【Part2】「怖い話」を緩和していけば「面白い話」になるのか?
「面白い」と「怖い」は紙一重である。
……的な話から始めた、「怖い話のチューニングを緩めて面白い話にしよう!」の記事です。今日は。ちなみに前回の記事はこれ。↓
結論から言います。「分かりません」。
「面白い」と「怖い」はほぼ同じ軸にあるのは間違いないはずなのよ。マジでそれだけは確かなの。
とはいえ、どちらにしても「面白い話」にしようと思ったらある程度のユーモア力が必要なのね。それがどうやら私にはないらしいのよ。なんかごめん。
まあ言い訳ばかりしててもアレなので、今回やったことをお伝えします。
まずは前回の「怖い話」のあらすじをざっくり説明。登場人物は、AとB。二人とも男性で、親友同士。ゾンビパニックになった世界から逃れて、食料庫で一か月一緒に過ごしている。暇なのでしょうもない会話をして時間を潰す。Bはたまに危険な外に出て、水やら酒やら食料庫には無い物を拾ってきて、Aはそれをありがたく受け取っていた。しかし、ひょんなきっかけで「外にゾンビが溢れかえっている」というのはBの嘘であったことが判明する。Bは、Aが事故にあって義足になってしまったことや、自身が会社をクビになってしまうことなどを理由にAと心中しようと決めていた。その前にAと二人で思う存分語り合うためにこんな嘘をついたと説明する。必死に逃げようとするAだが、扉は開かない。「俺達、親友だろ?」というBの言葉でおしまい。
というストーリーにしてあった。
次に、このストーリーの「怖い部分」を探す。
このストーリーで怖い要素はおそらく「Bの嘘」と「オチ」。二人死んでるっぽいオチにしてるからね。創作の中とはいえすぐ人を殺すのは良くないわな。
なので、まず「オチ」を二人が生存するルートへ。オチに向かわせるための伏線だったAの情報「義足」を消す。それに伴って「100万円あったらどうするか」という質問に対するAの答えが「義足」の伏線になっていたので、そこもまるっと変更。
そして「Bの嘘」が怖すぎたので緩くする。期間が一か月と長かったので、「一日」に変更。それに伴って舞台も「食料庫」から「資材置き場」に変更。嘘をついた理由も変更。「Aに対する重い愛」から「ただのドッキリ」に。Aへの愛を思わせる伏線「100万円でもあげる」という情報を差し替え。
とはいえ、変えすぎも面白くないなと思ったので、「酒」に関するエピソードはほとんど残すことにする。かなり無理やりねじ込む。
と、いった具合に、「怖い要素」を少しずつ緩めることで、「おおよそのストーリーは一緒だけど怖くはない」話に改稿した。
オチもまるっきり変わってしまってる。これは面白い……のか? マジで「分からない」のよ。意味分からんことをやってるので自分でもよぉ分からん感じになってきてしまった。ので、もし前のストーリーも全部読んだし今回のも読んだよーっていう人がおったら、「これは以前のストーリーより『面白くなっているか』」を教えてほしい。「もっとこここうした方が面白いよ」があればそれも教えてほしい。あ、超絶暇な人だけで大丈夫。シナリオくっそ長いんで。
おそらく「怖くない話」ではあるんやけど、私のユーモアセンスが皆無すぎて「面白い話」にはなってない気がする。やだな~もう。面白い人間になりたいのに!
