「創造と破壊」を既に理解してた幼少期(嘘)

小さい頃の絵ってめちゃくちゃ面白くない? えげつないとこから飛び出してる腕とか、ありもせん方向に曲がってる足とか、頭蓋骨どないなってんの? っていう目のデカさとか、全てがめちゃくちゃ面白いと思う。何度も大掃除で子供の頃の絵が発掘されてるけど、そのつど悩んで結局捨てられん。

私の幼少期の微笑ましい絵も、随分残ってる。私の場合、母親に宛てた手紙形式の絵が多い。無茶苦茶なひらがなで、「ままいつもありがとう おしごとしてくれてだいすき」みたいな、ちょっと残酷にも思える言葉と共に似顔絵描いてるやつね。幼少期、「あ」が難しくて鏡写しみたいになりがち。

ただ、私どうしても腑に落ちんことがある。色んな幼少期の絵が残ってるのに、私の記憶に一番残っている絵だけが残ってない。大量に描いたはずやから一個くらい残っててもいいのに、幻やったんかなってレベルで残ってない。

ちょうど、小学生になるかならんかの頃やと思う。大人の使ってる手帳ってめちゃくちゃかっこよく見えて、親にねだって買ってもらった。手帳って言うたって予定なんか「ほいくえんにいく」くらいしか書くこと無いし、ページがすごい余る。

その時の余白に描きまくってた絵が、「人間が怪我してる絵」やった。多分、おそらく。意味分からんやろ? 私も分からんし、今思ったらめちゃくちゃ怖い。けどしっかり覚えてんのよ。
まず、普通に人間を描く。「小さい頃の絵あるある」で上位に入りがちな、えげつないうねり方のツインテールでウインクしてる女の子。そんで、その子の膝とか腕とかほっぺたとかを、ところどころ黒く塗り潰す。おそらく、幼少期の私の目から見た「血」なんやと思う。もうこの時点で怖いやん。傷だらけ血だらけの女の子がウインクしてる構図なんて、脅かしに特化したホラゲ実況でしか見たことないて。
で、思う存分絵の中の女の子を傷つけたら、次は「治療」パートに入る。「血」を模した黒い塗り潰しの上から、絆創膏の絵を描き足していく。顔とか膝とかやと、絆創膏のことが多い。腕とか太ももの時は、包帯を描き足す。で、作品は完成。そうしたら幼少期の私は、その隣のページにまた普通の人間を描く。傷つける、治療する。また人間描く……これをね、延々繰り返してた記憶が鮮明にあるのよ。それこそ、買ってもらった手帳の隙間を全部埋め尽くすくらい。

つい最近そのことをふと思い出した。けど、それを証明する原本は一枚も残ってない。よくよく考えたらそりゃそうよな。怖いもん。多分早い段階で、我に返った私か親が捨てたんやと思う。

これ、みんな辿ってる道なんやろうか。もしみんながみんな辿ってない道やとしたら、あの時の私どういう精神状態やったんやろう。今の私より何百倍も人懐っこくて可愛かったと評判やけど、もしかして深い闇を抱えてたんやろうか。

大袈裟に言うてみたけど、実は正直あまり深刻に考えていない。なぜなら私は今も、「人が怪我をしている構図」が大好物やから。イケメンには傷だらけになっていてほしいし、肌の白い女の子には血の赤が映えると思ってるから。
多分ね、これ、ただの性癖なんやと思うわ。

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