【#68】晩酌しながら親切について考えてみた
先日健康診断が終わって職場に向かっている途中、今にも道路で倒れるのではないかと思ってしまう初老の男性を見つけた。
ハットを被り、身なりもしっかりしていたので、時間帯も朝帰りにしては遅い時間。
酔っぱらいではないと思ったら、なんだか気になってしまって、声をかけた。
「大丈夫ですか?」
話を聞くと、いきつけの病院に向かう途中らしい。「どうも、足がね…」と言っていたが、それにしては息が荒い。
押しボタン式の信号機を渡ろうとしていたため、せめて渡り切るまでは見守ろうと思った矢先の出来事だった。
その人が石垣にぶつかりそうになり、それを支えるように止めたら、まるで風船が萎むかのように、その場で横になった。
「大丈夫ですか!?」
人は大変な状況を目の当たりにすると、固まってしまうのもので、一瞬何が起こって、どうすればいいのかわからなくなった。
だけど、普段から人を観察し、いろいろアプローチする仕事をしているようなものだから、状況を飲み込むまでは早かったような気がする。
横になった人に声をかけ、通りすがりの人に救急車の手配と様々なことをお願いした。
でも本当に通りすがりの人たちに助けられた。
現場が日陰で、冷たい風が吹いていた。自分の上着をかけるものの、それでも足りない。
そんな時に、近くの施設からクッションとか持ってきてくれた。
救急車が到着するまで、状況の整理。
幸い横になった人が受け答えができる状況だったので、救急隊員に伝える時にスムーズだった。
その時、自分のことを何も伝えなかったため、その後どうなったかわからない。けど、ここ1週間ぐらい地元のニュースで報道されていないところを見ると、大丈夫だったのかなと解釈している。
さて、ここまでが前置き。
こういった状況になったのは、初めてではない。これまでの人生を振り返ってみると、何回か同じようなことがあって、否定されてきたように思う。
この言葉は、僕自身もそうだが、皆さんも親や先生、先輩と呼ばれる大人の皆さんから言われてきたことだろう。
でも実際、親切をした時の周りの状況だっただろうか。
少なくとも僕は、まるで最近流行りの動画や広告で出てきそうな体験をしたことがある。それも悪い部分だけ。
大学生の時、次の授業に向かう途中、キャンパス内で社会人講座に参加しようとしていた老夫婦がどこにいけばいいのか分からず困っていたから、会場まで連れて行ったことがあった。
当然、連れて行って感謝はされたけど、問題はそのあと。
案の定、講義に遅れてしまったのだが、状況を説明したら
ショックだった。その講義では遅れたことはなかったし、やることはきちんとやっているつもりだった。
社会人で言ったら、きちんと状況を説明した上で、報告もしている。
ただ受け流すならまだしも、その出来事をなかったことにしなさいって言われたことにショックだったのだ。
物語ならこのあと、助けられた方に遭遇…なんていうこともあるんだろうが、そんなことはない。
自分が遅刻したりすることで、遅刻したという記録をつけられるだけならいいんだけど、人の心をむしばむような言葉を言われる社会ってどうなのか疑問である。
人に親切にしなさいと教えられつつ、実際親切にして、その人を称賛までしないでも、配慮することはできないのか。それだけ配慮できない、苦しい社会なのか…
そんな正解のない答えを、お酒を飲みながら、ずっと頭の中でぐるぐるまわしていた。
最後は考え過ぎて頭の中がぐるぐる回っていたのか、お酒によって、ふらふらしていたのかはよくわからなかったけどね。
(写真:七実さん)
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