次回はもう少しこのストーリーと向き合ってみて、さらに改稿してみようと思う。こっからもうひと捻りしたら何か生まれると信じて。
<親友 一度目の改稿>
〇薄暗い部屋・真ん中に扉
登場人物はここでは仮にAとBとする。
二人とも30歳前後。
A、 B、共に脱力したように立っている。
B「ねえ、風呂入った時、頭先に洗う? 体先に洗う?」
A「なんでこんな時にそんな質問すんだよ……お前は?」
B「体かな。初手で顔が濡れるの嫌だし」
A「風呂入ってる時点で一緒だろ。俺は頭かな。意味はない」
B「ふーん。でもさ、頭先に洗うとさ、体洗ってる間に冷たい水滴が髪の毛からさ、落ちてくんのが嫌なんだよ」
A「まあそれはあるな。で、何で急にそんな話?」
B「いや、何となく。一回状況整理しようかなと思って」
A「整理できたのか? その質問で。じゃあ俺も質問するわ」
B「いいよ」
A「もし100万円あったらどうする?」
B「今更そんな話?」
A「いいじゃん。夢があんだろ?」
B「そうだなぁ。とりあえず、食うかな」
A「美味い飯を?」
B「いや、金を」
A「は?」
B「だってさ。お前、万札の味知ってっか?」
A「知らねえよ。知るわけねえだろ」
B「知っときたくない?」
A「思ったことねえよ」
B「そっかぁ。俺はさ、多分さ、今俺は、金の中で一番価値のある奴を食ってるんだーっていう気になって、めちゃくちゃ美味しいと思うんだよ」
A「さっきから何言ってんの?」
B「天ぷらなんかにしたら意外と食えると思うんだよね。パリッとしててさ。海苔天みたいな。100枚も万札あるんだったらさ。1枚くらい食ったっていいでしょ?」
A「……まあ、使い方は自由だけど」
B「そういうAはどうなんだよ?」
A「そうだなぁ……やっぱ俺は、家建てたいな」
B「あ、もしかしてCちゃんと住むための?」
A「そりゃそうだよ。Cの理想全部詰め込んだ豪邸を建てる。んで、Cに言うんだ。『C、結婚してくれ』ってな」
B「へ~、ありきたりだね」
A「プロポーズなんかこれくらい真っ直ぐな方がいいんだよ」
B「あ、じゃあ、もしお前がそういう家建てたいっていうならさ、俺の100万あげてもいいよ」
A「なんで二人とも100万ゲットしてる計算なんだよ」
B「いいじゃん、夢はでっかくでしょ? 俺だってお前とCちゃんには幸せになってもらいたいしな!」
A「ほんとお前は恥ずかしい奴だな。……って、こんな話してる場合じゃねえだろ! 早く! 早く武器探さないと! こうしてる間にゾンビが入ってきたらどうすんだよ!」
B「あ~そうだ、早く探さなきゃ、ええっと……なんか役に立つものないかな……」
B、手に持っていたスマホを隅に置いて探し回り始める。
A「倉庫なんだし、なんかあるはずだろ……」
B「あっ、これとかどうかな!」
B、 箱の中から一斗缶を取り出す。
A「なんだそれ」
B「中身は……油かなあ。あ、もしかして」
A「なんだよ」
B「今一万円札持ってる?」
A「何天ぷらにして食おうとしてんだよ!」
B「いや、ベタベタするから持ち手に巻くんだよ」
A「そんな用途に使うな! ていうかこの流れだったら天ぷらだろうが!」
B「火が無いから揚げ物出来ないじゃん。そんなことも分かんないの?」
A「お前……ほんと端々でムカつかせてくるな」
B「振り回してなんとかなんないかな」
A「振り回せないだろ、重くて。他になんかないのか」
B「あ、こいつは役に立ちそうだぞ? 魔法のランプ!」
B、グレイビーボートを取り出して擦る。ぶわっと黄色の煙。
A「うわ臭っ」
B「カレー臭っ」
A「魔法のランプじゃなくてカレー入れるグレイビーボートだろうが! ほんっとに使えねえなぁ……」
B「使えそうなのは……これくらいだね」
A「太めの木材と、薄ーい鉄板……心許なさすぎるだろ!」
B「しょうがないじゃん、これくらいしかないんだから。ただのその辺にある倉庫だもん」
A「その辺にある倉庫になんでグレイビーボートがあったのかは謎だけどさ……でも、こうしてちゃいられないんだよ。早く出なきゃ」
B「なんでだよ。ここは随分安心だぞ?」
A「馬鹿言うな。Cがどうなってるか分からないだろ。無事だといいんだけど……」
B「Cちゃんなら大丈夫でしょ。あの子空手は黒帯で柔道は師範代じゃん」
A「そうは言ってもな~……」
