レバーレス談義:メカニカルスイッチはLubeせよ

スト6の流行によって格ゲー向けデバイスへの興味も高まっていて、TwitterやNoteなどいろいろなところでアケコンやレバーレス、Padの情報が書かれるようになりました。
特にレバーレスはプロも多く使っている印象があるからか、実際に買ってみたい!という人も、買って使っている人も結構な数いる印象があります。


レバレスを実際に買って試したこと

我が家もそんな「レバーレスへの興味」があったので、今回お試しで価格が安くエントリーとしてそこそこ評判の良いHaute U16を購入して妻にプレゼントしました。

筐体の作りは良いものの、ボタン・スイッチは若干ちゃっちく感じられ、ぐらつきもかなり大きかったです。
どうにかならないかなと思っていたところ、Haute U16のスイッチがメカニカルスイッチで、かつホットスワップ対応だと分かりました。

メカニカルスイッチはPC用キーボードでも使われるタイプのスイッチなのですが、実はPCキーボードには「自作キーボード界隈」というものがあり、完成品ではなく部品を買い集めて自分で好みのキーボードを組み上げて使うことを楽しむ人達がいます。

その界隈では、メカニカルスイッチを分解し潤滑剤を塗布することで、打鍵感や打音を自分好みに変える文化があるので、Haute U16でも同じことができるんじゃないか?という発想から、簡単に2つのことを試しました。

試したこと① キースイッチ交換:Kailh Shadow Switches

色々な記事でこのスイッチの方が良いらしいという情報を得たので、まずはAmazonでポチりました。

結果としてはボタン高が少し下がり、キーストローク(押し込む深さ)も気持ち減ったことで、操作感は良くなりました。
また、副次効果として、ボタンのぐらつきが抑えられたのも大きな効果でした。

試したこと② KailhスイッチのLube(潤滑剤の塗布)

Kailhスイッチは20個セット販売で、U16のボタン数より多かったので、1個を実験台として分解・Lubeを行って換装してみました。

結果としては大成功。

ボタンを押す際の抵抗感が程よく減り、更に打鍵音はほぼしません!

静音リングやワッシャーをつける改造がメジャーなようですが、私個人としては分解・Lubeが大正義な気がしてます。

メカニカルスイッチに関する知識あれこれ

メカニカルスイッチとは

以下のサイトの冒頭にある写真のようなキースイッチのことをメカニカルスイッチと呼びます。

メカニカルスイッチの構造

以下の画像のような構造をしていますが、簡単に言うと次の5つのパーツで構成されています。
・土台の部分(ハウジング)
・フタの部分
・押し込むパーツ(ステム
・バネ(スプリング
・金属パーツ(接点と基盤接続を兼ねている)

Cherry MXの赤軸スイッチの例
黒いのがフタとハウジング、赤いのがステム、真ん中の銀色が金属パーツ、その下がスプリング

ホットスワップとは?

従来のメカニカルスイッチは、電子基板に2本の接続端子を差し込みハンダ付けするのが主流でした。
しかしキーボード改造が流行りだしてから、ハンダ付けだと気軽にキースイッチ交換ができないことの不満を解消するために、ハンダ付けがいらない接続方式が開発されました。それが「ホットスワップ」です。

ハンダ付けがいらないので、取り外しも取り付けも非常に簡単です。
逆に商品説明にホットスワップ対応と書かれていないものは、ハンダ付けされている可能性が高いです。

よくある改造パターン① 静音化リングの装着

最も手軽な改造がこれです。
簡単にいうとスイッチには何も手を加えず、ボタンキャップ側にシリコンリングをつけることで、押し込んだ時の音を軽減する改造です。

静音リング

この改造のメリットは手軽さですが、以下のようなデメリットも存在します。
・押し込んだ時の打鍵感が変わる(カンッではなくモニョっとする)
・押し込む深さ(キーストローク)が変わる
・思ったより静かにならない、等

よくある改造パターン② 潤滑剤スプレーを吹く

静音リングじゃ満足できなくなった人たちが次にたどり着くのがこれです。
キーキャップを外して、ステムを押し込んでできる隙間から、KURE556等の潤滑剤をスプレーする方法です。

この方法はスプレールブ(ルブ=Lube=潤滑剤塗布)と呼ばれ、静音リングより手間はかかりますが、スイッチの分解やLube作業の手間がかからないので、手軽なLube方法として色々なところで紹介されています。

スプレールブはかなり効果を発揮しますが、
・吹きすぎるとスイッチが動かなくなる
・必要ない部分に潤滑剤がつく
・スプレーする加減が難しい
といったデメリットがあり、私も何個かキーボードをお釈迦にしてきました。

