ビッグモーター不正事件で思うこと:石田梅岩の正直の思想の見直し
ビッグモーターの不正事件を聞いて、最初に私が思ったのは、もう一度、社会全体が「正直」という徳目を見直すべき、と言うことでした。
正直とは、恐らく本覚思想を基盤に、鎌倉の仏祖たちを通じ、鈴木正三を起源に言語化され、石田梅岩が商人道を形成することで、商売・ビジネスの世界に広まった重要な徳目と思われます。
下克上の戦国では謀略もあったでしょうが、平和な江戸時代に築かれた重要な徳目が正直です。
正直=持続的な成功
正直のメリットを見直すべきです。
短期的なビジネスではなく、長期的なビジネスを考えるなら、正直に行うことは、顧客との信用・信頼関係を形成し、とてもメリットのあることです。
持続的な成功をしていくには、根底に正直の徳目が必要と思います。
以下、そのメリットをChatGPTで書き出します。
石田梅岩の正直
20年くらい前に梅岩の思想に少し触れましたが、印象的なのは、子供の頃に栗を返しにいくエピソードです。
梅岩が子供の頃に、栗を拾って家に持ってきたのですが、それが微妙なところに落ちており隣の栗であると父親に指摘され、返しに行くと言うものです。
私は電車の切符売り場で数回、お金を拾ったことがありますが、梅岩のエピソードを毎回思い出し、猫ババせずに駅員さんにちゃんと届けます笑
こような時に、毎回、私は梅岩のエピソードを思い出すのです。
このエピソードは、自他の所有を分ける意味もありますので、日本の資本主義のベースの話にも関連してきます。
アダム・スミスが市場原理に任せる理論を説きましたが、その前提としては、共感や共同体への貢献が説かれています。マックス・ウェーバーのプロティタンティズもそうですが、欲望のままに資本主義が説かれることはないのです。
そして、正直だけでなく、石門心学の倹約・勤勉も同時に見直されればと思います。
鈴木正三の正直
梅岩が影響を受けたかどうかはわかりませんが、恐らく鈴木正三の『四民日用』は影響を与えていると思います。元祖・正直が鈴木正三であり、それを商人の世界で徹底させたのが前述の梅岩だと思います。
正三は「一筋に正直の道を学ぶべし」と言って、世法即仏法を説きました。この時代の人々の問題は、どうすれば自分が成仏できるか、というものでした。ですが、正三は、働けばそれが仏法修行となり、成仏できると説きました。
法然や親鸞などの鎌倉の宗祖は、純粋な気持ちで仏法を説いて来たと思いますが、それが劣化しカルト化する部分もあり、それを正したのが正三の功績でもあると思います。
面白いことに、正三は禅僧ですが、耕す時に念仏を唱えろと教えているところです。禅門・浄土門関係なく、人々を正しい方向に導くのなら何でも使う、これは梅岩も同じです(梅岩の書には神仏儒の引用があります)。
正直の根源
ここからは私なりに話を飛躍させます(ので、気をつけて読んでください)。
正直の根源は、仏性論にまで遡るのではないかと思います。人間の本来の持つ仏性は汚れのない清浄なものである、それが正直の本体となる、という考えです。これは仏教では如来蔵思想と言います。
全ての人は仏に成るため種、成仏の種、仏性を持っていると説かれているのですが、それが日本では自然界全てに仏性があると説かれるになります(本覚思想)。これはアニミズム的であり、汎神論的とも言えます。この本覚思想は天台宗で説かれますが、前述した法然・親鸞・道元もここから出ています。
私は、この本覚思想の前に、何らかの日本人の根底に「正直の種」があったのではないか、と思うのです。
魏志倭人伝がどこまで参考になるかわかりませんが、
「婦人淫せず、盗窃せず、諍訟少なし」
とあります。これを見る限り、文献上には、弥生時代に正直の種があったことが書かれているのです。
弥生時代には争いがあったことが考古学上わかっていますが、縄文時代はそれがないので、更に平和な時代だったと思います。個人的な意見としては、日本人の正直の種は、縄文時代に培われて来たのではないかなと思います。正直な心は、平和で豊かさがないと醸成されないからです。
まず正直の教育を
まずは、正直とは何か、そしてその正直を基盤とした生きることの重要性やメリットを教えるべきではないかと思います。
これが基盤にないと、学歴をつけても、お金を稼ぐ知識をいくらつけても、それが不正に使われてしまっては社会のとってデメリットです。
今回のビッグモーターの不正事件は、顧客に対する不正が第一の罪です。そして、もう一つは、元来正直であった人を不正直にしてしまった罪です。
正直であることは、簡単なことのようで難しいのかもしれません。特に、今のような欲望が増長する時代においては。だからこそ、動機付けの部分が必要になります。ここにはコーチングがしっかりと働かなくてはいけません。
知識・技術の前に、徳目、人間の基盤が必要です。正直は、その重要な一つでもあります。
てことで、また。