B「まあ一旦落ち着こうよ。今のところここは安全っぽいしさ。ちゃんと計画練ってからにしようよ。落ち着くために、また質問していい?」
A「お前呑気だな……なんだよ、言ってみろよ」
B「ここから出れたらさ、何したい?」
A「そうだなぁ。まずはCに会いに行くね」
B「ほんっとにCちゃんのこと好きだよね」
A「そりゃそうだよ。……そういえばさ。先週ゾンビパニックの映画観たよな」
B「あ~そうじゃん! 今の状況にぴったりだ!」
A「Cと観る予定だったのにお前も来やがってさ……」
B「いいじゃん、別に。Cちゃんだって喜んでたろ」
A「まあいいけど……」
B「あの時のA、面白かったよな~。『こんな状況になったら、何があってもCのこと探しに行くからな』って」
A「言った~! やべえ、尚更行かなきゃいけねえじゃん!」
B「『何があってもCのこと探しに行くからな』って……ウケるな」
A「ウケねえよ」
B「だってお前、どっからどう見てもCちゃんに守られる側じゃねえか」
A「馬鹿言うな、俺だって男なんだからCのことくらい助けに行くよ」
B「ほんとに?」
A「当たり前だろ」
B「外、ゾンビだらけだよ? 噛まれたら死ぬよ?」
A「……当たり前だろ」
B「きっとお前の嫌いな犬もゾンビ化してるぞ? すっげ~速いの、足」
A「……装備をちゃんとしよう」
B「ほら見ろ」
B、 おもむろに立ち上がる。
B「お? なんだこれ……うわっ、おい! A見ろよ!」
A「なんだよこれ……うわっ!? これって……!」
B「何か……すげ~高そうなお酒だ!」
A「何か分かんねえけど高いことだけは分かる! なんでこんなところに……?」
B「酒蔵じゃないはずだけどな……どう考えても資材置き場なのに」
A「誰かが隠してんじゃねえの?」
B「……なあ」
A「……なんだよ、今のお前、世界一悪そうな顔してるぞ」
B「……飲んじまおうぜ」
A「は!? 駄目駄目、駄目だろ! どう考えても誰かのじゃねえか!」
B「いやいや、よく考えろって。外ゾンビパニックよ? 今更じゃん。しかもお前、最近酒断ちしてんだろ?」
A「そ、そうだよ。最近太ってきたから、Cに禁止令出されてんだよ」
B「……今しかないぜ」
A「馬鹿言うなって」
B「逆に! 今逃したら、もう一生無いかもしんないぜ……?」
A「……」
B「飲むよな?」
A「よし、飲もう」
B「よし」
B、酒瓶を床に置く。A、持ち上げていろんな角度から眺める。
B「あ、駄目だよラッパ飲みは!」
A「なんでだよ」
B「風情が無いだろ!」
A「この期に及んで風情とか関係ねえだろ」
B「駄目だって! ほら、ちょっと待って」
B、奥に走っていってグラスを探す。
A「いいじゃねえかこの際。回し飲みすりゃ」
B「駄目だってばー! 盃交わさなきゃ」
A「言い方気を付けろよ」
B、盃を持って帰ってくる。
B「あった!」
A「なんでほんとに盃あるんだよ。そんなのちょっとずつしか飲めねえじゃんか、めんどくせえ」
B「はいはい、これ持って。(B、酒を注ぐ)はい、かんぱーい!」
A「風情はどうしたんだよ風情は。こういうのはなんか、知らねえけど、なんかこう、静かにこう盃を掲げて、目線をこう交わして会釈したりし……先に飲んでんじゃねえよ!」
B「うわー、うめえこれ! やっば! とろっとしてる! そういやさあ、昔給食の時間に八宝菜出たらさ、『うわ、鼻水だ!』っていう奴一人はいたよね」
A「なあ、今その話いるか? なあ。今絶対要らなかったよなその話」
B「は~、美味いなやっぱ!」
A「あ~、酔ってきた。何か今ならなんでもできる気がする。よし、俺ちょっと行ってくるわ」
B「え!? どこに!?」
A「決まってるだろ。Cを助けに行くんだよ」
B「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ。俺のこと放って行くわけ? そんなひょろひょろのお前が?」
A「約束……したんだよ」
B「え?」
A「Cと約束したんだよ。あの日は確かに、映画観ながら言った冗談だったかもしれねえけど。でも俺の心は……本物なんだ」
B「A……」
A「お前は怖いならここにいろよ。俺は行く。俺には……Cしかいないんだ」
B「お、おいA!」
A、 材木と鉄板を持つ。鉄板には持ち手が無いので持ちづらい。A、中央扉の前で深呼吸し、雄たけびを上げながら外へ飛び出していく。それをBは扉の近くまで行って目で追う。しばらく沈黙が続く。困惑した表情でAが戻ってくる。
