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振り返って

ここから下は、10月2日に書いてた保存してたぶん。まだしんどい人は、閲覧注意。



令和4年9月27日、何の日?ロリータの生前葬の日だ。

9月16日、わたしにLINEが届く。

「9月27日に生前葬することになりました」
「安倍のこくそうにあわせて、Tさんプロデュースで」
「します」
「たぶんデルタでします」

「なんそれ!!!遺影とらせて!!!」
「何しよーかなと思ってたけど決まった」

即答。
彼女は大学の頃からの友人である。いや、正確には大学卒業後にこそ仲は深まったのかもしれない。大学の頃から一貫しているのは、私は彼女のファンであるということだ。
劇団に新入団員が入った。初夏のころ、アートコンプレックス1928に演劇を見に行ったときに、彼女は私が大好きで憧れのBABY,のお洋服を着て現れたのだ。「ねえきみ嶽本野ばらって作家、知ってる!?」「もちろんです!」「ロリータが入ったのは知ってたけどすごい!すごい!」
そのころ私の周りには、嶽本野ばらの『下妻物語』は読んでいても、そのほかの著作まで漁っているひとはいなかった。「好きな作家は?」「下妻物語の嶽本野ばらですねー」「知ってる!原作本読んだよ!映画も好き!」
この程度。
そこに現れた本の中から出てきたのかというほどの完成度のロリータ。
身長も低い。肌は信じられないくらいに白かった。
そして私は嶽本野ばらにハマれども、ロリータファッションはしなかったのだ。昔から縄文人風だのB系だのヒッピーだの、って感じだった私は、彼女の堂々とロリータファッションを選択し、堂々とそれを着こなす姿を見てファンになったのだった。

時は流れて、令和4年。こくそうである。
最悪だ。考えるだけで憂鬱だ。無視して普段の生活?できやしない。(なぜならTwitterに情報があふれるだろうし、普段の生活をするならTwitterを閲覧するのは確実だし。Twitterを観ないとしたらそれは普通の生活じゃないし。)
じゃあ、デモに行く?しかし同時間性の高いデモは周りの人々の感情にあてられてしまうのは目に見えていた。わたしは他人の感情に大変影響を受けやすい。今後の生活態度に影響が出てしまうことを恐れていた。

それが、このLINEによってワクワクする10日間が始まった!
鴨川で、生前葬をする。これからの彼女の未来のために、生前葬をするのだ。あんな、死してなお正者に迷惑をかけ続ける政治人間(と、その周囲のホモソ集団)のことなんぞ忘れて、わたしは生き延びるためのお葬式をするのだ。

9月20日、実行委員招集。生前訃報の作成。告知開始。
9月21日、SNSにだんだんと出欠のお返事が届き始める。遺影候補が全部かわいくて決まらない。マジで全部かわいい~。そして遺族代表弔辞2組が決定。
9月22日、生前葬儀台本完成。キリストのみからだ(パン)の製作者決定。純米大吟醸が京都に届く(これはキリストの血)。
小道具をどんどん集める。
一方、司祭様が見つからない、大ピンチ。
9月23日、司祭様が見つかる。最高の人選。これでスタッフがそろった。
9月24日、火曜日の雨予報に気づく。晴れろ、晴れろ。
9月25日、雨予報消えない。弔辞の音声が届く。
9月26日、前日準備、怒涛。
段ボール棺桶を作る。式次第を作る。私のおんぼろギターの弦を買いに行く。チューニング。おんぼろすぎてペグが最悪の状態。あてにしていたトランジスタメガホンが彼女より先に臨終していた。まあ30年以上前のものだからそうだろう。Tさんに探してもらう。政治活動をしている人は拡声器を見つけるのが大変早くて助かる。彼女が私の家に前泊。直前放送をネットで放送。ワインを飲み飲み出演。”ちーん”をする為のトライアングルを忘れたことが発覚。家にある、いい音がしそうな食器やフライパンを片っ端からスプーンで叩く。楽しい。最終的に、南部鉄器風鈴をスプーンで叩くのが一番いい音だった。めちゃくちゃ風流でくだらなくて馬鹿馬鹿しい音がする、いいっすね。最高!2時半やん!寝よう!

当日。朝は快晴。この天気が続けばよかったけど、結果的には大雨だった。
朝から友人の軽トラに機材の積み込みをする。
・・・・・・棺桶がでかすぎる。階段を通らない。
人間は立ってると場所を取らないね。横になるとずいぶんと場所をとるなあ。
結局、ベランダから棺桶を突き落として、無事搬出。段ボール製でよかった~。
ぼすん。という音で地面にバウンドする段ボール棺桶の間抜けさ。ほんと、ずっと間抜けで馬鹿馬鹿しくて楽しい!

