煮物
何故かバイクというのは、乗ってて暑くてしょうがないというのは稀で、一年中常に寒さと戦っている感じがします。夏でも、志賀草津の渋峠なんかはえらい寒いですし、春・秋の微妙な季節には絶対といっていいほど「もう一枚着てくりゃよかった」という想いにかられる場面に遭遇します。
やっぱり風受けて走ってますから、普通に気温10度でも、走れば0度みたいな感じなのです。
だから、逆に冬はいいかもしれない。元々寒いのわかっていて、バイクに乗りますから、予想外の寒さに心身とも打ちひしがれることがない。冬はエンジンの調子が基本的にいいですから、気持ちよかったりもします。
とはいえ冬は冬。頭痛がするくらい寒い時もあって、ちょっと袖に隙間があっただけで腕を伝って背中まで凍りつく。服の着方が悪いだけで、死の危険を感じるほどです。
カイロなんか何十枚貼っても全く役に立ちません。目のまわりは顔面マスクをしても、穴があいてますから、そこだけパンダみたいに霜焼けになって、みんなに笑われたこともありました。
地球というのは容赦ないです。
この状況を救えるのは、たったひとつ、風呂です。
まだバイクに乗りたての頃、無謀にも12月に東京から東名を使って、紀伊半島まで行ったことがありました。下り線の足柄PAに風呂がありますね。物凄い熱い風呂だったんですが、心底冷えた体の私にとっては何ものにも変えがたい悦楽のひと時で、
「あー溶ける。煮物になりたい」
とすら思いました。
この快感をもう一度味わいたく、帰り道もどエライ寒い中、風呂であったまる算段で高速を一気走りで足柄まで行きました。
そしたら、上り線には風呂がないんですね。ショックでした。当時の私は、上り線と下り線は同じサービスがあると勝手に思い込んでいたのです。
そんなわけで、生命の危機を迎えた私は、自分のリサーチ不足を責めつつ紫色の唇で、そこからさらに100km家までフラフラしながら帰った。
今日はこれから家までバイクで帰りますが、あの時の体験があるんで、多少は耐えられるようになったと思います。というか無謀の度合いがわかってきた。
なんですか、この話は。
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