ステップ4の事例集積を
地域医療ジャーナル 2020年10月号 vol.6(10)
特集「消えゆくエビデンス、消えゆく医療」
記者:bycomet
編集長/医師
あの薬も消えていった
「消えゆくエビデンス」というテーマからぼくが最初にイメージしたのは、脳循環代謝改善薬です。
イデベノン(販売名:アバン)、塩酸インデロキサジン(販売名:エレン)、塩酸ビフェメラン(販売名:セレポート、アルナート)、プロペントフィリン(販売名:ヘキストール等)の4成分の品目は、代表的な脳循環代謝改善薬として当時頻用されていたにも関わらず、再評価の結果、有効性が認められなかったとの中央薬事審議会の答申を受け、1998年5月、厚労省(当時)の承認を取り消されたのです[1]。
ほかにイメージするのは、ダーゼン、認知症治療薬、糖尿病治療薬など、まさに記者のみなさんが今月号の記事で詳しく取り上げたような歴史が、数々あります。もうこれ以上、ここで取り上げることもないでしょう。効果があったはずの期待の新薬は、砂上の楼閣のように、もろくも崩れ去っていったのです。
こうした出来事は、しばしば起こっています。
ある科学的知見(エビデンス)が新たな科学的知見(エビデンス)によって書き換えられていくことは、科学の進歩の結果でもあり、好ましいことのはずです。ある医療行為が新たな医療行為によって置き換えられていくことも、科学の進歩の結果でもあり、好ましいことのはずです。
研究者は、よりよい科学的知見(エビデンス)を求めて日々探求をつづけており、医療者は、よりよい医療行為を求めて日々研鑽をつづけているからです。
エビデンスはそういうものだろう、医療はそういうものだろう、という声が聞こえてくるようです。もちろん、その声には賛同します。
その上で、すっきりしないところがあるのです。
「画期的な効果」と大々的に宣伝されて登場した薬が、ある日突然、「当初想定していた効果がありませんでした」と静かに伝えられ、ひっそりと医療の表舞台を去っていくのです。
こうした数々の消えゆく医療を、静かに見送っていくわけにはいきません。
この特集号を足がかりに、これからも「効果がなかったかもしれない、害があるかもしれない」といった表に出にくい情報を、しっかりと伝えていきたいと思います。
参考文献
[1] 再評価結果に基づく脳循環代謝改善薬4成分に係る措置について. 厚生省緊急医薬品情報 平成10年5月20日(水)
https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1005/h0519-1.html
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