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ひらけばわかる。好きかどうか。

手帳のない2日間

少し遠くの街で用事を済ませて喫茶店で仕事をした日、お店に手帳とネームの束を忘れてきてしまった。

家に帰って気づき、慌てて電話をするとすでにお店で保管してくださっているという。「ありがとうございますありがとうございます」と電話口で頭を下げながら、ああもう今すぐにでも取りに行きたいと思ったけれど、家からは1時間ほどかかる場所であることと、翌日は予定が入っていたことを思い出して「今週中に必ず取りに伺います」と伝えた。けど通話を終えてすぐに「やっぱりすぐに行きたい」「行かなくちゃ」と思った。

最近はデスクに常に手帳を開きっぱなしにしていて、何かというとそこに戻って確認・書き込みをしてきたので、手元にないのはとても不安で落ち着かなかった。
頭の中の全部を忘れてきてしまったような、肌身離さず持ち続けたぬいぐるみを落としてしまったような、とにかく心身がひゅうひゅうとした。薄着感。不安。

こんな気持ちじゃ何もできないわ、やっぱり取りに行こうかな、明日朝イチだったら行けなくもないし…とあれこれ悩んだけれど、焦って行くとまた別のトラブルを引き起こしそうな気がして正気に戻り、無理をするのはやめた。そのかわり夫に相談して、2日後に出勤するついでに(勤務地から若干近いため)代わりに取りに行ってもらうことにした。

手帳のない2日間は長かった。
デスクに座っているとふとした時に手帳を探してしまうし、一応スケジュールは頭に入っているものの、細かなタスクがどこまでできているか不安になるのでメールをたどって確認などしていると時間がかかってしまい、何をするにも輪郭がぼやけてどこか宙ぶらりんな時間を過ごしていた。

手帳は買っても続かないことが多かったけれど、今度こそと始めたものは自分でも驚くほど「手帳」として使えているし、それなしでは日々が成立しないくらいしっかりと私の本拠地になっているのだなあと実感した。離れてみないと気づけなかったので、それがわかったのは今回唯一良かったことかもしれない。

長い長い2日間を経て戻ってきた手帳を開くとさっそく未完了タスクが目に入り、焦るのと同じくらいほっとした。もう一人の自分(司令塔)が戻ってきて、自分の中の空洞がやっと埋まった感じがする。もう大丈夫。

保育園の前で起きた5分間

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