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ブドウ球菌菌血症のマネジメント

今回のブログ記事:黄色ブドウ球菌菌血症のマネジメント
に関連して、ブドウ球菌(GPC cluster)が血液培養から検出された時のフローをつくってみました。
一部私見も入っていますし、すべては網羅できていませんので、また改訂するかもしれません。

ブドウ球菌(GPC cluster)が血液培養から検出されたら

基本的にブドウ球菌が検出された場合には、コンタミネーションではなく真なる菌血症として初期対応をします。
感染源となる人工物、カテーテルがないか、感染性心内膜炎を疑うような所見はないか確認しましょう。
ただし、培養提出から数日経過しており、患者の全身状態も問題なく、グラム染色上もCNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)を強く疑う場合には様子をみることも実際にはあります。
S. lugdunensisだけは注意が必要で、CNSなのに黄色ブドウ球菌のように感染症を起こすことがあります。黄色ブドウ球菌と同じ対応をします。
Empiric therapyは少し議論のあるところですが、VCM+CEZ(あるいは中枢神経や眼内など移行性が問題となるならCTRXやCTX)を選択することが多いです。通常1-2日(質量分析ならさらに短縮)で菌名が判明することが多く、その程度の併用期間ならあまり有害事象を気にすることがないからです。

SAB at a glance①

黄色ブドウ球菌(S.aureus)だったら

黄色ブドウ球菌だった場合には、いわゆる“Bundle approach"を行います。最も重要な点は
1)感染性心内膜炎の可能性がどのくらいあるか
2)治療が必要な遠隔病変がないか

の2点です(治療方針が変わるため)
2)は全身検索(ただCTをとるだけじゃなくて、関節炎や神経症状、眼症状、新規の腰背部痛がないか確認する。なかなかこちらから狙って聞かないと自覚していないことがあります)を行い、遠隔病変があればドレナージなど菌量を減らす治療を行います。MSSA菌血症でドレナージ困難な膿瘍がある場合、初期治療をCEZではなくCTRXなどにすることもあります(Inoculum effectを懸念して)。ただCTRX高用量の継続は、治療失敗リスクや無石性胆嚢炎などのリスクと関連する可能性があり、中枢や眼病変がない場合には一定期間でCEZに変更します。

感染性心内膜炎“らしさ”とは

診断基準のスタンダードは修正Duke診断基準です。
ただ明らかな疣贅が見つからずあと1点足りない…なんてことはしばしばあります。
POCUSとして経胸壁心エコーを行うハードルは低いと思いますが、それだけだと見逃すリスクは当然あります(POCUSは短時間で繰り返し実施できるのがメリットなので、連日観察することで気づくこともあるでしょう)。
人工弁や心内デバイスがある場合、経胸壁エコーでは見づらいですし、そもそもhigh riskですので、経食道心エコーのハードルは低めに設定する必要があります。
海外のガイドラインでは心臓CTなどの記載もあり、患者さんの状態に応じてモダリティを選択することも重要です。
またVIRSTA scoreを参考にするのも一つの選択肢です。
実際には総合的な判断が必要ですね。椎体炎や膿瘍の治療のために感染性心内膜炎としての治療期間を十分カバーできていることもあります。

治療について、確実に併用療法が良いといえる強固なエビデンスはありませんが、侵襲的な治療が困難な場合や持続菌血症が続くケースで併用(VCM+βラクタム、CEZ(CTRX)+GMなど)を試すことは考慮しても良いかもしれません。

MSSAの場合、βラクタマーゼ確認試験(zone edge testなど)を行なってPCGやABPCを選択することもできますが、最近はCEZ再評価の流れもありますし、細菌検査室が対応できるかどうか病院によっても異なります。一概に何がベストとは言い難い面もあり、患者毎に最適治療を検討しています。

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