よくある改造パターン③ 分解して筆でLubeする

今回私がKailhスイッチに施した改造がこれです。

スイッチはフタにある両脇のツメでくっついてるだけなので、ピンセット等でツメを少し開いてやると簡単にフタが外れます。

フタが外れると
・フタ
・ステム
・スプリング
・ハウジング+金属パーツ
の4つに分解されるので、ステムとスプリング、ハウジングに以下のようなやり方でLubeをしていきます。

ステム:ステムホルダーで掴んで、側面の擦れる部分と尻尾みたいな部分に筆で潤滑剤を塗る
スプリング:ジップロックにスプリングと潤滑剤を入れて10秒くらい全力で振る
ハウジング:ステムが擦れる部分と尻尾が刺さる穴に筆で潤滑剤を塗る

これが終わったら元通りに組み直します。

具体的なやり方は以下の記事を参考にしてください。

この方法のメリットは
・自分好みの潤滑剤が使える(私はKrytox 105と205を独自調合したもの)
・塗布具合がコントロールしやすい
・Lubeが不要な部分はきれいなまま
・擦れる感じや打鍵音が劇的に変わる
です。
一方でデメリットは
・必要な器具を揃えるのが面倒
・1度分解するので壊すリスクがある(ツメが折れる、接点が曲がる等)
・1個1個全部手作業なので手間も時間もかかる
という、端的に言えば「最高にめんどくさい」デメリットがあります。
ただ、レバーレスならたった16個なので、1時間もかからずに終えられるでしょう。

その他の改造① ケースの改造

PC用キーボードの場合、キーを押し込んだ音がケース内で反響して嫌な金属音や残響が鳴ることを防ぐために、ケース側を改造することもあります。

基盤の裏に幅の広いマスキングテープを2重3重に貼ったり(テープモッド)、ウレタンフォームをケースと基盤の隙間に詰めたりします。

その他の改造② スタビライザーの加工

PC用キーボードの場合、EnterキーやSpaceキーなどサイズの大きいキーを快適に使えるようにするために、スタビライザーと呼ばれる金属の曲がった棒とそれを支えるプラスチックの土台2つがついています。

スタビライザー

赤いパーツに潤滑剤を筆で塗ったり、
赤いパーツを一部削りとったり、
赤いパーツと金属の棒が擦れるところにちっちゃいテープを貼ったり、
金属の棒の両端に塗るタイプの潤滑剤をつけたり、
スタビライザーを装着する基盤側にテープを貼ったりします。

あとは金属の棒が歪んでいると、タイピング時に「カチャカチャ」と音がしてうるさいので、iPhoneの画面等を使って水平を出す作業もします。

ルブに興味を持ったあなたへ

Amazonでルブ用の器具を買う

筆でのLubeは、どうしても初期投資がかかります。ただ、数千円とかなり手頃な価格で機材が揃うので、興味がある方はぜひ買ってみてください。

必要なのは以下の5点
・ステムホルダー(ステムを掴むペン型の器具)
・キースイッチプラー(スイッチを引き抜く器具)
・小筆
・ピンセット
・潤滑剤

あると良いのは
・スイッチオープナー(簡単に壊さずにスイッチを分解するための器具。レバーレスの場合使えるものが売ってない可能性大)
・ルブステーション(分解・組み立てをまとめて行うためのスタンド。レバーレスの場合はなくても全然OK)

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それ以外に買うもの

いいピンセット

潤滑剤(おすすめは最初の2種類を買う)

Krytox 205g(ステムとハウジングのルブ用)

Krytox 105(スプリングのルブ、205gと混ぜる用)

SuperLube(チューブ)

筆(意外と大事)

Lubeのやり方を調べる

Googleで「キーボード ルブ」と検索すると日本語のいい感じの記事や動画がいろいろ出てきます。

私は動画自体のおしゃれさも含めて以下のwildcatさんがお気に入りです。

ただしLubeの解説をしてるわけじゃないのでご注意ください。

余ってるキースイッチでLubeをしてみる

Haute U16の場合交換用のスイッチが1個ついてますし、Kailh Shadow Switchesは20個あって4個余るので、余ってる1個を実験台にしてLubeの練習をしてみましょう。

ポイントは、
・スイッチを分解する際につかう道具と力の入れ具合
・分解した部品を置いておく場所
・ステムへの塗布具合(うすーく1回塗れば十分)
・組み立て手順
です。

実際に使うスイッチをLubeする

本番です。がんばれ。