2018.11.18 立命館大学・京極夏彦講演会
2018年11月18日
立命館大学衣笠キャンパスにて
タイトル:小説家という仕事
【トピック】
◆"小説家"とは、その"才能"とは
◆"できること"と"できないこと"→伏線①
◆"言葉"とは
◆"夢"という言葉について→伏線②
◆"小説"について
◆"仕事"について
◆小説家という仕事について
◆商業的な小説家、出版社などについて
◆小説の未来について
【レポ】
◆"小説家"とは、その"才能"とは
小説家は話すことが専門ではなく"字を書くこと"が専門。
誰でも小説家の才能はないと言えばないし、あるといえばある。「均せば同じ」。
それなりの努力・練習した結果、(小説家になるという)成果を出しているのだから「あなたは才能があるから」というのは失礼。
◆"できること"と"できないこと"→伏線①
基本的には"できないこと"というのは、できないと思いこんでいるだけ。
例)朝起きたり、分厚い本を寝ずに読んだりとか(会場笑い)
一方で絶対に空を飛ぶなど(→"夢"、後述)できないこともあり、それに対し努力をすることは無駄である。
「人はだいたいなりたいものになっているんですよ」
「(そうでないというなら)自己認識をきちんと持ちましょう(会場笑い)」
「あなたがそうなりたいと思ったから、そうなっているんです」←憑き物落としっぽい。
「自分がこうありたいと意識無意識を問わず思ったようになるんです」
◆"言葉"とは
「人類が発明したことで一番すごい」。
言葉によって、自他の認識、環境の認識、時間の認識が生まれた。
言葉自体と物事とは実際は関係がない一方、言葉はいろいろな文脈的な意味を持つ。
例)"月"という言葉は天体そのものではないが、"月"以外のイメージを喚起する力がある。
つまり、良い言葉は耳障りの良いイメージを喚起するのだが、これには注意しなくてはならない。
◆"夢"という言葉について→伏線②
良いイメージの言葉だが、"現実ではないこと"、"叶わないもの"を指す。
叶った瞬間夢ではなくなる。マイホームの夢などはその一例。
叶うものは"目標"という。
「叶わないことを夢に持つのは良いことですよ。例えば世界征服とか」
◆"小説"について
犬でも猿でも天文的確率で名作かはさておき小説は書ける。猿でも書けるのだから小説を読まない人も勿論書ける。
"小説"とは古い中国語から来た単語で、江戸時代の"物語"に対して、明治時代の小説家らによって新しく名付けることで作られた概念。"私(あるいは私に類するキャラ)"が登場し、その私の"主観"があり、その主観を伝えるために構造(時系列など)を組み替えた点で、小説と物事は違っている。物語上にポコッとキャラが浮かんでくるわけではない。
◆"仕事"について
力によって生じる変化で、"労働"に親しいものがある。京極先生はネコのトイレ掃除で30年以上活躍されている(?)が、これは仕事と言うか?
一般的には"仕事"は(経済的な活動を含む)"職業"として規定されていることが多い。
◆小説家という仕事について
どんな形態であっても、小説を書いているなら商業・非商業(同人など)問わず小説家と言える。
「(話題上、電子書籍との区別が必要だった際に)本というのは紙なんです。"紙の本"というのは"人間の人"みたいなもんです」
◆商業的な小説家、出版社などについて
ネット上(カクヨムとかなろうとか)や自給自足の同人内にも名作があるかもしれないのに、掘り出されずそのままになっている。
「出版社が悪いんですよ」
「(若者が本を読まず、すぐ検索に頼ることについて)すぐわかったほうがいいんですよ、そんなもんは!」「そんな(わからないことをそのまま家に持ち帰って悩むような)健康に悪いことはしちゃいけません!」
出版の形態が変わりうることは20〜30年前から予測できていたのに、出版社はそれを怠った。「出版社が準備をしろよということです」
本当にエンドユーザーのことを考えているならシステムを組み替えるべきだったのにそうしなかったのは"バブル期のように出したら売れる時代が再来する"という"夢"(伏線①)を追っていたから。"できない"はずの"夢"(伏線②)を実現しようとし、"できる"はずの目標を成し遂げていなかったために今がある。
「最近の若者はなっていないというお前がなっていない!」「(既得権益を手放さない)そのあさましさ」←大学での講演なので若者へのファンサがすごいですね?
◆小説の未来について
もし現在の小説がなくなったとしても代替品が出てくるはず。伝統として守りたいなら博物館にでも入れるべきであり、現在残っている伝統とは時代に合わせてきたのである。
「出版社もね、"いつか"は気づくでしょ」
電子書籍がやってきたとき、出版社は黒船がやってきたと言っていたがその際にシステム構築をすべきだった。
iPad解禁の日に『死ねばいいのに』4形態同時発売をしたら、裏切り者の誹りをうけた。
先生個人としてはニーズに合わせたものを売って、欲しいものを欲しい人のところへ届けるべきだと考えていて、数年後急激に変化が起こると予想している。これからの小説家
も変化していくと考えられる。
◆自分について
本が好きで、暇つぶしでワープロを叩いていただけで、うっかり小説家になってしまった。
「(仕事上で)無理はさせられているけど、無理はしていません」(会場笑い)
「僕は一日も早く引退したい」
「(読者に)届けば小説は必ず面白い」
「アマゾーン、アマゾーン……、仮面ライダーか」
「煙に巻かれたな〜と皆さん思っているでしょう。これが小説家の仕事なんです」←いや喋るん仕事ちゃうって言っとったやんけ!の気持ち。さすがけむまきまき。
【感想】
・声色使い分けがすごい。やはり講談師では?(違う)
・音量調節がうますぎる。やはり講談師では?(違う)