徒然なるままに上京篇
都営三田線の奥地、"高島平"
上京したばかりの2人の愛の巣はそこにあった。
当時私は茗荷谷に住んでいたが、会う時は決まって、ママチャリで片道12キロ、高島平まで通っていた。電車賃を節約するためだ。
大きな道路、行き交う車。深夜なのにこの賑わい!?!?
今まで体験したことのないスケールだ。
途中"池袋"を通って中山道を駆け抜けていく。
細い路地にも多くの人がいて闇はどこまでも続きそうな感じがした。
道中考えることといえばいつも決まっていた。
「あんた何がしたくて東京に行くのかい?」
恐怖心、好奇心、全能感、爽快感、焦燥感。
一瞬一瞬の風景に心を奪われながら、そんな問いの答えを考え続けていた。
高島平は今まで見たどの景色とも異なった臭気を発していた。
"しかく"が増殖したマンション。
寸分の狂いもないほど決められた”しかく”の数。
緊張感のある形だな。田舎に四角いものそんなにないから。
でも、そのほとんどがくたびれた印象だった。
あぁ…東京は人がおおいなぁ…
人は皆、何かを求めているってことは、あの"しかく"は意思の数!?
多すぎて目立たない!!生活の一つ一つが見えない!!同じに見える!!
自分は他の誰とも違う。そんな風に考えていたが、
僕もそんな"しかく"のひとつに過ぎないのかもしれない。
逃げた逃げた
「上京したい」人生で一番のわがままを17歳で言った
夢なんて大層なもの僕にはないただ、逃げたかった。
昔の歌でさ、夢を叶えて故郷に戻るってよく聞いたけど。
最近聞かないなあ