっさんみたいで、これもかなりキツい、、、
しかしもう流石にうんこにはいけない。
とことんサザンを聴いてやろう!
何か一個ぐらい良いとこがあるかもしれない?
、、しかし、どうしても典型的歌謡曲のコード回しにdimや、augを使って爽やか。しかし歌謡曲さは壊さず俺たちは売れるぜ!みたいなのがすごく見えて過酷以外の何者でもなかった。
サザンとビーズは基本的に一緒だった。
両方演歌の下地で気に入ってもらおうとしていた。
Dくんのサザンが終わるとA君の番だ。

早速デーモン閣下か乗り移り、
大仰しくアピール。ああ、まだ地獄が続くのか、、
しかし、聖飢魔IIが始まったらびっくりした。
一聴すると普通の爽やかハードロックなのだが、
理論的には随分面白いことをやっている…
演奏面はどうか。
ギターは激しいし半端なく上手い。
デーモン閣下、テレビでしか見たことなかったけど、
歌めちゃくちゃ上手い。
リズム隊が、ベースとドラムの低音のポイントを決して外さずやることで曲はひたすら爽やかだがしっかり重く聴かせる形になっていた。サビの前のパート2小節分でキックとベースのアタックを多分敢えてズラしていること(低音を薄くして、サビでどかーんといかせる意図)が多いなどリズム隊でも個性を出している。
そして、そもそも楽曲が良い!
ちょっとびっくりしたし、外見で正常に判断できてなかった自分の狭さを反省した。

さて、僕の番になった。
僕は相変わらず空気を読まず、イエス、クリムゾン、クイーン、ビートルズを持参、流した…
さあ!最初はこのクリムゾンの太陽と戦慄で文字通り戦慄していただこうかあ!
part1と2がある!その間にも素晴らしい曲が沢山あるけどあえて太陽と戦慄だけを聴こう!
僕はクリムゾン太陽と戦慄を流した。
他の4人はじーっとデッキを見ていたが、ポコポコ言ってるだけで本編が一向に始まらない、、
嫌な予感がしてきた…
Dくんが部屋の隅を見まわし始めた。
ジャンプかマガジンか単行本を探しているのだ!
Cはもうデッキは見ておらず爪の垢をほじったりなどしていた。
Bくんは部屋に何があるか物色し始めた。
楽器が入り始めたがDくんは遂にマガジンを見つけ読み出し、Bくんはトイレに行くといって去ってしまった。

ただ、Aくんだけが、すげーー!これ、めっちゃくちゃかっこいいじゃん!と絶賛。
他のみんな無言。
ノリノリで聴いていたAくんが彼らは何者か?とレクチャーを希望してきた。
僕はプログレッシヴロックについて簡単に説明した。
その後YESのクラシックイエスを流した。
Aくん、1曲目で既に狂喜。
途中でこの2枚はもう良い、確実にすぐ買う、
とのことで他の2枚を聴かせた。
クイーンはオペラ座を聴かせた、というか、
ボヘミアンラプソディを聴かせた。
こちらも大変な気に入りようで、
Aくんにとって洋楽との初対面は良いものになったようだ。
最後にビートルズ「パストマスターズ2」。
僕が一番聴かせたかった盤だったが、
Aくんはあまり感動せず、、
レヴォリューションにちょっと反応したが、
ゲッドバックまで行った時点で止められてしまった、
「ビートルズは大人が褒めるからすごいのかと思っていたがプログレッシヴロックのが凄かった」
なるほどと思いながら、大仰なとこが聖飢魔IIとマッチしたけどビートルズにはそれが無いからなんだろうな、と考えた。

後日、Aくんに説明がてらプログレッシヴロックのお勧めCDを買いに秋葉原に出かけた。
当時大型レコ屋などはほぼなく、秋葉原の電気街に行くと沢山CDなどが置いてあった。
Aくんとはその後音楽友達になり中学卒業まで仲良くしていたが卒業して離れたら自然と連絡は取らなくなってしまった。



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