[特別寄稿] 国内外の事例で見る商品としてのプラセボ
地域医療ジャーナル 2021年10月号 vol.7(10)
寄稿記者:水口 直樹
プラセボ製薬株式会社
はじめに
「人の為、ニセモノだからできること」を社訓に掲げるプラセボ製薬株式会社は2014年に創立されました。プラセボとは偽薬のことで、プラセボ製薬株式会社(以下、当社)は薬に似せた食品を「本物の偽薬」として販売する会社です。筆者は当社の創業者であり本稿公開時点でも代表を務めています。
当社の偽薬商品がSNS等で話題になると「プラセボ効果を狙った面白い商品」などと理解される場合もありますが、会社としてプラセボ効果を前面に出した商品説明はしていません。むしろ高齢者の薬の飲み過ぎや飲みたがりに適切に対応するための介護用偽薬/無効薬としての使用を推奨しています。
当社事業については公式ウェブサイトや他媒体での紹介記事、また拙著『僕は偽薬を売ることにした』(国書刊行会、2019)もありますので、興味があればそちらをご覧ください。偽薬は無効であるがゆえに有用だという発想は、もしかすると他分野でも応用の利く考え方かもしれません。
ところで、実は偽薬を販売しているのは当社だけではありません。本記事では特に海外の商品を中心に、その開発経緯や販売形態の違いを明らかにしつつ紹介します。
なおそれらは、世界中で蔓延している「偽造医薬品」とは根本的に異なる理念のもとに販売されている偽薬です。筆者は、偽造医薬品製造・流通の撲滅を目的とした関係機関の活動に賛意を表します。
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