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デッキ作成録【ジェスカイアミュレット】編

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以前掲載したBIG MAGIC OPEN チームモダントップ8の【ジェスカイアミュレット】
一般的な【ジェスカイコントロール】とは異なる構築をしているが、どの様にしてこの構築に辿り着いたのか。その作成過程を記事にしていく。

『モダンホライゾン3』襲来

『モダンホライゾン3』がやってくる。
すなわち、モダンが変わるということだ。
全モダンプレイヤーはモダンホライゾン1、2で学んだ。
発売前と以降では全く別のゲームになるのだ。

今回も例外ではないだろう。
確かにピッチスペルは少々見劣りする感じもあるが、使ってみたら存外やるのかもしれない。

そして必然的に発売前の数週間はモダンをやらなくなる。
どんだけやろうともあと数日で今使っているデッキが完全に“型遅れ”のものになってしまうからだ。

今できることはプレビューを眺めながら面白そうなカードを見つけることだけ。

この段階で注目していたギミックは「エネルギー」


マナとは別角度からテンポを供給し、過去にはスタンダードにて《霊気池の脅威》、《霊気との調和》、《ならず者の精製屋》を禁止送りにしている。

『モダンホライゾン』で本気を出したエネルギーギミックは一体どこまで壊れるのだろうか。
楽しみで仕方なかった。

また、個別のカードで気になっていたカードは、《火の怒りのタイタン、フレージ》

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は禁止されるまでどのフォーマットでもお世話になった。
《死の飢えのタイタン、クロクサ》はあまり使う機会が無かったものの、カードとしては非常に好きだ。そして強力だ。

今回、その系列となる新たなエルダー・巨人が追加された。
相手の場にクリーチャーがいれば強力だが、タフネスの高いクリーチャーだった場合はアドバンテージを得ることができず、他のタイタンたちに比べると大人しい効果に思えたが、それでも歴代タイタンは超強力だった。
《火の怒りのタイタン、フレージ》も活躍することだろう。

と、なると《火の怒りのタイタン、フレージ》を活かせるデッキだが、「本体に直接火力を飛ばせるボロスカラー」ということで【バーン】が一番相性いいかもしれない。
【バーン】は軽い火力を多用し、墓地もすぐ肥えるだろう。

結果的にはこの考えは間違っていた。
確かにカード単体で考えると【バーン】との相性は格別だが、この時は「相手にも《火の怒りのタイタン、フレージ》を使われる」ということまで考慮していなかった。
結果的に、環境に《火の怒りのタイタン、フレージ》が溢れかえり、【バーン】は環境から締め出されることになる。

『モダンホライゾン3』実装

MTGアリーナにて『モダンホライゾン3』が実装された。
今回はアリーナ上にてモダンホライゾンが遊べるのだ。
とは言え、カードプールもフォーマットも用意されていないため、「モダン」としては遊べない。
ドラフトの参加無料券も余っていたので、カードの効果を覚える目的でドラフトを数回遊ぶことにした。

一番最初にピックしたカードは《霊気紛争》

早速気になっていたエネルギーギミックを試せそうだ。
今回のエネルギーギミックは白、青、赤に用意されている。
ジェスカイカラーでエネルギー関連のカードをピックしていく。

途中で悩ましい2択が現れる。
《イゼットの発電装置》と《不安定な護符》

どちらもレアリティーは同じ。ならば色拘束が厳しい方が強いだろう。
そう思い《イゼットの発電装置》をピックした。

幸いにもその数手あとに《不安定な護符》が流れてきたため、デッキには2種類のエネルギー関連アーティファクトを入れることができた。

初めてのモダホラ3ドラフトは【ジェスカイエナジー】
2ゲーム目辺りで《不安定な護符》を使用し、その強さに感嘆した。
一方、その後のゲームで《イゼットの発電装置》を使用して若干の使いづらさを感じた。
と、いうか、《不安定な護符》強すぎないか???