B「おかえり」
A「……え?」
B「どうしたの」
A、 扉の外を指差しながら、Bと外を見比べる。
A「……え?」
B「どうしたのって」
A「いや……なんか。いや、あの……外、ゾンビとかいないんだけど」
B「ん?」
A「いや、その……普通にみんな歩いてるんだけど」
B「……質問していい?」
A「なんだよ」
B「全部俺の嘘だったらどうする?」
A「は?」
B「ゾンビなんかいないよ? 全部俺の嘘。このドアの向こうは、Aが知ってるいつも通りの世界」
A「は? 待て待て待て、は?」
B「……ドッキリ、大成功~!」
A「は!?」
B「いや~、綺麗に引っかかるね~。さすがA!」
A「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれって。何? 何が起こったの?」
B「あ、全部俺の嘘だから」
A「は!?」
B、 隅に置いてあったスマホを取る。
B「いや~、まさかこんなに上手くいくとはね。しかと受け取りましたぞ~、カッコいい台詞」
A「な、何、どういうことなの」
B、スマホで音声を再生する。
音声『Cと約束したんだよ。あの日は確かに、映画観ながら言った冗談だったかもしれねえけど。でも俺の心は……本物なんだ』
A「あ~!?」
音声『お前は怖いならここにいろよ。俺は行く。俺には……Cしかいないんだ』
B、腹を抱えて大爆笑する。
A「おいてめえ! てめえ、それ、貸せ! 貸せって!」
B「『俺の心は本物なんだ……』あっはっはっは! あ~やべえ涙出てきた。あ、じゃあこれCちゃんに転送しまーす」
A「やめろやめろやめろ! 待てよ、何!? なんなの!? え!? じゃあさっきのあの、外の大混乱は!?」
B「あ、何かアイドル来てたらしいよ」
A「アイドル!?」
B「うん、Twitter見たら書いてた。なんだっけ、嵐……? だっけ? 俺聞いたこと無いけど」
A「嵐を知らずに生きてこれる年代じゃねえだろ……いやそれはどうでもいいんだよ! えっ、何、じゃあほんとに嘘なの? ゾンビは?」
B「いないよ」
A「なんなんだよお前~!」
B「お前、もしかして覚えてねえの?」
A「え?」
B「昨日、Cちゃんの誕生日だったんだよ?」
A「えっ……嘘だろ……」
B「本当。Cちゃん悲しんでたよ。いつもあんなに好き好き言ってるくせに忘れるなんて、もしかして好きって言ってるの口だけなんじゃないかって」
A「そんなわけない……本当に忘れてた……」
B「本当に忘れてたの!? あんなにいつも好き好き言ってるのに?」
A「日付とか覚えるの苦手なんだよ……ほら、中学生の頃にさ。俺、社会の年代答えるテストの問題、全部間違ってただろ?」
B「確かにあの時2点っていう驚愕の点数だったけど……でも、せめて彼女の誕生日は覚えとかなきゃ駄目だろ。覚えられないなら、ほら、スマホのカレンダーに入れとくとか、色々やりようはあるんだから」
A「……そうだな……ごめん」
B「ほんと、情けない男だよAは。そんな木材と鉄板両手に持って」
A「これはお前のせいだろ!(と投げ捨てる)」
B「俺言ったでしょ。CちゃんとAには幸せになってほしいの。だから、お前がいいとこ見せられるタイミングないかなって思ってたんだよ。だからこういうドッキリ仕掛けてみた」
A「あのアイドルの騒ぎは?」
B「ああ、あれはたまたま」
A「たまたま!?」
B「うん。びっくりしちゃった、すげえいいタイミングでみんな騒ぎ始めるから」
A「そんなことあるんだ……じ、じゃああの酒は?」
B「ああ、あれは、普通に俺が飲もうと思って買ってたやつ。買って戻ろうとした時にあの騒ぎがあって、たまたま事情を知らないお前に会っちゃって、お、丁度いいじゃん! と思ってここに逃げ込んだってわけ」
A「あれお前のだったのかよ!」
B「まあほんとは断って欲しかったけどね。Cちゃんに止められてるからって、そこの約束は守って欲しかったな~! じゃ、送りまーす」
A「やめろやめろやめろ! 待って! その! その酒のとこだけカットして送って!」
B「やだよーそんなヤラセみたいなの。俺はいつだってリアルをお届けしたいんだ」
A「いやゾンビの嘘ついた奴が言うな」
暗転。
次回→未定。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?