Michi みち
作 junaida
この絵本に表紙は二つ。どちらからでもウェルカム。
分厚い表紙をめくって現れるのは大きなドアの取っ手。
この扉の奥にはどんな世界が待っているのでしょう。
とワクワクしながらページをめくる。
この絵本の主人公は左側の道(ページ)からこの世界にやってくる男の子と、右側からやってくる女の子。
彼らは迷路かと思うほどの数多の道を進み、階段を上り、坂を下り、たくさんの風景(世界)を堪能しながら道の先へ先へと進む。
その道中には、どこか素敵な外国の街並みを進んでいると思いきや、あるページでは本棚の中に町ができたような世界が広がる。立てかけられた本が街を彩る壁に、厚い辞典は頑丈な建物風になって小さな窓などがついている。民家風の屋根は開かれた本がそのままかぶせられている。まるでミニチュアの世界に潜り込んで小人になった気分だ。
そのほかに大木の枝葉に繰り広げられる世界や、モノクロの世界、ランプの世界などなど。そして主人公の男の子と女の子の他には、これらの世界に生活する住人たちがいる。
その一人ひとりの佇まいの様子が愛おしく思わずアフレコをつけてしまう。一切文字のない絵本だけど、このMichiの世界にはたくさんの会話がある。
ページごとに広がる多様で不思議な世界に目を奪われるが、そこに描かれた道がすべて繋がっているというおもしろさもある。ここは意地悪な迷路の世界ではない。最初から最後まで全ページ(全世界)にわたって繋がっている道はとても果てしないがどこか安心する。
ゆえに、どんな風に寄り道や回り道をしても行きたい世界に行くことができる。ときに自分が選択した道の先には思いもよらない場所に出ることもあるけど。
Michiは、無論交通のための道のことであり、また日常で迫られる選択肢であり、「未知」への不安と希望のことだと思う。もしかしたら、人が今日まで歩いてきた道(過去)も含まれているのだろうか。
ただ、そんな深読みをしなくてもミニチュアの世界に潜り込んで遊べるので、何時間でも眺められます。
自分の世界(創造力)に没頭しがちな大人にはたまらない絵本です。