ここから《不安定な護符》デッキを考えるようになる。

デッキを組んでみよう

使いたいカードは決まった。
幸運なことに、元々試してみたいと思っていたエネルギーギミックだ。
『モダンホライゾン3』におけるエネルギーギミックはジェスカイカラー。
『カラデシュ』の頃はティムールカラーだったので、少し違和感があったが、流石にモダン環境で《ならず者の精製屋》は使い物にならない。
カードパワーの高い色を選ぼう。

《不安定な護符》のある赤は確定。
見るからにオーバースペックな《電気放出》
凄まじいテンポを獲得する上に、《不安定な護符》ともシナジーする《色めき立つ猛竜》

白のエネルギーカードも魅力的だ。
見るからにオーバースペックな《空の怒り》
軽いマナでエネルギーを稼げそうな《魂の導き手》。でもこいつはデッキコンセプトに合わないかも…
エネルギーがあれば《力戦の束縛》を超えるスペックになる《静牢》

この2色は確定にしていいだろう。
しかもボロスカラーということは《火の怒りのタイタン、フレージ》が使える!!

《不安定な護符》をメインギミックにするということで、バーン効果を活かしたい。
そのため、バーンだけでライフを削り切れる《稲妻》はぜひとも採用したい。
(ちょうどこの時期、【ボロスエナジー】が環境に出始め、軽い除去が肯定されるようになる)
《瞬唱の魔導士》で《稲妻》を使い回したらとんでもない量のダメージになるのでは?
青には《語りの調律》という使いやすいサポートカードも存在する。

素直にジェスカイカラーでデッキを組むのがいいのかもしれない。
特に、青を採用する場合、《表現の反復》を採用でき、このカードも《不安定な護符》とのシナジーがある。

《激震の目覚め》を使うことで1マナで《孤独》が場に出せることに気付いた。
そもそも《孤独》は墓地に行きやすく、コンボも無理なく狙える。
《激震の目覚め》自体にサイクリングがついており、使い道のない時にはドローカードになる。
このことから《孤独》を採用。
《稲妻》、《電気放出》と合わせて非常に除去の厚い構築になった。

問題点を洗い出す

そんなこんなでプロトタイプが完成。
数回回してみる。

そこで気になったのが、

・《空の怒り》が使いづらい
細かいクリーチャーを流したいだけなのだが、ついでにこちらの《不安定な護符》、《静牢》が流されていく。
軽いカードを使っているが故の欠点になってしまった。

相手の《ナカティルの最下層民、アジャニ》と共に流されていく《不安定な護符》

これは大問題で、《不安定な護符》はこちらのダメージソース、フィニッシャーなのだ。
相手のジャブを躱すつもりがこちらの勝ち手段を削がれてしまっている。

更には、エネルギー供給が不安定。
《不安定な護符》にエネルギーを突っ込みたいので、《空の怒り》用に取っておけないのだ。
エネルギーの無い状態で2マナ以下を流そうとすると4マナ。これでは《至高の評決》の下位互換だ!!
マナが余っていればエネルギーに変換することも可能だが、ツーアクションができなくなってしまう。アグロ相手に本当に必要なのは除去ではなくテンポなのだ。

・《色めき立つ猛竜》が使いづらい
恐ろしくテンポを取れる可能性があるものの、“じゃない”カードが捲れることも多い。
エネルギーが足りない状態での《火の怒りのタイタン、フレージ》、相手の場に何も無い状態での《静牢》、墓地に何も無い状態での《瞬唱の魔導士》…
しかもこれらの問題は最速で《色めき立つ猛竜》をキャストした時に引き起こされる。
最もテンポを取りたいタイミングで最も事故りやすくなる。ぐぬぬ…

更にストレスなことに、このカードは捲ったカードをデッキに戻さない。追放したままになってしまう。
これにより《火の怒りのタイタン、フレージ》が飛ばされるのが非常に痛手になる。
【ボロスエナジー】と違い、このデッキのダメージ源は限られているため、不用意にクリーチャーを捨てられない。