会場に到着。司祭様と合流。司祭様の服チョーかわいい!白っぽくて敬虔な感じ出てて、めっちゃ素敵。この姿であの声で、聖書を読むのを観るのが楽しみになる。
デルタの△の先端に棺桶を設置する。いろいろなものをセッティング。式次第などの印刷をコンビニにコピーしに行く。
ロリータは桝形商店街の100均に雑貨を買いに行った。下町風情溢れる桝形商店街の100均で真剣な面持ちで造花を買い求めるロリータを想像すると笑いがこみあげてくる。
PUNK!
司会が到着。いでたちが宮本浩次みたいで爆笑しちゃう。動きも、みやじっぽい。スーツ、似合うじゃん!楽しみになってきた!

さ、始まるよ!お客さんがやってきた!

最初のお客さんは近所でお店をするおっちゃんとおばちゃん。左京区人間って感じで、こくそうを風刺するノリに乗っかってきてくれた。有機野菜を納棺。野菜のおかげで、めちゃくちゃ生前葬っぽさ…というか、お盆っぽさが出たww!!間抜け!

そしていろんなお客さんが集まりだす。
鳥が鳴いていて、観光客が記念撮影をしていて、のどか。楽器の練習の音。歩こう会の老人たちの憩う声。かわのせせらぎ、バス停から自動音声。遠くで救急車の音。バイクの音。そして時間きっかりに、音響さんが音楽をかける。聖歌、血潮したたる。爆音。
異様な風景になるかと思ったが、鴨川はすごい。すべての音を受け入れて、水音で包んでいく。
いける。
心配していた通報とかそういうのも、無さそうだ。
はじまった。

ここから下は、11月22日に書いている。

生前葬の式次第は、粛々と生前葬である。おおまかな流れ
①臨終
※納棺済みの状態で開始する。赦しの秘跡→病者の塗油の秘跡→聖体拝領
②葬儀
開祭のことば→葬儀のミサ(ことばの典礼→感謝の典礼)→赦祷式
③告別式
聖歌斉唱(いつくしみ深き)→弔辞→弔電→献花→喪主(宗岡)挨拶
④飲み会

めっちゃ調べてあたしが式次第(台本)を作った。台本といっても、進行台本だから本当に進行が書いてあるだけだけど。
きっとかなり、よかったと思う。死人を崇める悪趣味な”こくそう”と違って、生き延びるための生前葬。
段ボールで、風鈴で、料理用のオリーブオイルで、その辺の川の水で、コンビニカラーコピーの拡大写真で、100均の額縁で、100均の造花で、余ってた布で。ギャラ代わりに貰った日本酒で、ピクニック用の座布団で、無料アプリの音響機器で、友人に借りたブルートゥーススピーカーで。
とにかくハンドメイドで、身の回りに在るものを寄せ集めたチンケなセッティング。それをとにかく万端の準備にして、真剣に真剣に取り組むのだ。

生き延びるってそういうことだろう。


最後に、生前葬で使用した、ほんとの葬儀に引用されることの多い聖書からの一説を転載して終わりにする。

全能の神、憐れみ深い父は、御子キリストの死と復活によって世をご自分に立ち返らせ、罪の赦しのために精霊を注がれました。神があなたに赦しと平和を与えてくださいますように。私は、父と子と精霊の御名において、あなたを赦します。

~~~~~~~~~
聖書・ヨハネの黙示録第22章より、1節から5節を朗読いたします。
御使いはまた、私に水晶のように光るいのちの水の川を見せた。
それは神と小羊との御座から出て、都の大通りの中央を流れていた。
川の両岸には、いのちの木があって、十二種の実がなり、毎月、実ができた。
また、その木の葉は諸国の民をいやした。
もはや、のろわれるものは何もない。神と小羊との御座が都の中にあって、
そのしもべたちは神に仕え、
神の御顔を仰ぎ見る。また、彼らの額には神の名がついている。
もはや夜がない。神である主が彼らを照らされるので、
彼らにはともしびの光も太陽の光もいらない。
彼らは永遠に王である。

~~~~~~~~~~
マタイによる福音書第28章5節から7節を朗読します。
この御使は女たちにむかって言った、
「恐れることはない。あなたがたが十字架におかかりになったイエスを捜していることは、わたしに分かっているが、もうここにはおられない。かねて言われたとおりに、蘇られたのである。さあ、イエスが納められていた場所をごらんなさい。そして、急いで行って、弟子たちにこう伝えなさい。『イエスは死人の中からよみがえられた。見よ、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。そこでお会いできるであろう」。
あなたがたに、これだけ言っておく。

生前葬式次第





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