1998年6月
「あかりちゃーん、はがきもってきたよ。」笑顔いっぱいのあおばは年賀はがきを数枚もってやってきた。
「ぐふっ」あおばの腹部があかりの拳を包み込んでいた。
「部長、往復はがきです。」
「あの あかりさんツッコミが強すぎませんか?」もみじがあおばの頭をなでながら聞いてみた。
「ちょうき、いえ、調教です。」
「言い直さなかった。調教って言いかけて結局調教って言ったぁ。」
床を転がりつづけるあおばを踏みつけてあかりが
「部長はもう少し高校生らしくしてください。
往復はがきは全日本選手権に参加申し込みする為に必要なんです。」
「それでは家にある往復はがきを使ってください。」もみじが使用人に頼んで往復はがきが届いた。
「もみっちゃんここの住所は?」
「部長、何を言っているんですか?」
「あかりここはモンコレ部の部室。はがきもここにつかないとおかしい。」
「もみじさんいいのですか?」
「あかりさん気づきませんでした。すでに家の表札にモンコレ部も付け足してあります。」
「さすがもみっちゃん、頭をなでることを許そう。」
参加申し込み用の往復はがきを書き終わった3人は対戦の準備に取り掛かった。
『今日はこれを使ってもらいます。
これはゲームデザイナー主催サークル「キトエ研究所」が練習用に提唱してる「出現頻度:頻繁」カードだけで作られらたデックになります。』
《オーク傭兵団》
《オーク騎兵隊》
《クリムゾン・ソルジャー》
《クリムゾン・ガード》
《ヘルハウンド》
《サーベル・タイガー》
《デザート・ビースト》
《ギルマン海賊団》
《ギルマン・ライダーズ》
《ポイズン・トード》
《ストーン・クラブ》
《スライム》
《キラー・ホーン》
《エルフ森林警備隊》
《エルフ森林遊撃隊》
《ゴブリン呪術強盗団》
《グリズリー》
《コボルド・ライダーズ》
《ドワーフ王国警備隊》
《ドワーフ王国戦士団》
《アース・ウォーム》
《エレファント》
《ストーン・ジャイアント》
《ドラゴンフライ》
《フェアリー》
《風歌いハーピィ》
《ケンタウロス風使い隊》
《バードマン偵察隊》
《バードマン遊撃隊》
《羽虫の群れ》
《プレイン・マンティス》
《ヒポグリフ》
《ライトニング・ボルト》
《シールド》
《ストライキング》
《ウィンドカッター》
《黄金の盾》
《運命の歯車》
《怪力の薬》
《極楽長の卵》
《幸せの金貨》
《眠りの粉》
《封印の札》
《滅びの粉塵》
《魔力のスクロール》
《魔法陣「泉」》
《妖精の輪》
《眺めのいい丘》
《道》
《道》
「うぉー、どういうことだぁ」
あおば、あかり、もみじの三人で総当たり戦を行い もみじ2勝 あかり1勝1敗、あおば2敗この結果にあおばが悶絶しているのだった。
「仕方ありませんね。今までのあおばさんの結果はデックの性能だったんです。しかも、あかりさんやお店のプレイヤーは勝つことよりも楽しむデックばかりだったですからね。」
「今日は日が悪かっただけですよ」あかりがフォローにはいるが、
「あかりにも負けたぁ」もう八つ当たりです。
「勝敗が問題ではありません。どうしたら勝てるようになるのかを考えるのが部活です。」
もみじはまじめに言い放った。
「まずは対抗についてです。」
「対抗ぐらい簡単にできる。」もみじの説明を遮るようにあおばは即答する。
「対戦を見ていた感じではあおばさんは対抗がよくわかっていません。」
「なんで、なんで、なんで」
「あかりさんとの対戦の時《魔力のスクロール》をずっと手札に持っていましたけど、
すでにあかりさんの捨て山に戦闘スペルが4枚がありました。あかりさんが戦闘スペルを使ってくることはありません。
手札にずっと使うことのないカードを持っていたのです。これも対抗を理解していればありえないことです。」
「ぶぅぶぅ、でも対戦相手の捨て山をみるなんてずるくない?」あおばは頬をふくらめてもみじに聞いてみた。
「すべてのプレイヤーの捨て山は公開情報なので確認することができます。
そして、逆に対抗をしないことを選択することも必要です。
あおばさんはなんでもかんでも手札に対抗できるカードがあれば対抗してしまいますが、
本陣に進軍される可能性のあるターンに本陣以外の地形の戦闘で対抗してしまい、本陣で対抗するカードがないことも多いです。
対戦相手の本陣を陥落させるゲームですが自軍本陣も落とされないように考えましょう。」
もみじの説明にもあおばは理解が追い付いていない。
「対抗できるカードがあれば対抗する。それがモンコレだぁ」あおばが叫び、もみじはあきれてしまう。
「対抗についてはまだまだあるのですが、地形展開も考えてください。
あかりさんは聖属性の飛行ユニットを使ったデックをよく使っていたので地形を左右に展開して戦闘を回避しつつ敵軍本陣へ進軍できていましたが、
あおばさんは自軍本陣から敵軍本陣までまっすぐにしか進軍していません。」
「目の前の敵を全部倒せば勝てる。」あおばが自信満々に答える。
「全部倒せば勝利できますが、そう簡単にはできません。対戦相手も必死に抵抗しますから無駄に手札の対抗札を消費してしまいます。
効率よく勝つためには地形展開に飛行や特殊進軍なども考えないといけません。」
「色々大変だねぇ」あおばは紅茶を飲みながらすでに話を聞いていなかった。
あとがき
デックは「カテウ研究所」で実際に提唱していた練習用頻繁デック。
関東ではサークル「横浜M.C.F.C.」でもこのデック限定の大会が開催されたりしていた。