【ひみつの授業】宇宙人になってみよう
――みんな、
今日は、宇宙人になる方法を教えるよ。
「宇宙人!?」
「なれたらおもしろそうだけど」
「そんなの……」
「無理に決まってるじゃん!」
――どうしてそう思うの?
「だって、わたしたち」
「人間だもん」
――人間、って?
「人間は、人間!」
「小学生」
「男子」
「女子」
「△△人」
「ワン(ぼくは犬)!」
――そうだね。
でも、だれでも宇宙人になれる方法があったらどう?
なってみたいと思わない?
「な……」
「ちょっと、こわいけど」
「たのしそう!」
「でも、どうやって?」
「ワンワン(おしえて)!」
――宇宙人になる方法は、たったひとつ。
今、みんなが言った言葉、
自分に貼られた「シール」を
ひとつずつはがすこと。
「自分に貼られた」
「シール?」
――そう。
わたしたちは、生まれてすぐ、いろんなシールを貼られるんだ。
――成長するにつれ、
シールはどんどん増えていくよ。
だれかに貼られるだけじゃなく、
自分で貼ったものもあるんだ。
――それを、ひとつひとつ取ってみよう。
よく見えないときは
お互いに取りっこしてみてね。
「はーい、これ」
「ありがとう」
「あ、ここにも」
――シールをはがしてはがして、最後にのこったのは
小学生でも
男の子でも
女の子でも
いい子でも
わるい子でもない、
小さな小さな、きみ。
――さあ、
小さなきみは、なにを感じてる?
どんなお話をしてるかな?
――そう、それこそがきみの中の宇宙人だよ。
「いいね いいね」
「その色、すてき」
「いいよ いいよ」
「きみのかたちも!」
おんなじ教室にいたけれど
みんなこんなに ちがうんだ
そうそう
こんなに 自由だった
なつかしくって
くすぐったい
あっはっはっは
たのしいね
――どう? 宇宙人には会えた?
「うん!」
「うねうねして」
「きらきらして」
「赤ちゃんみたい」
「ずーっと前から知ってたみたい」
「そんなのって、おかしいけれど」
――おかしくなんかないよ。
宇宙人は、ずっと前から
きみと一緒にいたんだから。
「ずっと前って、いつから?」
――生まれてからずーっと。
今も、きみのそばにいるんだよ。
でも、大人になって
体がシールだらけのままだと
だんだん見えにくくなってしまうんだ。
「えー」
「そんなの、いやだ」
「また会いたいよ」
「ワワン(忘れたくない)!」
――それをきいて、宇宙人は喜んでいるかもしれないね。
「ほんとう?」
「宇宙人って、よろこぶの?」
――うん。
宇宙人たちは、みんなとお話するのが大好きだから。
もしもこの先、
自分のことが分からなくなったときは
今日みたいに、ひとつひとつシールをはがしてみてね。
長く貼られたシールは
はがすのが大変だけど、
ゆっくり、ゆっくり。
あわてず、あせらずに。
ときには周りの人の手も借りて。
そして、何度でも
きみだけの色
かたち
声を
思い出して。
宇宙人は
いつ、どんなときも
きみのそばにいるから。
<おしまい>