Spain PNR (Stack PNR) のブレイクダウン
こんにちは、現代バスケットボール戦術研究(MBTR) @MBTResearch です。(ブログ / togetter/YouTube)
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Spain PNR (Stack PNR) は、Ball Screener DにStack ScreenerがRipをセットするオフェンスコンセプトです。
一見シンプルに見えるコンセプトですが、これによって発生する構造的優位とその波及や、多彩なバリエーションは大変奥が深く、日米欧、プロアマ問わず、様々なカテゴリーで存在感を発揮しているオフェンスです。(実際、以前レビューしたEuroBasket予選でも、AIやFloppyといった代表的なオフェンスと並んで、最も多用されたオフェンスコンセプトの一つでした)
そこで今回は、マガジン第39回として、そんなSpain PNRの仔細な解説を行い、Spain PNRを使いこなすヒントを模索することとします。
⓪Spain PNRの文脈と基本構造
Spain PNRに関わる具体的な攻防を論じる前に、Spain PNRの文脈と基本構造を確認しておきましょう。
まず背景として、シンプルなBall Screenの場合、Ball PressureやContestとインサイドでのRim Protectの両立にあたり、下記に例示するようなShow & Recover (with Tag), Late Switch + Scram Switch (Triple Switch)のような、多様かつ有効的なDFコンセプトが林立している状況で、もちろんそれぞれに対するCounterはあるわけですが、決して簡単にオフェンス出来る状況ではなくなってきています。
こうした戦術的要請があって、Chicago (Zoom) やPistol、77 (Double Drag)、Weakside Step-up / Boomerang Step-upといった様々な発展的BSオフェンスが展開されてきたわけですが、Spain PNRにおいて特異的な特長を挙げるとすれば、最終ラインのペイントエリアにおいて、GがStack ScreenerとしてRipをセットしていることでしょう。
通常のボールスクリーンDがBall PressureとRim Protectをある程度以上のレベルで両立できるのは、究極的にはBall Screener D (x5、通常はBig)がRimへ最終的にSagないしRecoverする(できる)ところにかかっています。
つまり、SagないしRecoverしたいところにG(Stack Screener)によるRipがセットされていることは、Ball Screener DによるRim Protectを阻害し、Stack Screener D(これも通常はガードDとなる)への過剰負荷に繋がることになるわけです。さらにStack ScreenerがRipからPop Outしていくとき、それをケアする負担はさらに増幅することになります:
上述した構造的優位に対して、Dがどのように対応するかに応じて、オフェンス側のスコアリングのオプションは変化します:
例:Handler Attack
例:Feed the Roll (HandlerにヘルプしてTag不在)
例:Feed the Roll (Stack Screener PopをケアしてTag不在)
例:Feed the Pop (Stack Screener)
例:Skip Pass vs Corner Tag
Stack Screener DがHandler、Roller、そしてマークマンのPopの、少なくともいずれかをケアしなくてはならないという中で、守れていない方を使ったり、周りのDがフォローする場合は、さらにその先へSkip Passを出す、といった形で、Spain PNRにおける構造的優位を用いることが、このオフェンスを使いこなす上で肝要となってきます。
①Spain PNRに関する攻防
もちろん、DF側もSpain PNRに対して無策ではなく、様々なDF戦略を展開し、またOF側もそれに対するCounterを用意します。
以下では、主だった攻防に関して取り上げます:
…Peel Switch vs Spain PNR (Spain Switch)
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現代バスケ戦術研究ノート
バスケットボール戦術についての研究ノートを掲載。 月1-2回程度更新。
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