ビートルズの新曲がやってくる!(18)歌詞解剖(ジョンからポールへ、ポールからジョンへ)
MV解剖を休憩して、今回は歌詞の探究です!
ジョンがヨーコに書いたとも、ポールに書いたとも言われるナウアンドゼン。起草時期、レコーディング時期について決定的な証拠がないこの曲が誰に宛てられたものだったのかは不明瞭で全て推測の域を出ません。
しかしジョンの当初の意図がどこにあったにせよ、ビートルズ版として未完成の歌詞をポールが構築する過程で、その歌詞は一方向のラブソングから、ジョンまたはビートルズ、あるいは喪われた愛するひとたちへのレクイエムに生まれ変わりました。
しかも、ジョンのボーカルを可能な限り残しつつポールが新しい歌詞を加えたことで、ビートルズ時代のようにジョンとポールのボーカルが溶けるように行き交うマジックがもう一度聴けるようになっているのです!
ジョンの曲にポールが手を加えたことで、ジョンから(ポールへ)そしてポールからジョンへの双方向の想いが交錯するようになったというのは、単にジョンがポールに宛てたと仮定するより、むしろ感動的ではないでしょうか?!
というわけで、この曲の歌詞を、制作過程3段階で順に見てみます。
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まずはビートルズ版のシングルに掲載された歌詞の断片です。
ジョンの筆記文字が読みづらくて怪しいですが、多分こんな感じです(誰か正しいの教えて)
最終版と異なる歌詞です。ジョンのデモとも違います。
しかも輸入盤シングルにはリリース版の歌詞はプリントされておらず、四角に囲まれたこの短い断片だけが書いてあるのです。なぜ!?
ただ推測できるのは、デモとは異なり、試行錯誤がしてあるこの歌詞がナウアンドゼンの超初期のものではないかということです。
2行目に「愛してる」っていう直接的な歌詞が入っていたり、最終行の「友だちからやりなおそう」なんて言葉が入っているのでヨーコ宛かなと思えますが、なぜこれをあえてビートルズ版に入れたんでしょう。
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次に、アンソロジーセッションでジェフリンが使った歌詞カード(だそう)をみてみます。
これはジョンのデモとほぼ同じ内容です。オノミュージックのコピーライトとも書かれています。
ただジョンが歌っていない歌詞が一部入っていたり、ジョンのデモではピアノ演奏になっている最後のサビ部分が歌詞で記載されています。この元原稿をみながらジョンはデモをレコーディングしたけれど、納得がいっていない歌詞はハミングにしたのではないかと推測されます。
この歌詞をみながらジョンのデモや最終版を聴くと、どこまでジョンが歌っていたかが分かりやすいです。
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そして、ビートルズリリース版の歌詞です。ご存知、曲の構成はジョンのデモから大幅に変えられ、「I don’t wanna〜」のBメロが削除されました。そして水色にマーキングした箇所が、ポールが付け足した歌詞です。
ここは元々ジョンの歌詞にも入っていますが、”love”の単語がデモでは判別がつきにくい発音になっています。そこにポールががっつりボーカルを加え、間の取り方も変えることで「love you」が強調されています。
ここは完全にポールの貢献です。サビ冒頭の「Now and then I miss you(時々きみが恋しくなる)」につづけて、この2行があることで、今は喪われてしまった人に対して、「寂しいんだ」「そばにいてほしかったのに」「いつでも帰ってきてほしいのに」という、この曲のエッセンスがより強調されることになっています。
「I want〜」「〜return me」とジョンがむにゃむにゃ歌ってたボーカルを活かす歌詞をポールが書いているので、ボーカルは一聴すべてジョンが歌っているように聴こえますが、中間で巧みにポールに切り替わってるんですよね。レノンマッカートニーマジック!
ここでポールが加えたのは「stay」の一単語です。ジョンが「ネー」とハミングしてたのを「never」にしたのはポールでしょうか。結果として、これまた喪われてしまった人に対する詞をポールが加えたことになりました。
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こうやって最終版を細かく見ると、ポールはジョンが元原稿の歌詞通り歌っていないハミングも全て生かしながら、ポールからジョンへのメッセージとなる歌詞を書き上げるという絶妙な技巧を使っています。
元々ソングライティングにおいて歌詞を書くのを得意としたのはジョンという印象が強いですが、ポールもヒアゼアアンドエブリホエアやアイウィルのようにシンプルかつ心に響く歌詞を書いてきたわけで、、その集大成といっても過言ではない気がします。
ポールはこの曲をリリースの時、こんなふうに語っていました。
「大好きな人がいる時、その人が居なくなってしまっても居なくなってほしくないものだ、人が亡くなるとみんないうだろ。彼らは記憶の中に、心の中に生き続ける。僕とボーイズ(ビートルズ)の関係もそうなんだ」
ポールにとって、この曲はジョンとジョージ、そしてビートルズ自身へのレクイエム。リスナーにたいしても、大切な人を喪ったひとたちへのレクイエムとしてこの曲を完成させたのかもしれません。
最後に、ポールが歌詞とボーカルを加えて生まれ変わった最も印象的なサビについて、ショーンレノンの発言を紹介します。
これ一瞬だけSNSのリールでみれたんだけど、、消えちゃってるのもったいない!