【生きようとするチカラ】
先日お見送りのお手伝いを
させていただいたばあちゃんは99歳。
長寿社会になった昨今とはいえ
やっぱり99歳まで生きられる人は少ない。
見事な長生きだ。
戦争を越えてきたばあちゃん。
なかなか当時のことを
語りたがらない人が多い中。
このばあちゃんは
お孫さんたちに
戦争の時のことを
きちんと語り継いできたんだそう。
最愛の夫も兵隊にとられ
男衆が消えた小さな町の片隅で
生きたいた頃の話。
時代背景を嘆いている時間はどこにもなくて。
残された子どもたちや年寄りを守るために
家を田畑を守るために
毎日を必死に生きてきたという。
竹を削って
竹ヤリも作った。
アメリカさんが侵略してきた時のため。
さすがにばあちゃんの住む町から
30キロ以上離れた富山の中心地が、
空爆をうけて燃えているのを見た時だけは
「もうダメだ」と思ったし
一瞬。「死」を覚悟したらしいのだけれど。
でも
それでもばあちゃんは
生きることを決めたんだそう。
例えアメリカさんにどんな目に遭わされようと
「私は生きて戦う」と
そう決めたばあちゃん。
強く強く歩いてきたばあちゃん。
戦争も越え
戦後の貧困も越えた。
そうして
年月は流れ
ばあちゃんになったんだ。
孫にも恵まれ
穏やかな余生を迎えたばあちゃん。
そんなばあちゃんが
米寿を迎えたとき。
ちょいと口の悪い孫息子が
このばあちゃんに
こんなことを言ったんだそう。
「ばあちゃん。
そんなに生きて疲れんけ?
俺はばあちゃんの歳まで生きるんは
疲れっから要らんわー(笑)」って。
そしたら
ばあちゃんは
穏やかにこう返したんだって。
「あんたは弱虫やのう。
生きられるがに
まだちゃあんと生きられるがに
疲れっからて
もう生きんでもいいなんて言うヤツは
どうしょもない弱虫や。
生きたくても
生きれんかった人に失礼やと思わんか?
生かしてもらえるもんは
泣いても吠えても
地べた這いつくばっても
それでも生きんなんが。
最期まで
生きたいとおもて
有難いおもて
生きんなんがよ。」って。
そして。この話を教えてくれた
孫息子さんはこう話を締めくくったの。
「だから俺。
2度と口にせんが。
そんなに長生きせんでもいい。なんて
甘ったれたセリフは
口に出来んがよ。」
って。
言いがちだったりするんだよね。
「そんなには
長生きしなくていい」
なんていうセリフをさ。
でもそれって
ホント弱虫で
情けない言葉なんだよね。
そして。
考え無しな発言でもあるのよ。これが。
んなこと言うてる割に
いざどこか身体に不具合が起きると
すぐ病院行ったりするんだから(笑)
結局死にたくはないくせに。
軽々しく
そんなことを言ったりする。
「長生きしたい」と
声高に叫ぶ必要はないけれど。
いたずらに
「いつ死んでもいい」
だの
「長生きは疲れるから要らん」
だの
そんな言葉を口にするのは
しちゃいけないことなんだと
改めて教わったばあちゃんのお見送り。
あなたが何気なく過ごす一日は
誰かが
どうしても生きたいと
願ったかもしれない一日なのだから。
生かされている今日に
ちゃんと感謝して。