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[特別寄稿] プラセボ効果とノセボ効果の知識を社会に広げよう

地域医療ジャーナル 2021年10月号 vol.7(10)
寄稿記者:山下 仁
森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科

はじめに

 2013年の時点で、日本における「プラセボ」という言葉の認知率は30%程度です[1]。2020年には有名ミュージシャンの楽曲タイトルにも使われましたし、最近はCOVID-19の治療薬の有効性についてプラセボ対照群との比較がSNSでしばしば言及されているので、この言葉は今ではもう少し認知度が高くなっていると思われます。「プラセボ効果」という言葉についてもおそらく同様でしょう。しかし、SNSでの医療者以外の書き込みを見る限り、「良いかもしれない」と思うことをプラセボ効果と表現したり、ノセボ効果のことをプラセボ効果と呼んだりしていて、社会一般では、言葉として知られていても必ずしも正しく理解されているわけではないようです。

 自著の話で恐縮ですが、最近「マンガとエビデンスでわかるプラセボ効果」(メディカ出版)を発刊いたしました。私は長年鍼灸の臨床研究に携わっており、「鍼灸はプラセボ効果を超える効果があるか」という問いが常に投げかけられます。そんな背景があるのでプラセボ効果に関しては学術文献を収集し目を通す必要がありました。また、医療現場や日常生活で遭遇するプラセボ効果やノセボ効果が絡むさまざまなエピソードを見聞してきました。

 日々そんな体験をしているうちに、placeboの「bo」とnoceboの「bo」が私の脳内で「坊」とつながり、いつしか「風来瀬坊(ぷらせぼう)」と「野瀬坊(のせぼう)」という修行僧の物語を妄想するようになりました。今回発刊したマンガ入門書は、そんな脳内で出来た小話から作ったシナリオを、犬養ヒロ先生にマンガ化してもらい、そのオチを受けて臨床的な観点から解説を加えたものです。

 世間に広がっているエビデンスが定かでない健康関連商品、治療法、あるいは副作用・副反応などの情報を冷静に吟味するには、プラセボ効果およびノセボ効果の知識が必要です。しかし、一般の人たちはもちろんのこと、医療に携わる人たちでさえプラセボ効果およびノセボ効果についてよく知っているわけではありません。専門外の知識を身につけるにはマンガから入るのが最適だと、少なくとも私は個人的体験にもとづいて考えていますので、そんな専門外の人たち(私も専門家ではないので僭越ではありますが)にマンガで興味を持ってもらうとともに、今までに示されているエビデンスの解説と監修医の児玉和彦先生のコメントを読んでプラセボ効果とノセボ効果について考えてもらおうというのがこのマンガ入門書の意図です。本稿では、この本で十分に説明し切れなかったことを、断片的ではありますが紹介させていただきます。

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