そもそも「ランダム要素の高いカードは弱い」というカードゲームの鉄則があるのでこのカードはデッキから排除。

・《静牢》が使いづらい
上にあげた2つのカードと悪い意味でシナジーしているカード。
そもそも時間がかかるデッキなのに毎ターン維持コスト要求されるのがキツすぎる。
でもこのカード無いと《一つの指輪》に太刀打ちできないし…

これら問題点を上げていき、少しずつ改良を加えていく。
なお、問題点を洗い出す段階ではデジタルプレイよりも紙を実際に触った方が気づきが得られる気がする。
デジタルだとサクサク進みすぎて問題点を反復させる時間がない。
紙のイベントに出ると、次のマッチが始まるまで嫌でも考える時間が生まれる。
サイドボーディングの際も、カードを大局的に判断することができる。

デッキの変遷

手元にあるデッキレシピがこれしかなかった

《不安定な護符》とのシナジーもあるので他のデッキよりも強い要素が多く、《瞬唱の魔導士》の枚数が少し増えた。

《一つの指輪》に対応するため《喝破》を入れてみたり…
(マナベースの都合上、《対抗呪文》は使いづらかった。《喝破》は《火の怒りのタイタン、フレージ》にも触れる上、《孤独》のピッチコストにもなり得るので見た目以上に使いやすい)

《喝破》と入れ替える形で《静牢》を減らしてみたり…

《激震の目覚め》で《孤独》を釣る場面が全くないなと感じてみたり…

そもそも《不安定な護符》が強いのでそれを活かすために【ルビーストーム】っぽくしてみたり…

ちなみにこれは中途半端なフィニッシュ力のため断念。
《火の怒りのタイタン、フレージ》の存在は偉大だった。


ここで《一つの指輪》に対抗しつつ、《静牢》を使わずに済む方法として《力戦の束縛》を思いつく。
このデッキにとっては《静牢》が《力戦の束縛》の上位互換だと思い込んでいて、完全に存在を失念していた。
マナベースに負荷はかかってしまうものの、【4Cオムナス】は似たような構築で回されている。
逆に黒をタッチすることで《オークの弓使い》に対抗する《オークの弓使い》を採用できるようになったり、当時は圧倒的Tier1であった【ナドゥ】に対抗する《ラクドスの魔除け》を採用できるようになったりと利点も存在した。

結論

結果となったのがこの構築

一枚一枚の詳しい採用理由は前回の記事にて記述している。

これまでの変遷を見ての通り、一般的な【ジェスカイコントロール】とはコンセプトが違う。
《不安定な護符》を最大限活用することを目指したデッキとなっている。

そのため、自分の盤面まで巻き込んでしまう《空の怒り》は採用されていないし、《反復の表現》ですぐに使えない《対抗呪文》も採用されていない。

《一つの指輪》に対抗するため紆余曲折を経ているが、素直にこちらも《一つの指輪》を採用するべきなのかもしれない。しかし、《不安定な護符》でめくれてすぐに使えないと言う意味では使い心地が悪いかもしれない。
まだまだ改良の余地はあるだろう。
この構築は全くもって完璧なものではない。


一般的な【ジェスカイコントロール】の方が勝率がいいかもしれないし、この構築を使っている人がいないことはその証明なのかもしれない。
そのため、この記事は「このデッキ強いよ〜」といった趣旨のものではないことを理解しておいてもらいたい。
今回の記事で言いたかったことは、

・デッキを組む上でコンセプトをはっきりとさせる
・カード1枚1枚の採用理由を考える
・カード及びそれとシナジーを起こすカードのメリット・デメリットを見極める

といった、デッキ構築の考え方を実際に組んだデッキを元に解説したものである。

デッキを1から組み上げることが苦手な人の手助けになればと思う。
また、コピーして回してみるにせよ、時期や周囲によって環境は変わってくる。
その際に微妙なマイナーチェンジを要求されることと思う(特にサイドボード)。
そんな時にもデッキのコンセプトや採用理由を改めて考えてみることはとても重要だと感じるので参考にしていただきたい。

他の記事↓

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