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母が私に乗り移った時
私の母。何事にも強気。
物心が付いた頃、母の側に両親はいませんでした。
生まれてすぐに、両親に捨てられてしまったからです…。
極貧の環境下に置かれて育った母。
子供の頃からその美しさ故に目立っていた母は、苦難の人生を歩むことになります。
貧しくても同情されることはなく、周りの大人達から、攻撃の的にされることも珍しくはなかった様です。
過酷な環境下、母の心の支えとなったのは、皮肉にも、その美しさでした。
「私は誰もが持ち得ないものを持っている!」
常に怒りの炎を燃やしながら生きてきた母から放たれる殺気が、人を遠ざけてきたようなフシがあり、美人でもちっともモテない女と化していました。
しかし、母は密かに反省していました。
「私は、自ら努力して勝ち得たものではなく、ただの天然現象に頼って生きてきたに過ぎない!」
「子供には、そんな人生を送らせてはいけない!」
でも、心配は無用でした。
母程の美貌に恵まれなかった私に、美しさに頼って生きるという選択肢はありませんでした。
「自分の力でメシ食える女になれ!」との母の強い願いを受けて、とりあえず、食べて行けそうな資格を複数取得しました。
私の履歴書を見て驚く人も…。
(なんだか、病的に映るのかも知れない。)
エージェントのお兄さんに相談するも、「全部書いてください!」とのこと。
一応、各々の資格に、ある一定の関連性はあります。
それにしても、母の恐ろしいパワーが私に乗り移って、気が付けば、過剰なまでに頑張っていた時期がありました。
(あれは、一体、何だったのか?)
もともとは、おっとりしているハズの私が、母の放つ得たいの知れない何かに巻き込まれ、異常な力を発揮したことに間違いはないのでした。
自分の書いた履歴書がまるで他人のモノである様な、妙な違和感を覚える私。
それでも、不思議な力を授けてくれた母には感謝です。
「お母さん、一応、メシ食える女らしき者になりました!」(笑)。