数時間前の記憶も保てないようじゃ駄目だよ、そりゃあ
部屋ん中くっせ!!!!
以前の日記でも書いてたと思うけど、私の部屋が煙草臭くてしゃあない。私は非喫煙者やっちゅうのに。隣人、懲りずにずっと廊下で煙草吸いよる。私の部屋、パチ屋くらいくせえ。
あんまりにも部屋がパチ屋スメル極めてきてたもんで、いつもより多めにファブリーズの雨を降らせる。フラワーの香りで煙草をぶち消そうとする。
ファブリーズ片手に馬鹿みたいに部屋を駆けずり回りながら、普通はこういう作業、家に彼ピが来る時にしたいよなって思う。思ったが最後、私のおめでたい脳内は妄想劇場まっしぐら。
部屋の隅から隅までスプレーを噴射して、彼ピを迎え入れる。ちょっと赤面しながら、うつむき加減で、蚊の鳴くような声で「どうぞ」って言うのも忘れずに。私の彼ピ――そうね、ここで名前を出すと気持ち悪すぎるけど、私のリア恋芸能人でイメージしようかな――は、部屋に踏み入れるなり言うわけよ。「すっげーいい匂いする」って。そらそうよ、ハチャメチャに振り撒きましたもの。「そりゃあ気をつけるよ!」って拗ねたみたいに、ちょっと怒ったみたいに言うてみようか。そしたら私の彼ピが呆れたように笑いながら、「なんで?」って言うてくるわけよな。こいつ〜! 分かっとるくせに! って思いながらも、可愛い彼女でいたい私は声を荒らげることなくお淑やかに、ちっちゃい声で言うんよな。「全部君のためだよ」って。
あ〜! 彼ピ欲しい〜!
我に返ってみれば、煙草くせえ散らかった汚部屋にデブス芋女がファブリーズ撒き散らかして大暴れしてるってんだから人生はクソ。本当にクソ。一生妄想の中へ逃げ込んだろか。そしたら私はリア恋芸能人と仲睦まじく笑顔の絶えない家庭を築けるってか? それも悪くないな……
そんなこんなで、数時間経って夜。
情けなくなりながらしょぼしょぼとベッドに潜り込む。やたらといい匂いがする。私の愛用しているシャンプーでも香水でもヘアオイルでもない甘めの香りが枕から漂う。なんかやたらといい匂いなもんで思わず顔を埋めて夢中で嗅ぐ。なんでこないにいい匂いすんの?
数時間前の記憶なんか、己の頭に残ってるはずがない。私が振り撒いた私のファブリーズの匂いに、私が食いついてる。「なんで?」やあるかいな、私が撒いたんやないか。
過去の私が、気持ち悪いうつむき顔で、お淑やかに言う。「全部、君のためだよ」って。やかましいわ。
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