【プラットフォーム/MBA】② プラットフォーム競争戦略
こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!
マガジン『能ある鳩はMBA② ビジネススキルで豆鉄砲』での、ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。
前回の記事はこちらです。↓↓↓
今回の記事では、プラットフォーム戦略の要諦について見ていきます。
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プラットフォーム戦略とフレームワーク
さて、MBAまでとってプラットフォームのことを話しているわけですから、賢明なる読者のみなさまは、
「出しな……てめ~の……『フレーム…………ワーク』……を……」
と期待していらっしゃるかもしれません。
しかし、プラットフォーム競争戦略は歴史が浅いため、
その構造をMECEで捉えられるようなフレームワークは、2021年段階ではまだ存在しないと言えるでしょう。
戦略論の大家であるマイケル・ポーターが「ファイブ・フォース」「バリューチェーン」などのフレームワークを打ち出したときは、
「製造業」「流通業」「小売業」というように、
各社は境界線がクリアな産業単位で争っていました。
しかし、プラットフォームが生まれた現代では、
産業の境界線が曖昧となっており、フレームワークによる単純な分析を難しくしています。
ニワトリとタマゴの問題を解く七つの方法
さて、フレームワークが存在しないプラットフォームですが、
その成功のために押さえるべきポイントというのは存在します。
アレックス・モザドらは『プラットフォーム革命』で、7つの方法を指摘しました。
(金銭的な補助)
①大がかりな初期投資で安全を確保する
②業界の既存者と協力する
(機能による補助)
③プロデューサーの仕事をする
④既存のネットワークを利用する
(金銭的な補助と機能による補助)
⑤価値の高い、または「セレブ」ユーザーをつかまえろ
⑥両方の役割を果たすユーザーグループを探せ
⑦シングルユーザー・ユーティリティを提供する
これらを押さえれば「タマゴが先か、ニワトリが先か」という、いわゆる「チキン・エッグ問題」を解決できる、というわけです。
「チキン・エッグ問題」とは、
「消費者」と「プロデューサー」のどちらから参加者を増やせばよいのか、
という最初期のプラットフォームが抱えている問題を指しています。
フリーマーケットを想像してみてください。
「消費者」は出品されている商品を買う人たち、
「プロデューサー」は商品を出品する人たちです。
商品を買ってくれる消費者がいなければ、
フリーマーケットというプラットフォームは魅力的でないため、プロデューサーは集まってくれません。
しかし、プロデューサーが集まってくれなければ、
商品数は少ないため、消費者としてもフリーマーケットというプラットフォームに参加する理由がありません。
これが、「チキン・エッグ問題」です。
この単語を知っているだけでも賢く振る舞えるので、名前だけでも覚えて帰ってください。
7つの方法① 大がかりな初期投資で安全を確保する
現れては消えるプラットフォームが多い中、製品を提供してくれるプロデューサーは、
「このプラットフォームは消滅しないだろうか?」
と疑問を抱えているものです。
そこで、
「こっちは勝ち組だ!」
と、プロデューサーたちに見せつける必要があります。
大規模な初期投資は、
「このプラットフォームは参加しても安全ですよ」
というプロデューサーへのサインになる。
アレックス・モザドら『プラットフォーム革命』より
また、少し形態は違いますが、プラットフォーマーの金銭的な仕掛けとして、
プロデューサーへ開発費などの直接な金銭の援助をする代わりに、自社のプラットフォームで製品を独占することがあります。
こうして、多くの補完業者が自分のプラットフォーム製品上で様々に提供してくれるようになれば、
ユーザーの利便性が増して、新規ユーザーが増える、というわけです。
7つの方法② 業界の既存者と協力する
「プラットフォームを作る」と言っても、実際にはいちから仕組みやシステムを構築するのは困難です。
先ほどの「勝ち組であるかのように振る舞う」にも関連しますが、実態はどうあれとにかく理念やメリットを掲げることで賛同企業を募り、
自社開発に閉じずに他社と共同で開発する「オープン・イノベーション」や、
多くの参加企業で構成する「エコシステム」の構築などを通じて、
1つのプラットフォームを作る、というわけですね。
なお、このときの注意点は、
「自分がエコシステムのコアだったはずなのに、
いつの間にか参加者の方がパワーバランスが強くて、
そちらにプラットフォームを実質的に乗っ取られる」
というパターンです。
プラットフォームではないかもしれませんが、わかりやすい例をテレビ番組で挙げると、
最初はある司会者のもと、
いろんな芸人やタレントがさまざまな「伝説」に挑戦していたのに、
「あれ、いつの間にか特定の芸人が無人島で漁をしているだけの番組になってないか?
