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願いは全部叶っている

自分の誕生日って年々どう過ごしたらいいのかわからなくなる。

特別な日という感覚はとうに薄れているけれど、「何かしなくちゃ」という謎の焦りだけはしぶとく体に染み込んで残っている。
何かしなくちゃって何を?特別欲しいものもなく(といいながらブランケットを買ってもらいました)特別いきたい場所もない。誕生日だからと祝ってもらうのも正直どんな顔をしたらいいのかわからず落ち着かない。かといって一人になりたいわけでもない。なのでここ何年か自分の誕生日は「食べたいケーキを買ってみんなで食べるという日」にしたいと思っていた。

去年は最寄駅の近くの素敵な洋菓子店のケーキ、今年は子どもと私がちょうど食べたいと言い合っていたユーハイムのアップルパイにした。アップルパイ専門店のアップルパイも何度か(食い意地をはって何種類も)食べたけど、結局ユーハイムのパリッとどしっとしたアップルパイが一番好き。

15時、たのしく食べ終えてコーヒーをすすり、曇天の空をぼーっとみていたら、ふとある言葉が浮かんだ。

「願いは全部叶ってる」。

そ、そうか?とてもそうは思えない。
実際の私の生活を見て「そうだね、全部叶ってるね」という人は多分いない。

体はまあまあぼろぼろ、10月末に体調を崩して今も治療中だし、20年続く特定疾患のケアもある。産後体重はなかなか減らないし、もともと多かった白髪はさらに増えるし、体力も気力も戻らないまま。この間なんてぎっくり腰ならぬぎっくり股関節?をやってあっという間に動けなくなった挙句、発熱して2日間寝込んでいた。

仕事は好きだし頑張っているけれど、売れているとはまだまだ言えない。あいかわらずSNSもうまく使えないし最近は更新も途絶えてじわじわとフォロワー数が減っている。

見た目、売上、数字。目に見えるものではかるとしたら、何も叶っていないのかもしれない。

でも、目に見えにくいものを見つめると。
紆余曲折を経て家族と信頼関係を築けていること、けんかもするけど3人仲が良くて、私たちの居場所はここだと感じられる安心感があること、私が自分の体としっかり向き合いはじめていること。仕事では、信頼する編集者さんと次の作品を作れていること。

やっぱり願いは叶っている、と思った。やったー!ハッピー!とはしゃぐというよりは「あ、もう全部あったのか」と気づく感じ。

この先こうなったらいいなと思うことは、まだまだたくさんある。目に見えるものでも見えないものでも。自分や身近だけじゃなく、遠くの場所で起こっていることに願うこともたくさんある。

でも(ピントを絞ってまずは自分のことに限って言えば)、思い通りにしようとコントロールせずに、本当の望みさえしっかり持っていれば叶うことは多いのかもしれない。目に見えるものだけを数えて「全然叶ってないよ」というのもひとつの現実だけれど、同じ現実でも見方を変えればちゃんといきたい場所にたどり着いて、欲しかったものを手にしてる私がいる。

こういうこと、目に見えるものを追いかけがちだった20〜30代の頃は気づかなかったかもしれない。見えるもの、見えないもの、どちらも大事にするこの感覚を忘れたくないなあと思った。

その翌日。


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