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医師国試問題備忘録#1 103I11

はじめに

このシリーズは、「この問題はぜひ紹介したい!」と思った問題を選び、ましまろなりのメモをつけて紹介するものです。
国家試験演習にメリハリをつけつつ、アウトプットする機会をつくり、モチベーションを作り出すことが目的です。
もし参考にしていただける方がいれば、ぜひスキで応援していだだけると、大変嬉しく存じます。

今回取り扱う分野

今回は循環器分野の問題から1問紹介します。

103I11

総腸骨静脈血栓症が左側に好発する原因となるのはどれか。

a 左外腸骨動脈
b 左総腸骨動脈
c 右総腸骨動脈
d 左閉鎖動脈
e 右閉鎖動脈

ましまろメモ

考え方

総腸骨静脈と周辺臓器の解剖学的位置関係を考える。
総腸骨静脈の左側には、総腸骨動脈が伴走している。
左側に伴走している、ということは、左総腸骨静脈と右総腸骨動脈が交差している、ということである。

両手にピースで考えてみる

両手にピースを作って考えてみる。

左手のピースが総腸骨動脈、右手のピースが総腸骨静脈である。
左手を上に、右手を下にして、左手を左にずらす形でちょうどWを作るよう、足の上においてみる。

このとき、右手の人差し指が、足と左手の人差し指の間に挟まれるのではないだろうか。
右手は総腸骨静脈、左手は総腸骨動脈なので、右手の人差し指は左総腸骨静脈、左手の人差し指は右総腸骨動脈に対応する。

足を背側に存在する椎体とすると、左総腸骨静脈は右総腸骨動脈と背側の椎体に挟まれ、圧迫されやすい、ということがわかる。

血管の圧迫と血栓症

一般に、血管が圧迫されると血管内の層流が乱れ、乱流となる。
乱流によりもたらされる物理的刺激が、局所的に凝固系を賦活し、血栓を形成する。
これにより血栓症を来すといえる。

この右総腸骨動脈と椎体の圧迫により、総腸骨静脈の左側に血栓が発生しやすくなる。

まとめ

ここまでのメモをまとめる。

  1. 総腸骨動脈と総腸骨静脈は伴走している。

  2. 動脈が左側かつ腹側、静脈が右側かつ背側に位置している。

  3. この解剖学的位置関係により、左の総腸骨静脈は、右の総腸骨動脈と背側の椎体によって圧迫されやすい。

  4. 血管の圧迫は、血流を層流から乱流に変え、血流が乱流のとき、物理的刺激により局所的に凝固系が亢進する。

  5. 左の総腸骨静脈は圧迫されることで、局所的に凝固系が亢進し、血栓が形成されやすくなるため、血栓症が好発する。

よって答えは、c.右総腸骨動脈である。

おわりに

三次元的な解剖学的位置関係を、自分がイメージしやすいものに投影して覚えることは、内科的・外科的といった二つの面において利点を持つ。

内科的な一面として、診断のきっかけや治療選択肢の吟味への応用が、外科的な一面として、取り扱う臓器に対する、術式への理解の助けになる、といった利点である。

管や繊維束など、何か線状・索状の構造物についてイメージするとき、意外と"手遊び"は役に立つかもしれない。

お礼

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

また、アイキャッチ画像にメイプル楓さんのイラストを使わせていただきました。
いつもありがとうございます。

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