司会者も企画の仕組みも有名無実化してるぞ?」
とかいうのが、近い事例ですね。
7つの方法⓷ プロデューサーの仕事をする
本来のプラットフォーマーの仕事は、消費者とプロデューサーのマッチングです。
しかし、チキン・エッグ問題としてプロデューサーの数が少なく製品ラインナップが揃わないのであれば、
プラットフォーマー自らがプロデューサーとなって製品提供をするのも手です。
消費者とプロデューサーを同時に引き込もうとするのではなく、
プラットフォーム自身がプロデューサーの役割を果たして、消費者を取り込むのだ。
そのうえで、その消費者を呼び水にしてプロデューサーを取り込む。
別の言い方をすれば、伝統的な直線的ビジネスとしてスタートして、
十分な数の消費者を獲得できたら、
そのネットワークをプロデューサーにも開放するのだ。
アレックス・モザドら『プラットフォーム革命』より
例えば、「ファミコン」。
据え置きゲームのハードは、「消費者」とプロデューサーである「ソフト開発会社」とをマッチングさせるプラットフォームでもあります。
ただし、良質なゲームソフトが集まらなければ、当然ハードは売れません。
「ファミコン」発売当時のローンチタイトルは「ドンキーコング」、
そしてその後「マリオブラザーズ」が売り出されますが、
いずれもプラットフォームの管理者である任天堂自らが開発しています。
※画像は、ゲームボーイアドバンスの復刻版
7つの方法④ 既存のネットワークを利用する
そもそもゼロから参加者を増やすのではなく、既存のネットワークを利用してしまおう、という考え方です。
さきほどのゲーム機を例に挙げると、
「クロスプラットフォーム」
という考え方があります。
響きが「クロス・ファイヤー・ハリケーン・スペシャル」みたいで、声に出して読みたいビジネス用語ですね。
クロスプラットフォームとは、
「違うプラットフォームでも同じソフトが動かせるよ」
という考え方です。
ゲームで言えば、「プレステでもXBOXでも任天堂でも、どんなハードでも遊べるよ」というアレです。
これならば、他のプラットフォームのユーザーをそのまま奪えます。
まるで、焼き肉屋で他人が育てた肉を奪うような悪行ですが、プラットフォーム競争戦略では有効な手段です。
7つの方法⑤ 価値の高い、または「セレブ」ユーザーをつかまえろ
有名人にサービスを使ってもらったり(Facebook、Instagramなど)
有名企業に参加してもらったり(UBER EATSなど)
といった仕掛けを成功させることでプラットフォームの価値を高めよう、と言う内容ですね。
『プラットフォーム革命』では、有名人を用いなくても成功した例として、いわゆる大手口コミサイト「Yelp(イェルプ)」のおもしろい例が挙げられていました。
質の高いレビューを頻繁に登校するユーザーを「イェルプ・エリート隊」に指名して、レビューをどんどん書いてもらうように動機づけたのだ。
エリート隊に入れるのはイェルプが厳選したベストユーザーだけで、その選出プロセスは謎に包まれている。
(中略)
エリート隊のメンバーは、現実の世界でもVIP待遇を受けられる。
イェルプは定期的に、エリート隊向けのイベントやパーティーを開く。
デジタル世界と現実世界の領邦でトップユーザーを特別待遇することで、イェルプでの活発な活動を動機づけるのだ。
その狙いどおり、エリート隊は、初期のマーケティング戦略の基幹になった。
アレックス・モザドら『プラットフォーム革命』より
「サクラ」「ステルスマーケティング」による「 実はターゲット以外全員仕掛け人」のような「世界まる見え!」的展開ではなく、
むしろ堂々と支援したVIPレビュアーを作り出すことで、プラットフォームの価値を高めるというわけですね。
7つの方法⑥ 両方の役割を果たすユーザーグループを探せ
参加ユーザーがマッチングされるどちらの立場にもなりうるようなサービスです。
フリマアプリの「メルカリ」をイメージするとわかりやすいでしょう。
メルカリでは、出品者が買う側に回ることもよくあります。
こうすれば「タマゴが先か、ニワトリが先か」というよりも、
「タマゴであり、ニワトリでもある」状況になるので、
チキン・エッグ問題を解決できるというわけですね。
7つの方法⑦ シングルユーザー・ユーティリティを提供する
ここだけ単語をそのままカタカナにしているところに、訳出が難しかったのが感じられます。
「シングルユーザー・ユーティリティ」でGoogle検索をそれらしいページはほとんどヒットしなかったので、人口に膾炙していない概念かと思われます(2021年4月2日)。
ちょっとした会話で「シングルユーザー・ユーティリティ」を出せば、
相手が信用のおける人間かどうかのリトマス試験紙になるでしょう。
「ああ、シングルユーザー・ユーティリティね、知ってるよ、そう、もちろん、当然」という態度をとる人間は、
さて、「シングルユーザー・ユーティリティ」とは単純に、
「それを使えばユーザーの生活に何か得がある」
という機能です。
プラットフォームとして成立する以前に、「得がある機能」を提供するサービスとしてスタートし、
その後マッチング機能を付与する、というわけです。
初期のインスタグラムがいい例だ。
本格的なSNSになる前、
インスタグラムはユーザーに写真の撮り方と、
それをクールに見せる方法を提供するツールだった。
アレックス・モザドら『プラットフォーム革命』より
さて、以上プラットフォームを成功させるための要諦についての解説でした。
次回の記事では、「プラットフォームのブランドを守ること」について見ていきます。
お楽しみに。
to be continued...
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