ビートルズの新曲がやってくる!(13) ショートフィルム
ここまでの流れはマガジンで、、
さて今回は、日本時間11月2日朝4時に公開されたショートフィルムの話。
本国イギリスやアメリカでは、新曲公開「前日」に設定されたショートフィルムですが、全世界同時公開ということで日本は時差の都合上「リリース当日の早朝公開」となったショートフィルム。
そりゃあ朝4時に眠い目を擦ってYouTubeに張りつきましたよね!
ショートフィルムというだけあって長い!曲より長い!笑。
個人的には、曲の製作経緯や断片をこんなに入れてくるんだ!というのが純粋に驚きでした。
ナウアンドゼンのデモやファンメイドの?アレンジ作品はYouTubeなどに多く上がっていたのでコアファンは当然どういう曲かを認識して新曲を待っていたわけですが、そうでない人に対しても、曲がリリースされる前に曲の断片を聴かせる、完成版をイメージ出来うるドキュメンタリーになっていたので、、何で??と。
最近公開されたアップルのジョナサンの話によると、新曲を4月にリリースする予定だった今年の2月頃、このショートフィルムの製作を開始したそうです。で、時間もないしポールとリンゴとショーンの声だけのインタビューを録って編集することになったと。この時点で、曲のリリースより先にショートフィルムを公開することを決めていたかはわかりません。ただ結果としては、6月に情報がリークし色々な人がデモ音源に触れられる中で発表された曲の、誤解を解いたり伏線を張れたという意味で、リリース前のショートフィルム公開は正解だったように感じます。
というわけで改めて、ショートフィルムの内容をダイジェストで振り返り。
なお、公開から数日後に日本語字幕もつきました。敬体と口語体が混在してて変だけど、流れで見ると大概わかりやすいです。最後以外は、、、
ショートフィルムの監督はイギリス人のオリバー・マレー。キースリチャーズやビルワイマンのドキュメンタリー、ノエルギャラガーやホラーズのMV製作経験がある方で、ユニバーサルのクリエイティブスタジオディレクターであるソフィーヒルトンがジョナサンに紹介したそうです。
ショートフィルムトレイラーでも分かる通り、イギリス人らしい陰影のある映像ドキュメンタリーが上手い印象です。
ポールのナレーションのような形で、イエローサブマリンのアニメ映像をうまく混ぜながら、時空を超えた新曲の製作背景が語られていきます。
このフィルムのために作られたかのようなイエローサブマリンのアニメーションのマッチ具合がスゴイ❗️
・1970〜1980
ジョンの息子ショーンによってこの曲の起源が語られます。
「父が僕を育てるために音楽活動をやめたというのは部分的には事実だけど、いつも家で音楽を演奏して、テープにデモを録っていた」
1980年スターティングオーバー発売のプロモーションインタビューでは、一切音楽を絶っていたようにはなしていたジョンの発言を鮮やかに翻るショーンの発言が清々しいです。実際いろんなデモが残っているし、、、
おそらく初公開の、幼いショーンにギターを弾く父ジョンの姿を見るだけで泣けます。
・1994-95
アンソロジー製作時に曲に取り組んだ様子が映像と共に流れます。アンソロジーDVDの特典映像にも入っていなかったスリートルズの新たな映像が見れるだけで嬉しい箇所。
「ジョンお湯沸かしてよ」
「ジェフは(雑音消すのに)もう1年作業が必要だよ」
「また来年ね」「うん、また来週ね」
と、スリートルズになってもユーモアいっぱいでほのぼの。
ジョージとリンゴが始終録画機を回しているけど、このホームムービー映像だれか発掘してくれないかな。。。
で、いろいろ取り組んでみたけど雑音が消せないし、時間もなくなってきたし、途中で諦めました、というのが1994-95年の段階です。
時間がなくなったと言っても、この曲は実は2番目に取り組んでいるし、雑音が消せないのも御尤もだけど「ジョージが止めようと言った」というのがこれまでの通説だったんですけどね。
この段階でジョンのイマジン製作時代の映像が混ざるのがちょっと不自然ですが、、ピアノ弾いてるしジョージもいるからこの映像を使ったのかな?いろいろとジョンの不在が悲しい。
・2001
ジョージが亡くなって、挫折が決定的になったことが語られます。
ところでこのフィルムでポールは「ジョンを失った時、僕らは終わったと思った」という衝撃的な一言を語っています。それまではビートルズやレノンマッカートニーの再結成の可能性があったということをこういう言い回しで言ったことあったかなというくらいストレートな言い方でおどろきました。が、1980年はアニメーション映像になっていないんですよね。ポールの感覚なのかなあ。
・2022
ピータージャクソンのチームが映画ゲットバックと同じ技術を使ってデモテープからジョンのボーカルを抜き出した手法が語られます。
6月にポールが「AIを使ってビートルズの新曲を作った」と語って以来、存在しないジョンのボーカルをAIに生成させたかのような情報が拡散してしまいましたが、ただボーカルをクリアにしただけですよ、と。
そして、ジョージマーティンの息子ジャイルズマーティンをオーケストラ編曲に採用し、ポールがジョージトリビュートのギターソロを弾いていることが明かされます。ちなみにリンゴは初めてこのソロを聴いた時、「ジョージソロ弾いてたっけ!」と思ったそうです(笑)そんな勘違いが起こらないように、ショートフィルムでトリビュートとバラしちゃうのもポールらしいですね。
・エンディング
というわけで、このショートフィルムは製作過程を明かしつつ、AIはジョンの声を作ってませんよとか、ギターソロはジョージではなくポールですよと、後世に誤解を残さない解説フィルムにもなっているわけです。そしてこの曲に関するもう一つの伏線が、実はエンディングに込められていました。
「そのパートは他の楽器で演奏できる」(ジョージ)
「僕らがこの後に入る」(ジョージ)「そう」(ポール)
「バース3は、再びイントロみたいにするのはどう?」(ポール)
何気なく曲の構成について話すポールとジョージですが、おそらくこれは「Bメロの削除」についてのポールとジョージの会話です。
新曲リリース後に、ジョンのデモにあったBメロが消えた!と一部で騒がれていましたが、このショートフィルムで既にBメロが消されることが示唆されていたわけですね。
そして最後は「ジョンのを聴こう」というポールの声で締めくくられます。
近年ビートルズの新作ドキュメンタリーはジョンのちょっとした一言で締められるのですが、今回はポールがジョンに語るカタチで締められているところも泣けます。
このショートフィルムは、新曲発売後ポールとリンゴがインタビューまみれになって同じことを語る時間が多くなることを避ける目的もあって作られたそうです。そしてメディアには12分間のドキュメンタリーをカットすることなく完全版で流すことが要求されました。
実際このインタビュー音源は、BBCポッドキャスト番組や、MOJOの誌面にそのまま使われたりしています。またショートフィルムはYouTubeだけでなくAppleMusicのシングルに付されたり、ディズニープラスでも完全版で見れるようになっています。
ポールやリンゴの負担を軽減してくれるアップルの判断にも感謝🙏です。
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